表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【✟朗報✟】厨二病ニキ、異世界で最強の本物になる~フッ、オリジナルの「邪気眼の書」と共に無双させてもらうぞ~  作者: 不連続がと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/9

第7話 スカーレット

「先手は、取らせてもらうね。」


 スカーレットの大剣を纏っていた炎の魔力のオーラが、彼女の全身へと広がっていく。燃え盛り、紅連に染まった女戦士が、肩に担いだ巨大な大剣を振りかぶる。

 こちらへ踏み込み、ダッシュして斬り込まんとしている。その初動だけで、周囲の空気が震えた気がした。

 紅蓮の(スカーレット)旋風ワールウィンド。見た目の華奢さとは裏腹に、彼女は圧倒的な剛力と殺気を漂わせていた。


 こちらが、一手遅れたのは否めなかった。オレは、【ST/OP(スラッシュステオプ)】をすぐさま発動する。


ST/OP(スラッシュステオプ)】:

  使用対象のステータスを表示する。ステータスが表示されている間、異世界の時間は止まる。その間、キャラクターはステータスを変更させるような行動やスキルは行えない。


『敵:傭兵スカーレット LV97』


紅蓮の(スカーレット)旋風ワールウィンドの二つ名を持つ傭兵。』


『大剣による剣技と、炎属性の魔法の習熟度が高い。』


『強敵相手への秘密兵器として、アイテム・(チップ)を忍ばせている。』


(レベルが相当高いな。それから……、)


(……チップ?)


 見慣れない単語だ。『強敵相手への秘密兵器』、危険な匂いがする。

 その正体を、確かめておく必要があるな。


 オレは、剣を担いだ状態で静止しているスカーレットの方へと、歩み寄ろうとした。


「えっ」


 不意に、背後から聞こえたのはキヌの声だった。


(……今、時間は止まってるはずだよな?)


 振り返って、キヌを確認する。


「わ、わたしは“すご魔道士”なので! たぶん、時間停止も効かないんですっ!」


 なんなんだ“すご魔道士”って。白魔道士と黒魔道士はどうしたんだ。


「で、カデンツァ様。スーちゃんの体をじろじろえっちな目で眺めたり、触ろうと……」


「……そんなことはしない。」


 純粋に、チップの正体を探りたかっただけなのに、あらぬ疑いを掛けられてしまった。

 勝手にあだ名もつけてるし。


 そりゃあ、これがRPGゲームなら、女キャラをぐるぐる回転させて、舐め回すように見たり、スカートの中を覗いたりするプレイヤーもいるだろうけれども。


「キヌもこっちへ来てくれ。秘密兵器の正体を事前に探っておこう。」


「まさに不正チートですね。上等です。」


 近寄って、見ると、スカーレットの腰のところに、バックルつきの、赤い革製のカードケースのようなものがついている。


「……キヌ、中身を見てもらえるか。」


 念の為、セクハラを疑われないように、キヌに頼む。


「カデンツァ様、こんなものが入っていました。」


 赤く染まった、六角形の薄い板が、6枚出てきた。

 炎のような紋様が刻まれている。


十重デクテト爆炎ブレイズチップ×6:

 スカーレットが、魔法【爆炎ブレイズ】を1枚ごとに10回分封印したチップ。

 起動用の少ない魔力だけで、10倍の威力の【爆炎ブレイズ】を発動させられる。】』



「これは……。爆弾と言ってもいいレベルだな……。」


「厄介ですね。」


(レベル差で押し切ると火傷するな、何か搦め手が必要か……。)


 そして、5分ほど、腕を組んで、考える。


「待たせた、キヌ。」


「はい。」


「よし、行くか。」


(邪気眼の書は、今後書き足す可能性も考えていた。だから今回は、スペースを温存するため、2つの内容しか書き足していない。)


(だけど、過去に書いた自分のスキルも、今回は復習してきた。今度こそ、ゴリ押しでなく、しっかり、カッコよく、勝つ!)


 キヌとカデンツァが、時間停止する前の元の位置に戻る。

 それを確認し、オレは時間停止を解除する、スカーレットが、迫ってくる――!


