103 外れた狙い
どうぞよろしくお願いします。
「いいのですか!
ありがとうございます!!」
カイエンがうれしそうに大きな声で言った。
ミレーヌも「お父様、お母様、ありがとうございます」と笑顔で言い、手紙を大切そうに収納魔法にしまった。
「……宿で一緒の部屋に泊るのは、安全のために許すが……、結婚するまでは手を出すなよ」
ゴードンがカイエンに言い、ジョナサンも「それだけは守れよ」と言った。
「はい、ミレーヌを守ります!」
その時、ウィリアムが早足でエントランスに入ってきて「どこへ!」と言った。
ケリーが微笑む。
「昨夜、ジョルジュ王子に王都での謹慎を命じられましたので、先陣を切って、カイエンとミレーヌは王都へ向かいます。
ウィリアム様はどうなさいます?」
ウィリアムは焦ったような表情をしてから、ため息をついた。
「……兄さん、気をつけて。
今朝、私は昨夜のことを聞きました。
私はジョルジュ王子に言われて、皆の様子を見に来たんです。
王子は……、皆さんが頭を下げに来ると思っているようです……。
もう行ってください。そのように伝えます。
コーラスやジョナサンももう出た方がいいかもしれません」
カイエンがウィリアムを一度抱きしめてから離れ、ミレーヌの手を取った。
「レイオス辺境伯爵、夫人……、ジョナサン、コーラス、シーラ、マリア……。
ありがとうございます。後は頼みます。
行こう! ミレーヌ!」
「はいっ!
行ってまいります!」
ミレーヌは元気にみんなに挨拶するとカイエンが乗った馬の後ろに引っ張り上げてもらい乗り込んだ。
目指すはレンダート伯爵領。
ここから馬車で6日間ぐらいの旅程の所だ。
馬なら急いで3~4日で行けるだろう。
ウィリアムはふたりを見送ってから、ジョルジュ王子の所へ戻る。
「ウィル、どうだった?
みんな、私にどう許してもらうか、どう謝罪するか、困っていただろう!」
ジョルジュがのんびりと言った。
「……カイエンとミレーヌ嬢は、王都に向けて出立しました」
「えっ!?」
ジョルジュは驚いた声を上げ、ラルフを見る。
ラルフは舌打ちした。
「我々も急ぎ戻りますか……、いや、それでも追い付けないか?
令嬢が一緒なら、足は遅いか?」
ウィリアムは馬にふたり乗りして駆け去って行ったふたりの姿を思い出して微笑んだ。
「何を笑っている?」
ラルフに見咎められて、ウィリアムは言った。
「馬で、ふたり乗りで出て行くところでした。
ふたりとも収納魔法ができますし、身軽で、今から……、とても追いつけないでしょう。
それに、ふたりが出立したということは、すでに今回のことについて、辺境伯爵家から伝令が先行して出ているでしょう」
ラルフが慌てた。
「我々が王家に報告する前にいろいろ証言が出てしまうとまずい!
ジョナサンやコーラスはまだ出ていないのだな?」
「さあ、どうでしょうか?
私はカイエンとミレーヌ嬢が馬に乗って出て行く姿を見ただけなので」
「どうするのだ!」
ジョルジュがラルフを責めるように見た。
ラルフは少し考えてからウィリアムを見た。
「ウィル、ジョナサンとコーラスを足止めしろ。
さすがにこのふたりはまだ出立してないだろう。
辺境伯爵も息子のジョナサンにはいろいろ書類を持たせなくてはならないだろうし」
読んでくださり、ありがとうございます。
ウィリアムとジョナサンとコーラスは名前で呼び合うようになってます。
マゼルでお茶してけっこう打ち解けました。




