第1話：現実世界のハーレムと陰キャの影
主人公・田中太郎は、どこにでもいるようで少しだけ特別な男子高校生。彼の周りには、なぜか個性豊かな女子たちが集まり、にぎやかでドタバタな日常が繰り広げられます。けれど、華やかな日々の裏側には、陰に潜む孤独や葛藤も……。
この物語は、友情と恋愛、そして成長を描いた学園ラブコメディです。笑いあり、ドキドキあり、時に切なさも混ざる青春の１ページを、どうぞ楽しんでください。
高城翼は今日も学校で、いつも通りの視線を感じていた。教室の端っこからちらちらとこちらを見ている女子たち――クラスでも有数の成績優秀者で、運動神経も抜群の翼は、知らず知らずのうちにハーレム状態になっていた。
「またあの子、私のこと見てた…」
「え、ちょっと、あの教科書の持ち方…ドキッとする」
そんな小声が周囲から聞こえてくる。翼は苦笑しながらも、軽く頭をかいた。日常の光景ではあったが、彼の心の中では微かな緊張と期待が入り混じっていた。
しかし、すべてが順風満帆というわけではない。教室の奥で、陰の気配がひっそりと漂っていた。田中太郎――クラスでも目立たず、細身で眼鏡をかけたおどおどした男子。翼に対しては、ささやかな嫌味や陰湿な意地悪を繰り返していた。
「また俺の席にノートを置いてくるのか…」
太郎は小さく呟くと、翼の机の周りに紙切れを忍ばせる。見つかれば些細な注意を受けるだけだが、毎日の積み重ねが彼にとってはストレスの源になっていた。
昼休み、翼は友人たちと談笑していたが、太郎の存在は彼の意識の端に常にあった。太郎の小さないたずらに気づきつつも、翼は穏やかに笑ってやり過ごす。女子たちの視線、友人との会話、陰キャの嫉妬――すべてが複雑に絡み合う日常。
放課後、教室に残った翼は、自分の机に置かれた紙切れを見つける。そこには意味深な落書き――陰湿ではあるが、どこか必死さも感じられる文字。翼は軽く息をつき、微笑みながら紙を丸めてゴミ箱へ放り込んだ。
「…さて、今日も一日無事だったか」
そう呟き、彼は教室を後にした。しかし、翼の知らないところで、太郎は静かに視線を投げ続けていた。日常の小さな戦いは、まだ始まったばかりだったのだ。
そしてその夜、現実世界の天才高校生は眠りについた――だが、彼の未来は予想もしない形で変わろうとしていた。事故の音、光、そして知らぬ間に訪れる異世界――翼の平凡な日常は、ここで大きく崩れ去ることになるのだった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。第１話では、太郎の日常のきらめきと、その背後に見え隠れする影を描きました。彼のまわりの明るさと、時折差し込む陰のコントラストが、物語をより深くしていきます。
これから太郎がどんな出会いを重ね、どんな選択をしていくのか。喜びや苦しみを通じて、少しずつ成長していく姿を一緒に見届けてもらえたら嬉しいです。次回もぜひ楽しみにお待ちください。
