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第94話


「しかしよく見てたな」


 水分を補給し、軽食を口にしている4人。ランディが言うとハンクとマーカスも流石だなと言う。ローリーは最初のT字にある流砂を見た時から違和感を感じていたのだと言う。単に休憩させないが為にあの場所に渦を作った訳じゃないだろうと。休憩なら魔獣がいない場所がいくらでもある。ランクはSだが彼らがPOPしている場所は比較的離れておりリンクする距離でもない。その気になれば通路ででも休憩が取れる。現に自分達も三方を警戒しながもこうやって十字路で腰を下ろして休憩している。


 あの渦は休憩場所にさせないだけじゃない、何かあると感じたローリーは最初の渦を観察していたのだと言う。聞いていた3人は彼の説明に筋が通っているので納得し感心した表情で話を聞いていた。


「じゃあ休憩が終わると再び真っすぐ進んだら良いってことだな」


「そうなる。この45層は力技で攻略するフロアじゃない。自分達との闘いのフロアだ」


 何の変哲もない洞窟が延々と続いている中を歩いていくとさっき見た風景が現れてくる。数多い十字路にも全く特徴がなくその十字路が通ってきた十字路か新しく出現したのかが分からない。このままでいいのか、出られるのかと疑心暗鬼に陥る様な仕掛けになっている。いかに自分を抑え、平常心を保ちながら前に進めるかどうかが試されているのだと思うと言うローリー。


「時間はいくらでもある。食料も水もいくらでもある。長期戦覚悟でやろうぜ」


 ローリーが言うとそうしようと休憩を終えて立ち上がった全員が突き出した拳を合わせた。しっかりと休養が取れたことと今までとは違う展開になったことで4人の表情は明るい。ランディを先頭にしてハンク、マーカス、そして最後尾にローリーという並びで土の洞窟というか通路を真っすぐ進んで行った彼らはそれから4時間後にまた十字路で右奥に流砂の渦がある場所についた。


「ここは右回りだ。ってことは1週して戻ってきたってことか?」


 奥の流砂は右回りだ。それを見ながらランディが言った。


「いや、ここはまた最初の渦じゃないぞ」


 その言葉にまたびっくりしてローリーを見る3人。


「確かに右回りだけど渦が周る速度が違うんだ。一番最初の渦よりもここの渦の方が早い」


「言われてみれば少し早い気がする。さっきの左回りよりもここの方が早いな」


 マーカスが言いながら渦を覗き込んでいる。ランディとハンクもそう言えばそんな気がすると言った。ランディが顔を上げてローリーを見た。


「正解に近づいてる。そう思っているのか?」


 その言葉に頷く。


「一般的に渦が早い方が万が一の時に抜け出せない。つまり難易度が上がる。ダンジョンは奥に進むほど難易度があがる。ということで正解、つまり46層に近づいていると思いたい」


 ローリーだって正解を知らない。初めてのフロアで誰も正解なんて知らないし知りようがない。そんな中で目の前にある事象から少しでも正解に近づこうとする動きをするしかないと全員が理解している。そしてその作業をさせるとローリーが群を抜いて優秀であることも。


「よし、引き続き真っすぐ進もう」


 ランディが言って全員が気合を入れ直して通路を進みだした。途中で休憩を挟んでいるとは言え45層の攻略を開始して既に12時間以上の時間が経っている。疲労はあるがそれよりもこの4人には理不尽なフロアを攻略してやろうという気持ちの方がずっと強かった。4時間後、再び流砂の渦を見つけそれが今までとは違うのを確認した4人はその場で交代で仮眠を取る。


 2組に分かれてそれぞれ3時間の仮眠を取った6時間後進みだした彼らはそれから10時間後に歓喜の声を上げる。何度目かの十字路の右側は渦ではなく下に降りていく階段だったのだ。


「キレずに頑張ったからだな」


「ローリーを信じてたからな」


 ハンクとマーカスがそう言っている中ランディはローリーの背中をバシバシ叩いてよくやってたと言ってから地上に戻ろうと言った。


 45層から地上に戻ってくると昼過ぎの時間だった。結局丸2日近く通路を歩いていたことになる。地上に戻って違う景色を見ると全員疲れが一気に出てきた様で宿に帰ると食事もとらずに全員が直ぐに部屋に籠ってベッドに飛び込んだ。



「本当にきついフロアだった」


 夕食の時間になり階下に降りてきた4人。この日は宿の食堂ではなく市内のレストランで夕食を摂ることにして今はレストランの個室に入っている。部屋に戻ってシャワーを浴び、ひと眠りしたのだろう。すっきりとした表情をしているランディが言った。当然だが食事をしている4人は誰もアルコールを飲んでいない。


「じわじわと精神力を削ってくるよな」


「単調な通路が続く。行き止まりがなく歩いていると数時間前に自分がいた場所に戻ってくる。これが続くと下手すりゃ精神に異常をきたすだろう」


「そんな中よくまぁヒントというか違和感を感じたものだよ」


 食事をしながら好きに話をしているメンバー。こういう会話がチームワークを高めるために必要な事の1つであることを知っている。言いたいことが言えない空気ではチームは上手く機能しない。パーティリーダーはランディ、参謀はローリーというのは決まっているがだからと言ってこの2人が主導権を取って全てを決めている訳でもない。今ここにはいないビンセントも含めて他の3人も常日頃から気づいた事があれば遠慮なく言いだせる雰囲気がこのパーティにはあった。


「46層はどんなフロアだろうな」


 ハンクが言った。酒が好きなハンクだが文句も言わずにジュースを飲んでいる。


「見えていたのは洞窟だけどずっと洞窟じゃないかもしれないな。洞窟を抜けた先がどうなってるかだろう」


「ランディの言う通りだ。そして敵はSSクラスが出てくると思った方がいい。明日と明後日の2日の休養でしっかりと休んで疲れを取ろう。俺は食料と水を補充しておく」



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