月無き夜の(ムーンレスナイツ)幻影ミラーシュシールド】:

 魔力による盾を発生させ、左腕に構える。相手の攻撃に応じて、盾は拡大する。


 復習してきた防御のスキルを早速発動させる。スカーレットの振り下ろした炎の大剣を受けるため。


 ズガァン!


 その威力に、オレは大きく後ろに押された。


 間違いない。

 彼女は、今まで戦った中で、圧倒的に、一番の強敵だ。


「次は、こちらの番だ。」


 盾を解除し、両手で、青い刀身が光る剣を握ると、オレはスカーレットに向かって駆けた。

 スカーレットは、それを、大剣で受ける。


 ギャリィン!ギ、ギ、ギ……。


 両者の剣が触れ、鍔迫り合いの様相になる。

 レベル差はあるが、スカーレットの練度は今のカデンツァよりも高いのか、力が拮抗する。

 押し切れないか……!


(くっ……)


(ぐっ……)


 双方が、苦い顔で、一旦後退する。


「ちょっと早いけど、切り札、いっとこうか」


 スカーレットが、一発目のチップに手を掛ける。

 チップが輝きを放ち、魔法が発動する。


 十重デクテト爆炎ブレイズ。まるで大玉ころがしの球のような、威圧感を放つ巨大な火球が、両者の間に浮かぶ。


「便利な道具だな……。……どう作るんだ?」


 オレは、余裕があるように見せつつ、問いかけた。


「さぁてね。」


「手品のタネは、知らないほうが楽しめるよ。」


(来る……!)


 火球の飛来に合わせ、オレは両手を前に突き出すと、それぞれの手で別の魔法を発動させた。


月無き夜の(ムーンレスナイツ)幻影ミラーシュシールド】を左手で、そして、右手は別の魔法を――。


 左手で発生させた盾は、相手の攻撃に合わせて拡大。

 身体を覆う、巨大なものへと変質した。

 衝撃に備える。


 ズドオオオオオン!


 火球が、オレを襲った。

 先程よりもさらに大きくふっとばされ、だが、なんとか着地する。

 砂煙と、炎による煙が混ざり合い、大きく上がっている。


 その煙で、お互いの姿は見えない。

 オレだけでなく、スカーレットも煙の中にいるはずだ。


 煙が晴れるまで、十数秒、そして、視界が晴れる。


「どうかな?」


 お互いの顔が見えると、自慢気に、あくまで軽いテンションで問うスカーレット。


「たまらないな。」

「そんなものを六枚も持っていたら、確かに旋風も起こせるだろうな。」


 ニヤっと笑って答える。


「ん?なんで六枚って知ってるのかな?」


 怪訝な顔をするスカーレット。


「ま、いいか。お望み通り、じゃ、二発目ね。」


 ホルダーから、チップを出そうとする。だが。


「残念だったな。」


「残りのチップは、こっちだ。」


 オレは、ひらひらと、5枚のチップを見せつけた。


 先程、火球を受ける直前に右手で発動したのは、「暗黒の(ダークネス・)錬金術師パラケルスス」だった。


暗黒の(ダークネス・)錬金術師パラケルスス】:

 黒衣をまとったフード付きの召喚獣が、素材からアイテムを錬成する。ただし、錬金されたアイテムは全て漆黒に染まる。



 煙に乗じて真上方向に召喚獣を打ち上げ、視界が悪い中で、後ろからスカーレットのカードを盗み、カデンツァへ届けたのである。

 想定していた本来の使い方ではないが、盗賊からなら盗みに後ろ暗い気持ちを持たなくてもいいし、そういう意味では価値を生み出す「錬金」と言えるかもしれない。



「なっ……。」


「一体、どうやって……?」


 明らかに、動揺するスカーレット。


「手品のタネは、知らないほうが楽しめる、だったな。」


 オレは、チップを発動させる。

 巨大な火球が、オレの制御に収まりながら、空中に浮かぶ。


 これは……。本当に、たまらないな。

「良い厨二病」だ。


 その火球を、スカーレット――ではなく、砦の門へと直撃させた。


 ゲオテア砦の門は、爆発し、粉々に砕け散った――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