144 パーティ崩壊
どうぞよろしくお願いします。
「建物には近づくな!」
コーラスに言われ「すまん!」と返すジョルジュ。
「……今回はここまでかな?」
「そうだな。ここを維持することにしよう」
コーラスとカイエンの言葉が聞こえ、ジョルジュは叫ぶ。
「もう少し、進もう!」
ミレーヌが言い返す。
「ジョー! 大通りだけ抑えても無理だ!
とりあえず進むのはここまでにして、周囲を掃討して、安全な場所を広げないと、夜を越せなくなる!」
ミレーヌの正論にジョルジュは唇を嚙む。
正論過ぎて言い返せない。
さらに、今、自分がひとりで進み過ぎて、ミレーヌに助けてもらったばかりなのだ。
ジョルジュは怒りと焦りと恥ずかしさと……。
身体が震える。
自分の心と頭と身体とが、自分に従ってくれないという情けなさと……、その事実に恐怖すら覚えた。
「ジョー?」
ミレーヌが剣をしまって、ジョルジュのそばに来た。
剣を握ったままのジョルジュの右手を握るとそっと擦る。
「力を抜いて、一度、剣をしまおう。大丈夫だから」
「……やめてくれっ! 私に触るなっ!」
ミレーヌは戸惑って「ジョー?」と名を呼んだ。
ジョルジュは絞り出すような声で言った。
「お前なんかっ、嫌いだっ!
一緒にいると……、みじめになる。なんでだ!?
何故、私が、こんな思いをしなければならないっ!!」
ミレーヌがジョルジュの右手から手を引っ込め、一歩、後退る。
「ごめんっ! そんなつもりはなくてっ!
でも……、ジョー、いえ、ジョルジュ王子、手が、身体が震えている。
今は休んで下さいっ!」
「うるさい! うるさーいっ!」
ジョルジュは右手を無意識に払った。
何かの手応えがあり、振り抜けない。
見ると、自分の右手には剣が握られていて、その剣の先がミレーヌの防具の胴に食い込んで止まっている。
ミレーヌは信じられないという驚きの表情をして、さらに一歩、後退った。
ジョルジュの手から剣が落ちて、大通りの石畳の上でやけに大きな音を立てる。
「……あ、すまな……」
ジョルジュがミレーヌに言いかけようとするが、言葉が出てこない。
ミレーヌは悲しそうな、でも、微笑みを浮かべようとしながら、防具の右腹の傷を両手で隠すようにさらに離れようとする。
「すまないっ!」
叫んだジョルジュは、ミレーヌの足……、防具の裾から血が……、ミレーヌのズボンにじわじわと血のシミを作っていくのを見た。
「ミレーヌ! 血がっ! 防御は!?」
ジョルジュは驚愕の表情で叫ぶ。
ミレーヌがさらにジョルジュから離れようとした時、異変に気がついたカイエンがミレーヌを抱くように支えた。
「ミレーヌ!」
コーラスとマリアも駆けつけ、ミレーヌの姿はジョルジュから見えなくなる。
「防御魔法、切れちゃってたみたい。みんなも気をつけて……」
ミレーヌの申し訳なさそうな、小さな声だけが聞こえた。
「お姉様っ!」
マリアが叫んで治療を始めようとしている。
ミレーヌがカイエンの腕をつかんで言った。
「ジョルジュ王子を……、休ませて……。
ごめん、私も少し休めば……」
カイエンがその言葉にジョルジュのいた方を見ると。ジョルジュの姿は消えていた。
「……!
コーラス! マリア!
すまん、ミレーヌを頼む。
俺はジョルジュ王子を追う!」
「殺すなよ!」
コーラスが焦ったように言った。
「殺しはしないさ。決着をつけるだけだ」
「決着!? なんの?」
コーラスの問いかけに返事はなく、カイエンは走って行ってしまう。。
コーラスはカイエンを追うべきか、迷ったが「コーラス! お姉様の防具を外すのを手伝って!」というマリアの声に、諦めた。
コーラスは意識をミレーヌだけに、向けた。
読んで下さり、ありがとうございます。
ミレーヌには一番最初に防御掛けてましたからね。
さらに、ジョルジュには途中で力の付与魔法とか……。
右手で良かったです。左手だったら、やばかったかも。




