パリ – 愛と希望の都
エマとラースに別れを告げてから一時間後、彼らはフランクフルトに到着した。
フランクフルトからパリへ飛んだ。フランスの首都の空気が、ケントを特別な雰囲気で迎えた。それは彼がこれまでどこでも感じたことのないものだった。焼きたてのパン、高価な香水、そして開花したマロニエの香りが混じり合っていた。街は彼らの眼下に広がり、夕日の光に輝いていた。ケントは、かつてないほどの歓喜で心が満たされるのを感じた。それは夢の街、彼が本で読み、映画で見た街だった。
エジェニーは、まるで生まれ変わったかのように彼の隣で輝いていた。彼女の顔からは笑みが絶えず、瞳にはいたずらっぽい光が踊っていた。彼女は故郷に戻ってこれたことに心から幸せを感じているようだった。そして、その喜びはケントにも伝わり、ヴァルデマールの暗い秘密、エマとディエゴの問題、そして何よりも彼自身の問題に対する不安を忘れさせてくれた。今、ここで存在するのは、世界で最もロマンチックな街の抱擁の中にある、彼ら二人だけだった。
彼らはホテルではなく、歴史的な中心部に位置し、咲き誇る庭園と細い通りを見下ろすエジェニーの美しいパリのアパートに滞在した。彼女のアパートは優雅さと居心地の良さの具現化だった。高い天井、アンティークの家具、壁にかけられた絵画、そして柔らかな光が差し込む大きな窓。本や芸術品に囲まれたここで、ケントはゲストとしてではなく、まるで自分の家にいるかのように感じた。まるでいつもここに属していたかのように。
パリでの最初の数日間は夢のようだった。エジェニーは彼を案内し、自分の街を見せてくれた。彼女は標準的な観光ルートを選ぶ代わりに、パリの隠れた宝石を彼に開拓してくれた。最も美味しい焼き菓子のある小さなカフェ、街の生活を何時間も眺めることができる人里離れた広場、珍しい芸術のある小さなギャラリー。彼らは手をつないでセーヌ川の岸辺を散歩し、ケントは魂が軽くなるのを感じた。彼らはモンマルトルに登り、そこからは街の素晴らしい景色が広がり、エッフェル塔のきらめく光を眺めながら夜遅くまでそこに座っていた。
ほんの少し前まで深い憂鬱に沈んでいたケントは、今、信じられないほど生き生きと感じていた。エジェニーと過ごす一瞬一瞬が意味に満ちていた。彼は、ただ彼女を観察している自分に気づいた。彼女が笑う様子、お気に入りの場所について話すときに目が輝く様子、彼の手に優しく触れる様子。
エジェニーへの彼の愛は毎秒ごとに深まり、すべてを包み込むようになっていった。それは単なる賞賛ではなく、彼の全世界をひっくり返すような感情だった。エジェニーはただ彼を救った女性ではないと彼は悟った。彼女は彼のもう半分の存在であり、言葉なしに彼を理解し、彼のすべての弱点や傷跡を受け入れる人だった。彼女の存在は彼にとって力とインスピレーションの源だった。彼女のそばにいると、彼は何でもできると感じた。
彼は彼女の気遣い、優しさ、無限の忍耐を見た。彼女は彼に何も要求せず、ただ愛とサポートを与えてくれた。彼らの関係は、太陽の光の下でゆっくりと花開くように、自然に、急ぐことなく発展していった。すべての視線、すべての触れ合い、すべての言葉が彼の魂を温かさで満たした。彼は何時間でも彼女の話を聞き、ただ彼女の声に耳を傾けることを楽しみ、彼の心は優しさで溢れた。
夜には、彼らは一緒に料理をし、台所での彼の不器用さに笑い合った。以前はコンビニエンスストアの食事や加工食品しか食べていなかったケントは、愛情を込めて作られた食事が信じられないほど美味しいことに驚いた。彼らは音楽を聴き、本を朗読し、ただお互いの会社を楽しんだ。
ケントは以前彼を苦しめていたすべてを忘れた。仕事の問題、孤独、学校でのいじめ――それらすべては二の次になり、ただ薄れた記憶となった。彼は今を生きていた。エジェニーが彼に与えてくれる一瞬一瞬を生きていた。彼女の瞳の中に、彼は自分の反映を見た。しかし、それは違う反映だった。自分自身を見つけ、愛を見つけ、人生の意味を見つけた人間の反映だった。
パリは単に美しい街ではなかった。それは彼らにとって、信じられないほど美しい愛の始まりの舞台となったのだ。そしてケントは、これがほんの始まりに過ぎないと知っていた。