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EP.15決着─初勝利の刃─

戦いはいつだって、ただの勝ち負け以上の意味を持つ。

剣に込めるのは、守りたいもの、進みたい道、そして信じる力。

リリアーナとダルクは、それぞれの想いを胸に、初めての大きな壁を越えた。

彼らが振るうのは、逃げるための剣ではない。

これからも続く戦いの中で、真の強さとは何かを示すための刃だ。

これは、彼らの“初勝利”の物語——。


──戦闘が続く中──


天高く昇っていた太陽は、ゆっくりと地平線へと沈み、空は燃えるようなオレンジ色に染まっていた。


(このまま戦い続ければ──ここにいる人たちが巻き込まれてしまう……)


リリアーナの背後には、御者と数名の乗客が緊張した表情で見守っている。

剣を握る手に、かすかな迷いが揺れ動く。

張り詰めていた緊張の糸が、じわりと切れそうになっていた。


だが、その時――戦いを終えた老騎士オルバースが静かに背後に立ち、優しい声で告げた。


「気にすることはありません、リリア様。

かつての主として、今のあなたの“決断”を誇りに思います。

どうか、思う存分力を発揮なさってください。」


振り返らずに受け止めるその言葉に、リリアーナは静かに目を閉じる。

そして、力強く開いたその瞳は揺るがなかった。


「ありがとう、オルじぃ!」


彼女の魔法剣が深紅に燃え上がり、熱気を纏って光を放つ。

紅蓮の炎が剣を包み、周囲の空気を震わせた。


──その刹那、


腕に巻かれた《龍の涙》のブレスレットが淡く脈打ち、心音のようなリズムを奏でる。

すると、どこか幼い少年の無邪気な笑い声が耳元をかすめた。


(……この声は……?)


懐かしくも、どこか遠い、知らない声。

けれど、その瞬間、確かに彼女の心の奥が揺れ動いた。


(これは、逃げるための力じゃない──)


今こそ振るうべき、“私の意志”の刃。


──その時だった。


痺れを切らした赤髪の男が、双剣を構えて迫る。


「おい、いつまで待たせる気だ?お嬢ちゃん!」


焦りが滲むその声に、リリアーナは一切の迷いなく答えた。


「あら、ごめんなさい。けど、ここで終わらせるわ──覚悟しなさい!」


全身から力が漲り、地を蹴って突進する。

魔法剣は紅蓮の炎を纏い、灼熱の風が戦場を切り裂く。


「フレイム・エンチャント──ッ!!」


燃え盛る魔力が刃に宿り、灼熱の軌跡が男に襲いかかる!


その頃、ダルクもまた己の秘めた力を解放していた。

手にした指輪《精霊の結晶》が赤く燃え上がり、魔法石から溢れる力が体中を駆け巡る。


「あははっ!」


同じ声が、彼の耳にも響く。


「これが……母さんの形見か……!」


叫び声と共に剣を構え、地を蹴った。


「俺の力、見せてやる──サブリーダー、来い!」


指輪から流れ出た魔力が剣へと注がれ、烈火の奔流となって炸裂する。


「フレイム──ブレス!!」


まるで龍が咆哮するかのような炎がダルクの一閃とともに大気を焼き尽くす。


「ぐぉおおおっ!!?」


サブリーダーの巨体が炎に包まれ宙を舞い、空を裂くように弧を描いて地面へと叩きつけられる。


大地が裂け、爆風が砂塵を巻き上げる。

戦場の空気が一変したその時、リリアーナの一撃も敵を捉えていた。


「この一撃で──終幕よ!!」


魔法剣が放つ紅蓮の閃光が双剣を弾き飛ばし、赤髪のリーダーを宙に浮かせた。

そして、激しく地に叩きつける。


熱風が駆け抜け、舞い上がった煙と砂塵が空を覆う。


まるで二人の意志が共鳴するかのように、リーダーとサブリーダーは同時に大地に沈んだ。


──やっと、終わったのだ──


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