EP.13盗賊集団レッドホーク
冒険者としての一歩を踏み出したリリアーナたちに、早くも試練が訪れる。
襲い来るのは、悪名高き盗賊集団。
初陣にして命を懸けた戦いの幕が上がる――!
剣を交える仲間の背中に、何を想い、何を選ぶのか。
恐怖に立ちすくむ心、それでもなお踏み出す勇気。
これは、“少女”から“戦う者”への、確かな覚醒の物語。
轟音と共に、レッドホークの突撃が始まった──!
「行くぜぇ、野郎共──!」
赤髪のリーダーが咆哮すると、盗賊たちが一斉に叫び声をあげる。
「おおおぉー!!」
「くっ……初戦からこの猛攻はきつい!」
焦りを飲み込み、ダルクは冷静に身をかわす。鋭い剣捌きで敵の刃を受け流し、反撃の機会を窺っていた。
その頃、リリアーナは圧倒的な力の前に、無意識に一歩また一歩と後退してしまう。
「リリア様!ここで退けば、守るべきものも守れませんぞ!」
オルバースの力強い声が響く。振り上げられた敵の剣を腕で受け止める老騎士。その瞳には揺るぎない決意が宿っていた。
──これが冒険者の覚悟。理解しているはずなのに、どうしても足がすくむ。
「わ、分かってる……!でも……っ!」
震える声、迫りくる敵影。
その時――
「リリア!大丈夫だ!俺がついてる!」
ダルクの叫びが胸に飛び込んだ。
――そうだ、私は一人じゃない。
「オルじぃ、ダルク……ごめん。そして、ありがとう!」
頬をパチンと叩き、痛みが迷いを吹き飛ばす。
そして――
私は敵へ向かって一歩、踏み出した。
――――
レッドホークの下っ端が焦った声をあげる。
「頭!こいつら強ぇっすよ!」
リーダーは舌打ちし、吠え返した。
「うだうだ言ってねぇで、やるしかねぇんだ!」
しかし彼の額には汗が滲む。
目の前のダルクとオルバース、二人の圧倒的な存在感に盗賊たちは気圧されていた。
ふと戦場の隅でリリアーナの姿を見つけたリーダーの隣の男がニヤリと笑う。
「……あの女、狙えるな。」
声を張り上げる。
「おい!あの女を捕まえろ!」
盗賊たちは一斉にリリアーナへ向きを変え、殺気を帯びて動き出した。
その声にダルクは険しい顔で叫ぶ。
「──ッ、させるかよ!!」
敵の剣を弾き飛ばし、リリアーナへ駆け出そうとする。
だが別の盗賊が素早く立ちはだかる。
「へへっ、行かせねぇぜ?俺がお相手だ!」
「チッ……こいつら、完全に狙ってやがる!」
リリアーナが標的にされている――
その事実に胸が焦げつく。
ちらりとオルバースを見ると、彼も激しい剣戟の只中にあった。
「くそっ!!」
駆けつけたいのに、敵が許さない。
――その時、リリアーナの前に赤髪のリーダーが立ちはだかる。
「よぉ、嬢ちゃん──」
その鋭い眼差しがじりじりと彼女を射抜く。
リリアーナは一瞬たじろぐが、膝は折らなかった。
「……どうも。」
震える声だが、その瞳には確かな“拒絶”が宿る。
リーダーは口元に指を添え、ピュウッと口笛を鳴らす。
まるで“獲物”を見定めるように、彼女をじろじろと見下ろした。
「こりゃまた……ずいぶんといい目をしてるな、お嬢ちゃん。」
ニヤつきながら距離を詰めてくる。
「なぁに、怖がらなくてもいい。丁重に扱ってやるよ。」
そう言って、冗談めかした口調で、ゆっくりと手を伸ばす。
その指先が彼女の顎に触れようとした──その瞬間。
彼女の胸元でカチリと小さな音。
父から託された魔法剣の柄に手をかけた。
**シュウッ……**淡く剣身が光り、星の煌めきが熱を帯びて強まる。
リリアーナの中で何かが確かに目覚めた。
「……やめて。私に触らないで!!」
声は震えていない。
「私は……お前なんかに屈しない!」
リーダーの手が止まる。
魔法剣の光が彼の顔を照らし、鮮明な警戒が宿った。
「なっ……なんだ!?何が光ってる!?」
リーダーが一歩後退る。
父から託された魔法剣が脈動し、空気さえ震わせる。
「ちょ、ちょっと待て……あれって……!?」
盗賊たちも異変に気づき、目を見開く。
「魔法か……いや、ただの魔法じゃねぇ。あの剣……“本物”だ。」
「へっ、女一人だろ?何ビビってんだ?」
「バカが、よく見ろ……あれは“本物”だ。」
ざわめく声の中、風が吹き、リリアーナの髪とマントを揺らす。
彼女は鞘から剣を抜き、静かに構えた。
──もう逃げない。
月光のように美しい刃が彼女の手にしっかりと収まる。
冷たい風が髪を撫で、戦場の空気が一瞬、張り詰めた。
この瞬間から、私の戦いが始まる。
(さあ……ここからが、私の番──反撃だ。絶対に負けない……!)




