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生まれつきの婚約者がいるなんて聞いてない!?  作者: 月迎 百
第2章 パーティ『暁の勇者』
15/55

15 突然の停車

どうぞよろしくお願いします。

 前の馬車の御者台にコーラスが乗り、後ろの馬車の御者台にシーラが乗せてもらった。


 後ろからカイエンとミレーヌが歩いてついてくる。

 荷馬車で馬も一頭立てなので、そこまで早くない。

 陽が高くなると、後方の馬車の商人が声を掛けてくれ、ミレーヌとカイエンを馬車の後ろの荷台に腰かけて座るように乗せてくれた。足をぶらぶらさせながら。これならすぐに飛び降りて、戦える。


 この調子なら今日は村に早目に入れそうだという。


「昨日はカイエン、寝られたの?」

 

 ミレーヌが少し心配そうに言った。


「ああ、少し寝られたから、大丈夫」


「……無理しないでよ」


「心配してくれるの?」


「そりゃ、心配するよ。

 その、カイエン、ちょっと気負い過ぎというか……。

 パーティとしてうまく機能するように、それが安全ということになるんだとはわかるけど、ちょっと飛ばし過ぎじゃない?

 ひとりで、抱え込まないで、みんなにもっといろいろ相談してもいいんじゃないかな?」


「うーん、わかった。

 その、自分でやった方が早いというか、そういう……」


 ミレーヌがクスッと笑う。


「そだね。

 カイエンを見てたらそう考えてるのかなとも思った。

 でも、カイエンは周囲の……、コーラスとかシーラのことも考えてくれてるでしょ。

 みんなもカイエンのことを考えてるよ」


「ミレーヌも?」


「うん、頼られなかったら、寂しい……、かも」


 カイエンもふっと笑う。


「ミレーヌを寂しがらせないようにします」


「えっ? あ、そ、そ、だね」


 ついつい下の子に話しているような感じになってしまっていたミレーヌは、カイエンから返ってきた言葉に動揺した。

 なんか他の意味があるわけじゃないのに、なんか、意味深というか……。

 カイエンにまっすぐ見られるのは嫌いじゃない。

 でも、なんか時々、このなんか……、あれ? という感覚がある。


 その時、馬車が急に停まった。


「わっ!」

 

 バランスを崩しかけたミレーヌをカイエンが抱き留めてくれる。

 その手がけっこう大きくて力強い……。

 こんな時にそんなことに気がついてしまったことにミレーヌは恥ずかしくなって「ああ、ごめん!」と体勢を立て直しつつ叫んだ。


「前見てくる!」


 なんとなくカイエンの方を見られなくて、返事も聞かずに、そのままぴょんと荷台から降りると前の馬車に走って行く。


 前の馬車が停まって、こちらの馬車も驚いて停まったという感じらしい。

 先頭まで走ると、商人とコーラスが前方を見ながら、困ったように相談している。


「なに? あれ、前の馬車?」


 ミレーヌが御者台に半分乗り込むように足をかけた。


「ああ、あの馬車、なにしてんだろ?」


 ミレーヌが目を凝らす。


「ニードルラビット!?」


 ミレーヌの言葉にコーラスも頷いた。


「ああ、ニードルラビットに襲われてる?」


「襲うなんて珍しいね。

 あ、馬の餌か!

 この馬車は余裕があるから干し草積んでるけど、場所に余裕がないと人参積むでしょ」


 この辺境に多く生息しているニードルラビットは人参が大好物だ。

 しかし、野生の人参はほとんど自生がない。

 ゆえに、人参を運搬していると、匂いを嗅ぎつけて襲われることがある。


 護衛の数が少ないみたいで、慌てているようだ。


「手伝う?」


 ミレーヌはこの商隊リーダー的な存在の一番年上の商人を見た。


「ああ、行ってくれるか?」


「承知!」


 ミレーヌが御者台から飛び降りて、立ち往生している馬車に走って行く。


 カイエンが遅れて、御者台に走り寄り「ミレーヌ?」とコーラスに言いながら返事を待たず、慌てて追って行く。


「やれやれ、ここで少し休憩にしますか?」


 コーラスが商人に提案し、道の外れに馬車を寄せた。


読んで下さり、ありがとうございます。

やったー、ミレーヌ、とうとう戦えるぞ!


明日も息子は学校だと思っていたら、なんとお休みだとか!

やったー、早起きしないで済む!

というわけで、今日はおまけ投稿しちゃいました! えへへ。

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