第9話 新たな敵
ゲオテア砦、屋上階。ゲオテアと伝令に対して、オレ、カデンツァとキヌが距離を取って睨み合っている。
「降参だっつってんのになぁ、しつこいしつこい。」
「ほら、もうこっちには武器もなんにも無いってのに。」
ゲオテアが両手をバンザイして見せる。だが。
「なんてな。」
その両手から、天に向かって魔力の光の柱が伸びる。
空中から、巨大なにかがドサっと、オレと敵の間に割り込むように落ちてきた。
「召喚獣、悪魔獣だ。天井がある部屋では使えんがな。」
「さぁ、この狭い足場で、どうかわす?」
悪魔獣。狼としては巨大に過ぎ、獅子と呼ぶにはあまりに醜く、河馬と見るには尖すぎる、どす黒い色を纏った、異形の獣だった。
……だけど、ボクは、「邪気眼の書」に書いていた【必殺技】を、いよいよ使うことが出来そうで、期待でいっぱいだった。
ホルスターに入っている聖龍銃を手に取り、高く放り投げる。聖なる龍、ヴァレンティーナが、今までのミニサイズではない、真の姿を表した。
巨大なドラゴンは、宙返りして、オレの背中側で待機する。
そして、オレは真紅の彗星剣を両手で握り、胸の前で掲げる。赤い刀身が大きく膨れ上がる。必殺技用の専用の形。
そして、ヴァレンティーナは、オレの身体を透けてすり抜けながら、オレの剣を受取、咥え、敵に向かって突進していく。剣から伸びる刀身は、光属性の魔力も帯びて、赤と白の輝く螺旋のオーラを描く。
【混沌螺旋龍騎斬】:
聖龍銃を真なる聖なる龍の姿に戻し、真紅の彗星剣にカデンツァとヴァレンティーナの両方の魔力を込め、光と闇の螺旋の魔力の刃で敵を切断する。
ヴァレンティーナが、敵の悪魔獣を真っ二つに切断した。
悪魔獣は、光の粒となって砦の屋上から消滅する。
役割を果たしたヴァレンティーナも、光の粒となって、オレのホルスターへと戻ってきた。
切り札を失ったゲオテアは、……気付いたときには、既に地面に倒れていた。
「伝令」が、ニヤっと笑う。
「ヤるねぇ、キミたち。」
キヌが問う。
「ゲオテアさんに、何をしたんですか?」
「んー?キミたちが、砦の団員にヤったことと、同じだよ。慈悲慈悲。眠ってるだけで、死んでないよ、ダイジョーブ。」
「キミらのスパイも、放っといてあげたんだから、これでオアイコだよね。」
……オレの攻撃が相手を殺していなかったことも、結社のスパイが侵入していたことも、わかっている?
「カデンツァ様、ヤバそうですよ。『視て』おきましょう。」
キヌが提案する。
オレは、【ST/OP】をすぐさま発動した。
【ST/OP】:
使用対象のステータスを表示する。ステータスが表示されている間、異世界の時間は止まる。その間、キャラクターはステータスを変更させるような行動やスキルは行えない。
だが。
発動したと同時、相手の動きは止まったが、その伝令役の姿には、モザイクのようなモヤがかかった。オレとキヌが相手に駆け寄るも、「厚さがまったくない」、まるで紙のような存在になっていた。
『敵:伝令? LV??』
「……どういうことでしょう?」
キヌにもわからないらしい。
こういう表示でありがちなのは、「今は戦う気は無い敵」だが……。とりあえず、元の位置に戻って、時間停止を解く。
「さて、今回はこのあたりで、バイバイ。」
伝令がそう発すと同時、先程の悪魔獣に、さらに三本のツノが生え、たてがみがあり、鋭い嘴が生え、翼がついた存在が、空中から屋上階に舞い降りた。
ゲオテアを口に咥え、伝令役を背中に乗せ、飛び立つと、ワームホールのような闇の空間へと姿を消した。
……得体の知れない、強敵。
だが、オレが、ボクが思ったのは。
「「面白い。」」
この世界に来て初めて、カデンツァ・ナイトハウルと、超山井忠二が、完全に一体化した瞬間だった。
キヌが息巻く。
「ええ!私達の戦いは、まだまだこれからです!」
……えっ?
キヌ、そのセリフは、永遠との別れを表してしまうんじゃないか……?
【✟朗報✟】厨二病ニキ、異世界で最強の本物になる~フッ、オリジナルの「邪気眼の書」と共に無双させてもらうぞ~
~The end……?~
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また、作者の他作品
なろうモノ嫌いの異世界記
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