109 マールからの手紙(中)
どうぞよろしくお願いします。
私とバートはこの魔王討伐の旅の中で、お互いに思い合うようになっていた。
戦いの中でお互い惹かれ合い、恋人らしいことはひとつもなかったけれど、特別な人だと、これからの人生を共にするならこの人がいいと思っていた。
だから、私は「待ってる」と返事して、アルファードとアレックスと一緒に魔王城の外で待った。
城が崩れて、バートが戻ってくるのを。
でも、城が崩れ、もう城と呼べない状態にまで朽ちたのに、魔王の気配も力も消えたのに……、バートは戻って来なかった。
そして、私は教会の大聖女の位を授けられ、仕事をしながら、彼を待ったわ。
アレックスはその時の王により、レイオス辺境伯爵となり辺境を治めるように命ぜられ、アルファードもローレウス伯爵となって領地をもらった。
ふたりは時々、王都の教会に私を訪ねてきてくれた。
その度にバートのことを話すの。私にはとてもうれしい時間だった。
魔王討伐から3年。
レオンハルト王子が妃を娶り、王太子となった。
アルレディオ王子には……、未来の王弟という立場になられることが決まったわけだけれど、まあ、荒れた気性の方だったから、結婚相手が見つからず。
そこに私の名前が上がったの。
聖女の私なら、うまくやれるのではないかと。
私はバートを待っている身だったけれど、王命とされたら、辞退することができなくなる。
その時、アレックスが結婚を申し込んでくれた。
バートを待つつもりなら、触れないで一緒に待つと。
私は、アレックスの手を取った。
そうしなければ、アルレディオ王子と結婚して、みじめな結婚生活を送っていたでしょうね。
アレックスは私を妹のように大切にしてくれた。
一年ほど偽りの夫婦を演じていたのだけれど……。
アレックスのことを愛してしまったのは、私の方。
穏やかな生活の中で、このままアレックスと一緒に生きていけたらと思うようになった。
帰ってくるかわからないバートを待つのに疲れてしまったのかもしれない……。
そして私はガイオンを産んだ。幸せだった。
その時、バートが帰ってきたの。
バートは、私とアレックスを祝福してくれた。
せつなそうな表情をしていたけれど、自分が遅くなったのがいけなかったと、思ったのでしょう。
私達を責めることはなかった。
その時、アレックスが、この先、子ども達の中で年頃がいい男女が生まれたら、婚約させて結婚させようと言ったのよ。
バートはミュラー子爵の後を継いだけれど、魔王討伐の褒美としてレンダート伯爵の爵位も貰った。
子爵の爵位を上げるのではなく、ふたつの爵位を重ねるという形ね。
そう、ミレーヌは気がついたかもしれない。
バートには兄がいたはず。
次男のバートがなぜミュラー子爵家を継いだのか?
そう、バートの兄はどこへ行ったのか?
植物園で、バートは会えるのはこれが最後かもしれないからと、話してくれた。
バートの兄は……、魔王オベリウスに憑りつかれ、魔王となっていたのよ。
彼はアルレディオ王子の行動に悩まされ、周囲からはもっと努力するように責められ、アルレディオ王子に真摯に向かい合っても裏切られ、傷つけられ……。
それでも、自分がこの席を降りたら、弟のバートがこの席に……、とバートを守るためにも仕え続けていたそう。
とうとう限界を超えてしまい、ふっと姿を、王城から消してしまった。
誰にも気づかれず、魔王オベリウスに憑りつかれ、辺境まで来ると、魔王城を復活させ、魔王オベリウスを名乗り、王国に宣戦布告した。
私達は何も知らなかった。
バートはもしかしたら、と思ってはいたそう。
王城の書庫に、かつて魔王に憑りつかれたことのある魔法使いの記録などもあるのだそう。
それを読んでいたバートは仮説を立てた。
兄が憑りつかれ、魔王の依り代になっていること。
魔王が倒される時、その依り代の魔法使いから離れる。その時、魔法使いは遠くへ転移され、魔王は消滅したように見えるのではないかと。
魔王に憑りつかれていた魔法使いが手記を残しているのだもの、まだ兄は生きていると。
読んで下さり、ありがとうございます。
荒れた気性、すごく言葉を選んでる……、変な感じ。
これから実家の方へ行きます。
そう、Wi-Fiない実家です。
明日は投稿お休みします。
明後日は……、帰宅するのが夕方なので、夜投稿できるか、できないか……というところです。
これからもどうぞよろしくお願いします。
メリークリスマス!




