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EP.03 婚約破棄宣言

ついに、その時が来た。

私の名が会場中に響き渡り、婚約者である第一王子は、私を“悪女”と呼ぶ。

──ええ、予想通りよ。


愛と正義の名のもとに持ち上げられるのは、平民出の聖女シャルロッテ。

私は、彼らの恋物語の“悪役”という名の踏み台。

けれど、私には守ってくれる人がいた。

幼なじみのダルクが、静かに、でも確かに、私の味方でいてくれた。


これは、偽りの王子に捨てられた“悪女”が、自由を手にする第一歩。

──さあ、幕を上げましょう。お望み通り、婚約破棄を。

「待っていたぞ!!リリアーナ・フローレン!!」


会場に響き渡る大きな声に、ざわついていた令嬢令息たちが一斉にこちらを振り返る。

彼の声は鋭く、まるで雷が落ちたかのように空気を切り裂いた。


私はダルクの握り締めていた手をそっと離し、素知らぬ顔を装って彼の前に立った。

視線は炎のように燃え、火花が散るかのように鋭く睨み合う。


「お前……。この俺が何も知らないと思うなよ!この悪女め!!」


彼の言葉に、学園時代から変わらないその熱い感情が込められているのを感じる。

しかし、その態度に呆れを通り越し、私は苦笑いを浮かべてしまった。


「ルディ様すてきぃ。」


隣にいるきゃぴるん女は、目をキラキラと輝かせ、うっとりとした表情でアルディスを見つめている。


「で?私が悪女とは、どういう事か説明して頂いても?」


二の腕を組み、堂々とした態度で挑む私の声は冷たく、しかし揺るがない。


アルディスの顔は真っ赤に染まり、息が荒くなった。


「シャルを虐めるなと再三忠告していたはずだが、お前は一向に止めなかったそうだな?」


まだ信じているのかと、呆れが混じる気持ちを胸に隠しつつも、私は鋭く睨み返す。


きゃぴるん女はアルディスの裾をキュッと握り、瞳に涙を浮かべながら私を指差した。


「わたしぃ、先日リリアーナ様に階段から突き落とされそうになってぇ…。」


あたかも被害者であるかのように甘えた声を出す彼女に、全身の毛が逆立つような嫌悪感が走った。


「お前のせいでこんなに怯えて…可哀想に……。」


蕩けるような目で彼女を抱きしめるアルディスの姿に、周囲も困惑の色を隠せない。


「へぇー、私が貴女を階段から突き落としたの?」


私は強めの口調で問い詰め、彼女をじっと睨みつけた。


その瞬間、ダルクが静かに間に入り、私を守るようにアルディスとの間に立った。

本物の騎士様のような凛とした彼の姿に、胸が締め付けられる思いがした。


きゃぴるん女は私を指差し、頬を膨らませて怒ったように叫んだ。


「ダルク様!その女に騙されないで!!」


さっきまで甘くイチャついていたはずなのに、今度は必死に彼の心を掴もうと必死だ。


(もしかして、ダルクも……。)


胸が鋭く痛み、彼だけは違うと願う自分に戸惑いが混ざった。

そんな私の心情を察したかのように、ダルクは優しく私の頭を撫でてくれた。


「そんな不安そうな顔をするなよ。大丈夫だから。」


彼の温もりと囁きに、不思議と先ほどの胸の痛みは消え去り、代わりに違う胸の高鳴りが押し寄せる。


「……うん。」


俯きながらも、震える声で答えた。

そこへ、きゃぴるん女が怒鳴り声をあげた。


「ちょっと!!なんでそこがイチャコラしてんのよ!!」


突然の声に驚き、私は思わず体を跳ねさせた。


「あー、悪い悪い。俺がリリアに騙されてるんだっけ?」


ダルクは爽やかな笑みを浮かべるが、その瞳の奥は冷たく光っている。

それを見て、シャルロッテは甘く艶やかな声で言い募る。


「あ……あ……だってぇ!こんな可愛い私を虐めたんですよぉ?騙されてるんじゃないかって心配じゃないですかぁ~?」


その媚びた態度に、背筋が凍りつくような嫌悪感を覚えた。


突然、彼は腹を抱えて笑いながら涙を流し、その仕草に怒りが爆発したのか、顔を真っ赤に染めて大声をあげた。


「何よ!!人が親切に心配してあげてるのに!!」


ぷくっと頬を膨らませるその可愛らしい顔に、思わず舌を巻く。


会場が凍りつく中、アルディスが大きく息を吸い込み、凛とした声で叫んだ。

「もうお前みたいな性悪女とは、金輪際関わりたくない!!よって、ここに婚約破棄を宣言する!!そして、次期王妃となるのはシャルロッテ嬢だ!!」


巷で語られる物語の悪を打ち砕く王子様のような彼の姿に、私は静かに頷いた。


これで私は縛られない。自由を手に入れるのだ────。

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