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生まれつきの婚約者がいるなんて聞いてない!?  作者: 月迎 百
第5章 魔王の正体と倒し方
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133 勇者の重み

どうぞよろしくお願いします。

ちょっと長めになっちゃいました。

 朝一で城を出た第1陣は順調にモルドバに近づき、前にマリアとコーラスが残って野営をした場所より、もう少しモルドバに近い場所に拠点を作ることになった。


 魔王城は完成したようで、前に見た時より、少し高くなっているように見えた。

 何か、大きな鳥のようなものが飛んでいる。

 ミレーヌとマリアの祖父である前辺境伯爵が何やら本を取り出してページをめくり、魔王城と交互に眺めながら言った。


「まだ、完成しとらんのじゃないか?」


「お爺様、その本は?」


 ミレーヌが祖父の手元を覗き込む。


「これが前回の魔王城。で、こっちがその前、その前……」


 祖父がページをめくると描き方や線は微妙に違うが、魔王城の絵が次々に現れた。


「昔から伝わる魔王城の記録を集めたものだ。

 その時に多かった魔物などの記録もまとめてあるぞ!」


「え! こんな本があるの!」


「いや、これは私が資料から抜き書きしたり、画家に写させてまとめたものだ」


「えっ! じゃあ、最初の……とかある?」


「最初?」


「最初のオベリウスは、本当のオベリウスだったの?

 つまり、建国時の王弟? のオベリウス」


 祖父は最初のページを開きながら言った。


「いや、魔王オベリウスは、魔法使いオベリウスが処刑された後に現れている。

 だから、違う人物だ」


 ミレーヌがそこまで話してから気がついたように言った。


「お爺様も魔法使いのオベリウスを知っている!?」


「まあ……、魔王が毎回名乗るのがオベリウスという名だからな。気になって調べた」


 その時、コーラスの声が聞こえた。


「ほら! ミレーヌ!

 木材を出して柵だけでも作っておこう!

 そうすれば夜の見張りが楽になる!」


「お爺様! 後で! 後でお話しを!!」


 ミレーヌはそれだけ言うと、コーラスやカイエンの方へ走って行った。

 みんなが知っているものを出し合えば、真実により近づけるのではないか!?

 今は安全に夜を過ごせるように、この場をできるだけ整えるのが先だ……。


 カイエンが大量の木材を出し、ミレーヌは大工道具を出した。

 ギルド職員や冒険者パーティが手際よく組み立てていき、見張りをしながら騎士達が守る体制を考えながら設営していく。


 ジョルジュと前辺境伯爵は馬車やコボーの番をしながら、カイエンやミレーヌとマリアが火の位置を決めて焚火台を設営していくのを見ていた。


「ジョルジョ王子は野営の御経験は?」


 前辺境伯爵の問いにジョルジュは苦笑しつつ言った。


「あまり……、ありません」


「そうですか!

 実は私もです!

 私の父は、勇者アレックスで初代辺境伯爵です」


「はい、存じています」


「そうでしょうな。勇者で英雄と呼ばれ、一緒に魔王を討伐した聖女マールを王子から奪うように妻にして……。

 まあ、男の中の男という……。いや、王子から奪うは言い過ぎか、失礼しました」


「いえ、その通りです。

 私は歴史が好きで、知っていますので。

 暴君と呼ばれたアルレディオ王子、その後の王弟ですね……」


「……でも、聖女が勇者と結ばれたことで、私が、そしてゴードンが、ジョナサン、ミレーヌ、マリアが生まれたのですからね。

 私は父の力を受け継ぐことはなく……、勇者……騎士としてよりも領地経営の方が楽しかった。

 魔王も父と母が退治したばかりでしたしね。お恥かしい話ですが武の辺境伯爵と呼ばれる立場でありながらそのような者ではなかったのです」


 ジョルジュは前辺境伯爵の気持ちがわかるような気がした。


「受け継ぐことはないって……。

 そんなことはありません。あなたがしっかり受け継いで繋いだから、ジョナサンやミレーヌ、そしてマリアと才能を開花させた者達が生まれたんです」


 前辺境伯爵は驚いた表情をしてから微笑んだ。


「ジョルジュ王子はお優しいですね。

 そう言って頂けると私の存在も必要だったのだと褒めてやれますよ。

 ありがとうございます」


「やさしいだなんて!

 本当のことです!」


 ジョルジュが少しむきになって言い返した。

 前辺境伯爵は孫を見るような慈愛に満ちた目でジョルジュを見つめる。


「……大丈夫ですか?

 勇者の名は本当に重い……。

 求められていない時でも、勇者の息子として見られるのは……。

 今、ジョルジュ王子には勇者の名が与えられた。

 その重さ……。

 ミレーヌやカイエン、コーラス、そしてマリアには弱いところを見せてもいいから、一緒に背負わせてやって下さい。

 父、アレックスも、マールやアルファード、そしてバートがいなかったら勇者なんてやってられなかった……とよく話していましたよ」


「……はい」


『違う』と言おうと思ったのだが、ジョルジュは素直に頷いていた。


読んで下さり、ありがとうございます。

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