113 相手を思う気持ち
どうぞよろしくお願いします
「じゃあ、ボリス!
レンダートまで頼んだ!
マークを休ませて、昼出発でいいから!
でも、できるだけ急ぎで頼む!」
カイエンが馬の用意をしながら言った。
「お任せ下さい!
おふたりもお気をつけて!」
カイエンが馬に乗り、ミレーヌの手を引っ張り上げ、レーニアに向けて走り出す。
ボリスが見送ってくれた。
カイエンは黙ったままだ。
ウィリアムが心配なのだろう。
自分は話を聞いているから、用心して王子のそっきんにはならなかったけれど、弟のウィリアムには伝えていないのだろう。
でも、王子の側近に選ばれるということは誉れであり、喜ぶ家族や弟に辞退しろ、なるな、とは言えず……だったのだろう。
「ウィリアムが見つかったら、パーティに入ってもらって、また冒険の旅をしようよ!」
ミレーヌの言葉にカイエンが笑う。
「『暁の勇者』に入れてくれるの?」
「まあ、魔法使いバートの曾孫でしょ。いいのでは?」
「バートとマール。
お互いに特別な人だと思い合っていたのに。
恋人らしいことなにひとできないまま、別れて……」
カイエンが落ち込んだように言った。
ミレーヌがぎゅっと手に力を入れる。
「私達は違うよ!
ぎゅってしてるし、キスだってしてるし、昨夜なんて一緒のベッドで寝たし!」
ミレーヌがやけに力を込めて言うので、カイエンは面白くなり笑った。
「ミレーヌ!
うれしいけど、一緒のベッドでっていうのはジョナサンには内緒で……。
俺、まだ殺されたくないし!」
「りょーかい!
私達の秘密だね!」
おどけたように答えるミレーヌの声。
カイエンは馬を走らせながら呟いた。
「本当、ミレーヌは、ミレーヌにはかなわないよ」
コーラスとジョナサンは昼にはレーニアの城へ戻った。
「ジョナサン! コーラス!」
ケリーが待ち構えていたかのようにエントランスに飛び出してくる。
「ウィリアムが本当にどこにもいないの。
レーニアの街にも、それらしい姿を見た者もいない!
それからマリアが、中庭でペンダ……」
ケリーがはっとしたように口を噤む。
ジョルジュ王子とラルフと従者がこちらに歩いてくるのが見えた。
みんな黙り込んで、ジョルジュ王子達がこちらに来るのを見ていた。
ジョルジュが目を合わせないようにしながら斜め下を見ながら話し出す。
「……その、ウィリアムのせいで、君達を責めたりして申し訳なかった」
ジョルジュは軽く頭を下げる。ラルフも同じように下げた。
ジョナサンとコーラスは不審げに顔を見合わせる。
「ウィリアムはどこに?」
ジョナサンはジョルジュの謝罪など気づかなかったように言った。
ラルフがすぐ返事をした。
「いない。昨日の昼前から姿が見えない。
責められたことを苦にしたのか……」
「ちょうど、一日ってとこか。
もう街を出ているかもしれないな」
コーラスの言葉にジョルジュが「ひとりで何ができる?」と言う。
「ひとりで?
ひとりでもできることいっぱいありますけど」
ジョナサンが笑う。
一緒に笑いながらコーラスが言った。
「そうそう、エド様なんて、ひとりでもっと辺境の奥地のパテマまでたどり着いてますしね」
ジョナサンが静かに言った。
「何か用事があって、王都に向かったのかもしれないし、近隣のギルドには連絡も入っているのだから、様子を見ましょう。
それとも、ウィリアムが他の誰かと接触すると、何か問題が?」
ラルフがはっとしたようにジョルジュ王子の前に出るとジョナサンに向き合った。
「引き続き、ウィルの行方を捜してくれ。頼む!」
そして頭を下げた。
読んで下さり、ありがとうございます。




