137 墓穴を掘る
どうぞよろしくお願いします。
「キス?」
ジョルジュがカイエンとミレーヌを交互に見て呟いた。
ミレーヌが周囲を見回して慌てた。
コーラスだけじゃなかった!
ジョルジュも騎士も冒険者パーティもいたじゃん!?
周囲が気まずそうにしているのを見て、ミレーヌはさらに慌てた。
このままだと、カイエンが責められる!?
「えっ、あ、カイエンが無理やりとかじゃないよ!?
一緒の部屋に泊った時も、私の方がカイエンのベッドに話をしたいからって入ったりしたけど。
それでも、話をして抱きしめてくれてただけだし。
カイエンはちゃんと考えてくれてて、その、私の方が……、えっと……」
「もういい、話すな」
コーラスが苦笑しながら言った。
「いつの間にミレーヌの方がそんなことになってたんだ!?
まあ……、婚約者同士、思い合ってて、仲がいいのはいいことだけど……。
爺様の前ではそんなこと口走るなよ。
辺境伯爵やジョナサンほどではないけど、さすがにカイエンが責められるぞ」
「……はい」
しゅんとなるミレーヌ。
カイエンがミレーヌのそばにきて、ぎゅっと抱きしめた。
「ありがとう。
とっさに俺のことを守ろうとしてくれたんだね」
「逆に墓穴掘ってたけどな」
コーラスが突っ込んで、周囲のみんなが笑った。ジョルジュ以外は。
それにミレーヌもカイエンも気づかない。コーラスだけは気がついて、眉を顰めた。
そして、カイエンに言った。
「どうだ、ひと暴れしたい気分になったんじゃないか?」
「うー、わかったよ。
でも、追うのはなしだ。
ミレーヌが光の剣で奴らに目つぶしをしたところで、コーラス、ジョー、ミレーヌに暗闇でも見える魔法と防御魔法を掛ける。
俺は魔法で支援する」
「よし!
ジョーはそれでいいか!」
「ああ」
ジョルジュが言葉少なに答えた。
騎士と冒険者パーティにこの場所での防御を頼み、柵の外に出る。
グレイウルフ達に動きが現れた。
ミレーヌの稲妻の剣を警戒しているようで、ミレーヌの前に出ないようにしているように二手に分かれたようだ。
「防御はもうかけておく」
カイエンが3人の肩に触れていく。
それから、ミレーヌに言った。
「ミレーヌ、作戦変更だ。
光の剣はやめよう。稲妻の剣が警戒されている。このままだと威力が見込めない。
暗闇でも見える魔法をもうかける、普通に戦おう」
「了解!」
再び、3人と自分に魔法を掛けるカイエン。
「わお! すごい! 昼間みたいに良く見える!」
ミレーヌがうれしそうに叫ぶ。
「これはどれくらい持つ?」
ジョルジュの言葉に「1時間ほど」と答えるカイエン。
そのやり取りの最中に最初の1匹が襲い掛かって来た。
コーラスが飛び出して斬り捨てた。
それを合図に次々に飛び掛かってくるグレイウルフ。
ジョルジュは荒っぽく乱暴に剣を振るっている。
コーラスはそれを見て、少し同情的な気持ちになる。
ジョルジュはミレーヌに気があることは確かだ。しかし、自覚のないミレーヌにここまで希望がないことを突きつけられたわけで……。
そりゃ、自分自身もミレーヌに恋していて、もうあきらめたとはいえ、あまり気持ちが穏やかではない。
グレイウルフ達は鬼人のように荒ぶるジョルジュとコーラスにさんざん蹴散らされ、切り捨てられ、退却して行った。
カイエンは途中からミレーヌだけに支援していたし……。そりゃふたりで声を掛け合って、楽しそうに……。
戦い終えて、コーラスはふっと笑ってしまう。
もしかしたら、マールとバートの仲を感じながら、アレックスとアルファードはこんな気持ちで戦っていたのかもしれないな、なんて思ってしまったから。
読んで下さり、ありがとうございます。
ミレーヌ……、いろいろ口走り過ぎ。




