124 叙事詩?
どうぞよろしくお願いします。
「どういうことだ?
魔王は身体を、命を持たないということか?」
ジョナサンが呟き、アルベルトが続けた。
「たぶんね。
で、王家に対して強い恨みを持っている。
これまで、勇者や聖女、魔法使い、聖騎士……、この国の一番の力を持つ者達が魔王を倒したとしても……。そのまま、まんまと逃げられていたということだ。
王家に対して強い恨みがあるなら、そこに王家の血を継いだ者がいたら?
最後まで逃げずに戦おうとするかもしれない」
アルベルトは皆がちゃんと理解しているか、確かめるように見回した。
カイエンが焦ったように言った。
「最後まで!?」
「そうだ。今の身体で死ぬことができれば」
「そ……」
カイエンが言いかけるのに被せるようにミレーヌが叫んだ。
「そんなことだめです!
憑りつかれている人が死んでしまう!!」
アルベルトは微笑んで言った。
「やってみなければわからない。
仮定なんだから。
試してみる価値はあるだろう?
ひとりの犠牲で、その後の平和が約束されるならば。
ありだろう?」
カイエンがゆっくりと言った。
「……それがあなたの真意ですか?」
「王家としての真意だな。
個人としては、思うところがあるよ。
カイエン、ふたりで話したい」
カイエンが頷き、アルベルトがゴードンを見た。
「というわけだ。
カイエンとミレーヌ、それにジョルジュには魔王討伐のパーティを組んでもらうことになった。
カイエン、私の部屋で詳しい話をしよう」
「カイエン……」
ミレーヌはカイエンの肩にそっと触れて、顔を覗き込む。
『私はあなたの味方だよ』とそう気持ちを込めて、頷くミレーヌ。
カイエンも小さく頷いた。
カイエンとアルベルトが出て行くのを見送り、ミレーヌはゴードンに言った。
「そういうわけで……、コーラスは一緒にパーティを組んでくれるかな?」
「どういうことだ?」
ジョルジュがミレーヌに聞き、ミレーヌは首を振った。
「アルベルト王子は……、今は王子ではなくて神官とお呼びするべき?
討伐パーティのリーダーをカイエンに任せるおつもりなのでしょう。
ならば、私達はパーティに入ってくれる人を集めないと」
「リーダーを? 勇者である、私にではなく?」
ジョルジュがふたりが出て行ったドアを見る。
そんなジョルジュにミレーヌが話し掛ける。
「ジョルジュ王子、オベリウスのことをご存じでしたか?」
ジョルジュは曖昧に首を傾げた。
「魔王としての名は知っている。
でも、どこかで、違う本で読んだことがあるような気がして……。
アルベルト兄様に言われて思い出した。
書庫でその、読んだことがある。正史ではなく、伝承のような、昔話のような……」
「どんな話ですか!?」
「……子どもの頃のことで、よく覚えていないが……。
大魔法使いオベリウスと聖女……が恋人同士で、この国の建国のために働き、民に慕われて……。
その後、謀反を企んだと捕らえられ、処刑されて。
『大地の息吹は失われ、空は恵みの露を落とさなくなった』という文章がやけに印象に残っている。
何故か、天候不順が起きたということだな。
その責任が、王妃となっていた聖女にあるということになり……」
「ん? 聖女はオベリウスの恋人だったんだよね!?
なんで王妃に!?」
「そこの過程はわからん。
何故か王妃になっていて、それが問題で天候不順が起きているのではという……話になっていたと思う。
そこで、王妃を廃妃として、辺境に追放したんじゃなかったかな?
その後、天候は元に戻り、恋人を裏切った聖女が、廃妃が亡くなったからだろうと」
「だから、どうして恋人を処刑されて、王妃に!?」
「わからん! そうとしか書いてなかった!」
「それに大魔法使いなら、逃げられたんじゃ!?」
「わからないよ。詩のような感じで書かれていたし」
「詩! 建国の叙事詩か!? それとも伝承系? 昔話……」
ミレーヌは考え込んだ。
ジョナサンがジョルジュに声を掛ける。
「コーラスには話をしておきましょう。
マリアももしかしたら一緒に行動したいというかもしれません」
「ああ、頼む」
「兄様! 図書室に行きます!
カイエンやコーラスにもそう伝えて!」
ミレーヌは部屋を出て行き、ジョルジュもその後を追った。
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