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こうして私は恋の芽を摘んだ

作者: 黒楓

今日も真っ黒く参ります!!

挿絵(By みてみん)



※ イラストはこの物語の主人公 此木このぎ奈々 さん です




 情報関係の学科の無い商業高校は……男子の数そのものが少ない。だから素敵な男の子は学年で一人くらいしか居なくて……あとは()()()()()()()の存在に思えた。

「別に男の子と付き合う為に学校へ通っているわけではないのだから」と努めて“無関心”を心掛けていたので、友達の紹介で他校の生徒や大学生と付き合う事もしなかった。

 だって唯一の“優良物件”と思われる珠美のカレシだって、今は超多忙で余裕の無い研修医!!親の跡を継いで開業医になるのはまだまだ先で……そこまで持つのかどうかも分からない不確かな付き合いだ!

 こんな話をするとこの私は()()で……誰ともお付き合いしないで高校生活を過ごしたと思われるかもしれないけど、高三になっていよいよ周りが慌ただしくなって来た風潮に煽られて、ある大学のイベントサークル主催の旅行に参加してしまい、あっけなく“卒業”した。

 もう名前を言うのも嫌だけど、そのカレとはお正月明けまでは付き合って……初詣の時にはカレの司法試験合格(それは私を誑かす為の嘘だったと後になって知ったが)を祈願したのだけど……

 とにかくそれ以来、私は自分と家族以外の為には願掛けした事は無かった。


 そんな私が今、あちこちの神社仏閣をお参りして今度のお見合いの成功を祈願している。



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 今の会社に入って4年になる。


 ある調査では、社内恋愛の経験が有る男女の割合は全体の4分の1で……

 さらに社内恋愛から結婚へ至った割合も4分の1らしい。

 という事は社内結婚って16人に1人の割合??

 私の所属する経理部は、男性は既婚者ばかりだし、他部署との交流も多くは無いから……さもありなん数字だと思える。

 そう、私、会社へ入ってからは男性とお付き合いした事が無かった。


 4年も会社勤めしていると()()()()は失われるかもしれないけど、清楚で身ぎれいにしてるし容姿だって悪い方じゃない。

 もちろん友達関係で何回か合コンにも参加したし、見ず知らずの男の人からナンパされた事もあるけれど、私はキチンとした人を恋人にしたかった。

 そんな中、去年の秋にセンパイの秋山さんがサービス部の加藤さんと“社内結婚”なさった。

 その披露宴に出席した時に知り合ったのが“サービス部”の純也くんだった。


 感極まって泣いてしまった私に純也くんがハンカチを貸してくれて……そのハンカチを駅のホームで返した事から純也くんとは“通勤友達”みたくなった。


 純也くんは決してイケメンでは無いし、朴訥とした話し方の人だったけど……背は高いし大らかで優しかった。


 会社へ向かう道すがら色んな話をした。


 純也くんは服選びのセンスが無くて私服は履き古しのジーパンとロンTだと言うので……何かプレゼントしてあげる間柄では無いけど買い物に付き合うくらいなら……と、日曜日に二人の住まいのちょうど真ん中にあるターミナル駅で待ち合わせして、あれこれと見立ててあげた。


 それが最初のデートで……遊園地や映画を観に行く間柄へと進歩した(もちろんデート費用の大半はカレが出してくれた)


『猫を飼う様になったら一生独り身!』

 そんな都市伝説がまことしやかに流れてはいるけど、私は帰宅しても誰も居ないマンションのドアを開けるのが寂しくて……とうとう猫を飼う事にした。


 “男の子と一緒に探した猫なら”と縁起を担ぎ、純也くんに付いて来てもらった。


 そうしてお迎えしたメス猫“ミーシャ”がすっかり私に懐いて……ミーシャの為に()()()()を買ってあげようと帰り支度をしている時に内田専務から内線があって会議室に呼ばれた。


 何事かとドキドキしながら専務と面談すると……なんと!!一部上場の北野不動産社長の三男、北野浩平さんとのお見合いのお話だった!!

 聞けば、浩平さんは27歳にして既に関連会社の北野デベロッパーの副社長!! 三男だけどゆくゆくは北野不動産の社長になるのではと囁かれるほど優秀な人でしかもイケメン!!

「そんな御曹司が市井の私になぜ??」と専務にお伺いいたしたところ、先様が私を見初めて下さったとの事!!

 こんな幸せな事って!!あるのだろうか……?


 勿論、二つ返事でお受けして……天にも昇る気持ちでマンションに帰ったら、ミーシャから「ニャーッ!」と出迎えられてハッ!と思い出した。

 ちゅーると純也くんの事を……



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 映画デートの後、「ミーシャに逢いに来て!」と純也くんを家に招いた。


 今までの「三田くん」じゃなくて「純也くん!」って呼んで……純也くんと初めてキスをした。

 純也くんは“その気”になって上気した顔で帰って行ったけど……

 私はすっかり気持ちが冷めて清々した。


 人の心はその置かれた立場によってガラリ!と変わる。


 あの、内田専務でさえ最近は私に気を遣ってるフシがある。

 だから、私が……純也くんの事を“つまらない男”と感じてしまっても仕方がない……いや、そう言う認識でないとこれから入って行く“セレブな世界”でやっていけないだろう……

 正直、ミーシャの事や純也くんの事なんかもうどうでもいい。

 今の私は……自分の親兄弟親族達をどうすればよいか?と言う事でいっぱいいっぱいなのだから!!




                              おしまい






このお話は以前投稿した『男らしさって』https://ncode.syosetu.com/n6270jc/ とリンクしております。




ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!



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[良い点] イラストいい!
[一言] ……おおぅ 黒姉さんとは、また違った、そして勝るとも劣らぬドス黒さですた……ですた…………(バタっ)
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