11 受け入れた?
どうぞよろしくお願いします。
作業を終えたミレーヌがカイエンに話しかける。
「ニードルラビットとホーンボアは倒したことがある。
ビッグポイズンスパイダーは夜行性だから、今まで出会ったことないや」
「野営時に大きめの焚火をふたつ作るようにしよう。
薪を多めに集めとかないとな……」
カイエンの言葉にミレーヌは頷いた。
「馬車があるなら、商人は馬車で寝るのかな?」
ミレーヌの呟きにギルド長が答える。
「いやー、それはわからんな。荷の量で事情は変わるだろうが……。
今回は3人で2台だしな。その可能性はあるな」
コーラスとシーラが戻って来て、出発することになる。
ギルド長とカレンが見送ってくれたのだが、商人達が「なんだ?」と怪訝そうだ。
「ギルド長は私の親の友人なんです」
ミレーヌがそう伝えると「なんだ、ギルド長の友人の娘さんだから心配してるんだね」と商人の一番年上の男性が笑った。
辺境伯爵とは思わなかったようだ。なんとなくミレーヌの父親はベテランの冒険者なのだろうと想像したらしい。
一日目の夜から野営になった。
馬車を道の近くへ前後に並べるように停め、馬車の斜め前後に焚火を作ることにする。
馬が見える前の方の焚火を商人達に使ってもらうことにして、後ろの焚火を使って夕食を作り始める。
シーラが収納から鍋と根菜とすでに切られているベーコンを出した。
ミレーヌが根菜を切っている間にシーラがベーコンを炒め始める。
切った根菜を投入。炒めてから水を入れ、塩コショウで味を調える。
これでスープとパンの夕食だ。
「うん、おいしい!」
カイエンがにっこり微笑んだ。
「簡単なものだけど、こうして外でみんなで食べるとおいしいよね!」
ミレーヌもにっこりした。
コーラスが3人の商人にスープを差し入れに行き、戻って来た。
「3人は後方の馬車の中で寝るそうだ。
ミレーヌ、前の方の焚火に移動しよう」
カイエンが「私が一緒に行く」と立ち上がりかけるがコーラスがそれを制した。
「交代にしよう。
俺が最初、ミレーヌとあっちに行く。
その間、カイエンはシーラを休ませてやってくれ」
カイエンが頷いたので、コーラスとミレーヌは前の焚火へ移動した。
馬も馬車から解き放たれ、杭に縄を繋がれてはいるが、自由にしていて、座って寝る様子だ。
焚火の近くで馬や少し離れた道や藪を警戒しながらコーラスがぼそぼそ話し掛けてきた。
「カイエンは天才魔法少年っていう噂だったよな。
冒険者ランクもBスタートだし。
ということは魔法使いのランクはもっと上ってことだよな」
「そうだね。そうだと思う」
「だから、婚約を受け入れた?」
「えっ? 受け入れたというか……。
もう決まってたみたいな……」
「でも最初は、断ろうとしてたろ?」
「ああ、まあ。
私と婚約してても、デメリットしかないかと」
「……カイエンが?」
「ううん、カイエンにとって。
私の方が……、貴族令嬢ってものから外れてるしね」
「うん、それはその通り」
「あー、コーラスから見てもそうだよねー。
でもね、カイエンはそれでも私がいいって言ってくれたから……。
私のことを知ろうとしてくれて、私を無理に変えないようにしてくれてる。
だから、私も彼のことを知ろうと思った」
「えーと……、それはカイエンのことを?」
「うん? 一応婚約者としての意識はしてるし、お互いに知り合っている……というとこかな?」
読んで下さり、ありがとうございます。
温泉、楽しみ。
でも1週間かかるのか~。




