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遠藤みちこの依頼(その2)
遠藤よしこはおぼつかない足取りで歩いていた。ある疑惑がよしこの頭を覆い尽くしていた。夫、遠藤一郎の行動が最近おかしいからだ。
今まで仕事で残業など無かったのに、頻繁に帰りが遅くなる。休日も仕事だと家を空ける。よしこを避けるような気配も感じる。
浮気
まだ疑念の段階だが、よしこの頭の中はそのことでいっぱいだった。よしこと一郎の間には子供はいなかった。仲は良い方だとよしこは思っていた。なのになぜ?
とても一人で部屋にいることも出来ずに、あてもなくふらふらと外に出て、もう五時間が経とうとしていた。
ふと壁に貼ってある張り紙に目が止まる。今時、張り紙を張る人物の気が知れない。その張り紙にはでかでかとその人物の顔面が印刷されていた。脳天気そうに笑っている。そして添えられている文章によしこは心が動いた。
「ミツオ探偵事務所 どんな案件も一万円から承ります」
よしこは張り紙に記載されている住所を書き留めて歩き出した。少し歩みに力が宿ったように見えた。