147 過去
どうぞよろしくお願いします。
ジョルジュは過去の中を歩いているようだった。
小さな時の自分の視界だとわかる。
やさしくきれいな母が若い。
王城の庭の陽だまりで微笑んでいる。
母は、第2妃だった。
アルベルトとエドワードの母は王妃であり、三兄弟で自分だけ母が違う。
母は子爵令嬢だったと聞いている。魔法使いとして魔法協会でも期待されていたが、そこで王に見初められ、望まれ、第2妃となった。
そのため、貴族令嬢としてのマナーや教養は最低限は身に付けていたが、魔法使いとしての修行や勉強をしていたこともあり、貴族らしくない、少女のようなふんわりとした雰囲気を持ち続けていた人だった。
やさしかったが……、周囲からは侮られているというか……。
表立って何かされていたというわけではない。
なんとなく、身分が低いとか王妃としての仕事を求められていないので教養がないと最初から決めつけられていたり、本音では見下されているのではと子どものジョルジュにも感じられることがあった。
母は能力が低い人ではなかったと思う。
魔法使いとしてなら、魔法協会で中堅の魔法使いとして活躍していたのではないかと思う。
それが第2妃となり、ジョルジュを産んだことで、王子の母という仕事、役割を……。
ジョルジュが剣の先生や教師によくできるお子さんだと褒められるのをとても喜んでくれる母だった。
自分が王子らしい、できる子でいれば、母も喜ぶし、周囲にも侮られない!
ジョルジュは王子らしくあろうと弱さを見せず、努力して、常に強くあろうとした。
そして弱さを嫌った。
途中から、自分の弱さは責められるものとなり、自分の中の弱さを見せまいと傲慢で冷たい態度を取るようになった。
その頃から母の笑顔は喜びから、戸惑いを含むものになった気がする……。
『アルベルト王子やエドワード王子と、あなたのお兄様でもあるのだから、仲良くして欲しい』と以前に増して言うようになった。
なんでだ!?
彼らより、私は王子らしくあろうと努力している。
母の、あなたの地位を高めるためにも!!
母の微笑みに中に寂しさを感じるたびに苛立った。
その頃、ミレーヌに出会った。
母に少し似ている気がした。
周囲が自分には遠慮して、おどおどする。
だから、つい、こちらも口調がきつくなってしまう。
王城のお茶会に相応しくない物を身につけている者には間違いを気づかせようと厳しい言葉を掛けた。
責めていたわけではないのだ。注意したかった。それでは周囲に侮られると。
でも、皆の前で正論を声高に言うのは、楽しい……。
自分が正しいとみんなにわかってもらえる。
ミレーヌは自分が注意した者を慰め、庇い……。
皆と一緒に『そうですわね!』と同意してくれなかった。
ジョルジュのことを否定したわけだ。
だから、少々、その生意気なところを脅かしてやろうと……。
『男女』などとわざと言った。
でも、ミレーヌは本当に強くて……。
自分に恥をかかせた奴という気持ちと、その強さを認めたい気持ちと。
だから、無意識に……、憎んでいたのか?
だから、斬ってしまった?
もしかして、自分が気づかないだけで、わざと?
読んで下さり、ありがとうございます。




