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生まれつきの婚約者がいるなんて聞いてない!?  作者: 月迎 百
第5章 魔王の正体と倒し方
124/205

124 叙事詩?

どうぞよろしくお願いします。

「どういうことだ?

 魔王は身体を、命を持たないということか?」


 ジョナサンが呟き、アルベルトが続けた。


「たぶんね。

 で、王家に対して強い恨みを持っている。

 これまで、勇者や聖女、魔法使い、聖騎士……、この国の一番の力を持つ者達が魔王を倒したとしても……。そのまま、まんまと逃げられていたということだ。

 王家に対して強い恨みがあるなら、そこに王家の血を継いだ者がいたら?

 最後まで逃げずに戦おうとするかもしれない」


 アルベルトは皆がちゃんと理解しているか、確かめるように見回した。

 カイエンが焦ったように言った。


「最後まで!?」


「そうだ。今の身体で死ぬことができれば」


「そ……」


 カイエンが言いかけるのに被せるようにミレーヌが叫んだ。


「そんなことだめです! 

 憑りつかれている人が死んでしまう!!」


 アルベルトは微笑んで言った。


「やってみなければわからない。

 仮定なんだから。

 試してみる価値はあるだろう?

 ひとりの犠牲で、その後の平和が約束されるならば。

 ありだろう?」


 カイエンがゆっくりと言った。


「……それがあなたの真意ですか?」


「王家としての真意だな。

 個人としては、思うところがあるよ。

 カイエン、ふたりで話したい」


 カイエンが頷き、アルベルトがゴードンを見た。


「というわけだ。

 カイエンとミレーヌ、それにジョルジュには魔王討伐のパーティを組んでもらうことになった。

 カイエン、私の部屋で詳しい話をしよう」


「カイエン……」


 ミレーヌはカイエンの肩にそっと触れて、顔を覗き込む。

『私はあなたの味方だよ』とそう気持ちを込めて、頷くミレーヌ。

 カイエンも小さく頷いた。


 カイエンとアルベルトが出て行くのを見送り、ミレーヌはゴードンに言った。


「そういうわけで……、コーラスは一緒にパーティを組んでくれるかな?」


「どういうことだ?」


 ジョルジュがミレーヌに聞き、ミレーヌは首を振った。


「アルベルト王子は……、今は王子ではなくて神官とお呼びするべき?

 討伐パーティのリーダーをカイエンに任せるおつもりなのでしょう。

 ならば、私達はパーティに入ってくれる人を集めないと」


「リーダーを? 勇者である、私にではなく?」


 ジョルジュがふたりが出て行ったドアを見る。

 そんなジョルジュにミレーヌが話し掛ける。


「ジョルジュ王子、オベリウスのことをご存じでしたか?」


 ジョルジュは曖昧に首を傾げた。


「魔王としての名は知っている。

 でも、どこかで、違う本で読んだことがあるような気がして……。

 アルベルト兄様に言われて思い出した。

 書庫でその、読んだことがある。正史ではなく、伝承のような、昔話のような……」


「どんな話ですか!?」


「……子どもの頃のことで、よく覚えていないが……。

 大魔法使いオベリウスと聖女……が恋人同士で、この国の建国のために働き、民に慕われて……。

 その後、謀反を企んだと捕らえられ、処刑されて。

『大地の息吹は失われ、空は恵みの露を落とさなくなった』という文章がやけに印象に残っている。

 何故か、天候不順が起きたということだな。

 その責任が、王妃となっていた聖女にあるということになり……」


「ん? 聖女はオベリウスの恋人だったんだよね!?

 なんで王妃に!?」


「そこの過程はわからん。

 何故か王妃になっていて、それが問題で天候不順が起きているのではという……話になっていたと思う。

 そこで、王妃を廃妃として、辺境に追放したんじゃなかったかな?

 その後、天候は元に戻り、恋人を裏切った聖女が、廃妃が亡くなったからだろうと」


「だから、どうして恋人を処刑されて、王妃に!?」


「わからん! そうとしか書いてなかった!」


「それに大魔法使いなら、逃げられたんじゃ!?」


「わからないよ。詩のような感じで書かれていたし」


「詩! 建国の叙事詩か!? それとも伝承系? 昔話……」


 ミレーヌは考え込んだ。

 ジョナサンがジョルジュに声を掛ける。


「コーラスには話をしておきましょう。

 マリアももしかしたら一緒に行動したいというかもしれません」


「ああ、頼む」


「兄様! 図書室に行きます!

 カイエンやコーラスにもそう伝えて!」


 ミレーヌは部屋を出て行き、ジョルジュもその後を追った。


読んで下さり、ありがとうございます。

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