104 暗闇に飲まれる
どうぞよろしくお願いします。
「は?」
ウィリアムは驚愕した。
足止めを自分に命じる? それは……。
「何をしてもいい。力づくで止めろ。
魔法なら、こっそり怪我をさせることなど簡単だろう?」
魔法は……、魔法は……、そんなことのために使うためのものではなく……。
「……自分達の卑劣な行為を隠すために?
大切な人を守るために正しいことを言った令息達を、魔法で闇討ちにしろと?」
「なんと、ウィルは……、そんな風に思っていたのか?
ジョルジュ王子のことを!?」
ラルフが大げさにジョルジュ王子の名を叫ぶ。
ウィルはラルフを睨みつけた。年上の騎士。ジョルジュ王子を守るために、これまで一緒に、協力してきた。
「違います。
私は、ジョルジュ王子の側近です。
ジョルジュ王子は私より年上です。ですが、あまり人と親しくしてこなかったのだろうなと思うことがありました。王子として孤独なこともあったのでしょう。それで、御自分の感情に戸惑ったりすることもあるように感じました。
私は、王子の側近です。友人でもありたいと思ってきました。
これ以上、悪い方向に進ませるのは、私は見ていることはできないし、従うこともできません!
ラルフ、ジョルジュ王子、気がついて下さい!
今のおふたりがしていることは、おかしいです!」
ジョルジュ王子の目が揺らいだ。感情が動いている。
「ジョルジュ王子!」
ウィルアムは心を込めて呼んだ。
今なら、引き返せる。まだ王家には全て伝わっていない。辺境伯爵に謝って、正直に自分の苛立ちを令息達にぶつけてしまったと正直に謝ればいい。
自分も一緒に頭を下げる。そばにいて、それを止められなかったのだから。
ラルフがそんなウィリアムの気持ちを簡単にひっくり返してみせる。
「そうか、ウィルは……、ジョルジュ王子があの令息達の下であると認めて、彼らに謝罪しろと」
「下とか上とかではなく……。
自分の感情をうまく表現できないことや、自分の思い通りにならず嫌だと思うこともあるでしょう。
今なら、若い時期の過ちとして、大事にならずに済ませられます!
このままでは令息同士の問題ではなく、辺境伯爵家とふたつの伯爵家、王家を巻き込む大事になってしまいます!」
「若い時期の過ち……、この場ではウィルが一番若いな」
ラルフがニヤリと笑った。
「王子、ウィルが『自分の若さが王子を唆して、このような事態を引き起こした』と告白したというのはどうでしょう?
ウィルが、自分より優秀な兄に嫉妬して、ジョルジュ王子に令息らを処罰するように焚きつけた」
「な……!?」
ウィリアムは耳を疑った。
確かに自分は、自分の居場所を取られたくないとカイエンに嫉妬や対抗心を抱いたことは事実。
でも、実際に貶めようとまでは、していない……。
それに、兄とは今回のことで、再び、兄弟として、家族としての絆を感じることができた……。
「図星だな。
才能のある兄がいるというのは、大きなコンプレックスになるものな。
今回のことはウィルが、ジョルジュ王子の力を使って、優秀な兄カイエンを貶めようと画策したこと。
私達はカイエンに嫉妬していたウィルに騙されていたということに。
そうすれば、ジョルジュ王子の体面は守られましょう」
『守られる』という言葉にジョルジュの目の揺らぎが止まる。
ウィルを見るジョルジュの視線は何の感情もこもっていないように見えた。
「ウィル、お前がそんな個人的な嫉妬や体面のために、私達を利用していたとは!?」
「ジョルジュ王子!?」
ウィリアムの身体も心も冷えていく。
真っ暗な闇に飲み込まれ、自分が消えていくような感覚……。
読んで下さり、ありがとうございます。
ウィル……。




