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EP.30 "CLOSE"の向こう─再集結

アクアルミナスの扉が静かに閉じられ、昨日の賑やかな余韻が残る中、次の物語が静かに始まろうとしている。


リリアとダルクが訪れるその日、店内は普段とは少し違った空気に包まれていた。言葉を交わすことなく向き合ったその二人の心の中には、どこか確かな決意と共に少しの不安が滲んでいた。


手紙のひとこと、「アクアルミナスでお待ちしております」という言葉が、今まさにその先に待ち受ける新たな局面への扉を開ける。


だが、ただの再会だけではない。あの日から積み重なった思いと、それぞれの心の中で刻まれた変化が、これからどんな影響を与えていくのか――それはまだ、誰にもわからない。


今、ジル、リリア、ダルク、そしてオルバースが交わるその時、過去に閉ざされていたものが再び姿を現す。彼らの前に立ち現れるのは、ただの懐かしい再会ではなく、暗闇を孕んだ新たな闇の足音だ。


──翌朝。


アクアリス亭の受付に、一通の手紙が届いた。


リリアとダルクはロビーで落ち合い、近くの椅子に腰を下ろして手紙を広げる。


「この字……うん、オルじぃの字ね。」

 

 リリアは便箋を指先でなぞりながら、微笑を浮かべた。


「“リリア様、ダルク殿。アクアルミナスでお待ちしております。”だって。」


隣に座るダルクは手紙を受け取り、リリアと目を合わせる。


「アクアルミナス……またか。」


リリアは小さく笑って答えた。


「飲みすぎないでって言ったのに……懐かしい仲間に会って、つい羽目を外しちゃったのかなぁ?」


クスッと笑いながらも、リリアの胸の奥には、昨夜の出来事がひっかかっていた。

 

──だからこそ、この無事の知らせには、思わず胸をなでおろしてしまう。



そのとき、ダルクが優しくリリアの頭を撫でた。


「オルさんなら大丈夫だって。あの人、けっこうタフなの知ってるだろ?」


「うん……」

リリアは小さく頷いた。


ダルクは立ち上がると、リリアにそっと手を差し出した。


「さ、アクアルミナスへ向かうぞ。」


そう言ってリリアの手を取り、そっと立たせると、ふたりは肩を並べて歩き出した。


道すがら、たわいもない話を交わしながら、ゆっくりとアクアルミナスへと向かっていく。


──そして、アクアルミナスの看板には、大きく「CLOSE」の文字。


二人は立ち止まり、顔を見合わせる。


「……やってない、のか?」


ダルクがぽつりと呟いたそのとき、扉がギィ……と音を立ててゆっくりと開いた。


ジルドレットが扉の隙間から顔を覗かせ、ふたりに声をかける。


「おい、どうしたんだ?入ってもいいぞ。」


その目には、どこか楽しげな光が宿っている。


「あの、オルさんから手紙を預かって、ここへ来ました。」


ダルクが手紙を差し出すと、ジルはにっと笑いながら手招きした。


「分かってる。──お前らを呼ぶように手配したの、俺だしな。」

ジルはワハハと笑いながら、ふたりを中へと招き入れる。

だがその笑みの奥には、微かに緊張の色が滲んでいた──。


──この日、“アクアルミナス”の扉の奥で待っていたのは、

あの日の続きを紡ぐ者たちと、そして、運命を揺るがす新たな物語の始まりだった。


 店内奥のカウンターには、オルバースが静かにグラスを持って座っていた。


「あれ……オルじぃ、首元赤いよ?」


 リリアは不思議そうに、首元の赤い斑点に指を指した。

 オルバースはビクッと肩を揺らし、リリアに応える。


「……リリア様。これは、虫刺されです。お気になさらず。」


 涼しい顔をしながらも、オルバースの耳元は赤く染まっていた。

 


ダルクは「あー……」と呟き、意味ありげにジルを見やる。

ジルは頬を掻きつつ、「知らん」と言わんばかりに目線を逸らした。


 ジルは咳払いし、話し始めた。


「……さて、とりあえず、皆集まったな?」


 リリアたちはその声に振り向き、ジルは昨夜と同じ奥の席を指さした。


「立ち話もなんだしな。昨日と同じ席に座ろうぜ。」


 ジルの一言に頷きながら、ふたりは昨夜と同じ席へ腰を下ろした。


「さて、お前らの知りたい事──このシルベーヌの現状、で間違いねぇな?」


 その言葉に、オルバースが「そうだ……。」と小さく呟いた。


 


 


 

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