赤い傘連続殺人(その1)
カシハラビレッジの一角。エイトウッド。ミツオの暮らす街。
人々が行き交う地下鉄のホームにたたずむ男。何人もの異性が思わず振り返りため息をつく。それほどの美貌の持ち主だった。少し動いただけでも、精悍な豹を思わせる筋肉を持ち合わせていた。男の名は三山工
三山はある一点を見据えていた。うら若き女性。手には赤い傘を持っている。
リニアトレインが音も無くホームに滑り込み、停車する。赤い傘の女が車内に乗り込む。三山もそっと同じ車両に乗った。
「ミツオさん邪魔です」
エリーが丸いドームを引き連れてミツオにすごむ。宙に浮く球状の物体は掃除機だ。自動で部屋中の空間を掃除する。無言でエリーはドーム型掃除機を起動させて小さくつぶやいた
「いけ」
掃除機は最強モードでミツオの横たわるソファーに突進していく。ミツオは声をあげて立ち上がる。
「ミツオさん。今月も売り上げがピンチです。どうにかしてください」「どうにかしないといけませんね」 ミツオは人ごとのようにつぶやいてテレビをつける。ニュース映像がホログラムで浮かび上がる。
「昨夜発生した殺人事件の女性の手には、赤い傘が握られていました……」
ミツオはご機嫌斜めのエリーの視線を気にしつつ映像を注視する。
「赤い傘連続殺人……」