148 最初の魔王
どうぞよろしくお願いします。
ミレーヌ……。
ミレーヌのことは好きだ。
自分を見て欲しいと思う。自分を認めて欲しいと思う。
でも……。
ふっとジョルジュの意識が今に戻り、過去が消えていくような感覚がした。
母はもういない。
王妃の代わりに地方の教会の視察へ行くという突然の公務があり、母とジョルジュで行った。
母はその地で体調を崩した。
王都には戻って来れたが……。
まもなく、亡くなった。
ベッドに横たわり、寂しげな笑顔の母。
そして、もしかしたら、王妃の代わりに毒殺されたのではということを、後から聞いた。
危険があるとつかんでいながら、王家の誰かが行かなくてはならなくなり、母と自分が差し出されたわけだ。
なのに、なんで微笑んでいたんだ?
ミレーヌも……、ジョルジュが落ち込んだり、焦ったりしているのを気にして寄り添おうとしてくれていたのに。自分が勝手にいらいらして、同情されたくなくて。
ジョルジュに斬られて、悲しそうに、でも、微笑んで見せたミレーヌ。
「ああ……、私は大切にしたいものを永遠に失ったのだな……」
声が自然に漏れた。
その自分の声に驚く。
周囲を見回すと、どこかの建物の中?
「……建物には魔物が……!?
私は何を?」
剣を握ろうとするが、腰に鞘はあるのに剣はない!?
「え?」
だんだん頭の中がクリアになっていく。
ミレーヌを斬った時の腕の、剣の、感触が蘇る。
そして、剣を落として、響いた音……。
「う……、うわぁ! 斬りたかったわけじゃない!!」
呟いて、また過去の思い出の中に沈みそうになり……、気がついた。
同じ部屋に、誰か、いる。
「……誰だ!?」
部屋の暗がりからゆらりと現れたのは、黒ずくめの服にフードを被り、顔を隠しているような男だった。
「もしかして……、お前が……」
自分は剣を持っていない。ジョルジュの口が乾く。
そういえば、何故、私はここにひとりでいるのだ?
「ジョルジュ王子……。よく来たな。魔王城に」
「魔王オベリウスか!?」
叫んで腰に手をやるが、剣がない。
どうしたら!?
慌てて火魔法を発動させ、ぶつける。
黒い服の男は魔法の防御壁を発動させ、炎は男に到達する前に阻まれ、弾けた。
その一瞬の爆発の炎の中に何か、見えたような……。
ジョルジュはその場に跪いた。
黒髪の少年が涙を流しながら、炎を見つめている。
炎の中には母。
『生きて!
オベリウスと私の命を繋いで!
生きるのよ! 復讐など考えないで!
私達の大切な息子……、宝物、命……。
あなたが生きて、命を繋いでいくことが……。
母と父の願いです!!』
『母さん!!』
黒髪の少年が叫んだ。
「なんだ!? この記憶は?」
ジョルジュが頭を抱える。
黒ずくめの男がゆらりと右手を挙げた。
「お前にも見えるのか……。
王家が私達にしたことだ……」
「王家が? 私達?」
「王家への復讐……、それだけ。
母には止められたが、私は生きて、家族を作り、生きて……。
家族という大切な……、大切な存在を、親として、祖父としての立場で知るうちに……。
父と母の無念さを、改めて知ったのだ……」
「お前は……、王弟オベリウスと聖女レイナの息子の、オーリか?」
ジョルジュが気づいたように口にすると、男の動きが止まった。
「……オーリ。母はそう私を呼んだが。
私はオベリウスの息子。そして私が産まれる前に処刑された……、してもいない罪を押し付けられ処刑された父の名をもらい……。本当の名はオベリウスだ」
「最初の魔王?」
「最初であり……。その後もずっと私だ……。
私は自分の血を継ぐ子孫を見守り……、王家への復讐を……」
「オベリウス!!
ウィリアム! 目を覚ませ!」
ふたり以外の人物の声が部屋に響いた。
蹲るジョルジュの横に立ったのはカイエンだ。
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