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第91話


「ダンジョンの1つのフロアで3日野営したのかい。そりゃきつかっただろうね」


「本当よね。全然戻ってこないしさ、ひょっとしたら事故にでもあったんじゃないかって思ったもの」


 地上に戻った彼らはまずは宿に戻るとシャワーを浴びて砂まみれの体を綺麗にしてから宿の食堂で食事をした。地上に上がった時刻が夕刻であったこともあり5人が食事を初めてそう時間が立たずにドロシーらのメンバーが宿に戻ってきた。彼女らと合流するとそのまま食堂で報告会になる。


「3日の野営よりも攻略のヒントが難しいの。ローリーがいなかったらいつまでたっても41層に降りる階段を見つけられなかったわよ」


 カリンが言うとどう言う事?と言った表情になる女性4人。ローリーは黙っていたがランディ、カイル、マーカスの3人が40層の攻略について話をする。それを聞いていた女性陣だが途中からは声こそださないもののずっと驚愕の表情のままだった。


「すごいフロアだったんだね。しかもその謎が解けなければ永久にフロアから出られない可能性もあるってことでしょ?」


「そうだな。最初に滑り落ちた砂の斜面。あれを登ることができればスタート地点には戻れるだろうがそれも簡単じゃないだろうし。となると41層に降りる階段を探すしかない。救助の応援を送り出そうにも人数制限がある。もし後から誰かが40層に入れたとしたらそれは前にいたパーティが全滅していることになる」


 黙っていたローリーが言った。淡々と話をする彼の言葉を聞いてる他のメンバー。地獄のダンジョンの40層だ何があってもおかしくない。龍峰のダンジョンでは40層で敵の数が一気に増えた。ドロシーらも何とかクリアはできたがここはそれとはまた違う攻略が求められる。


「正直ローリーの話を聞かずに挑戦してたらうちらは野垂れ死んでただろうね」


 ケイトがポツリと言った。目の前の男性陣と一緒にダンジョン攻略をしてローリーからは気をつける点は見るべきところを教えて貰ってはいるが果たして何も情報がない中で自分は40層のヒントを見つけ、攻略できただろうかと考えてみるとそれは無理だという結論になった。目の前のローリーは自分が思っていた以上に優秀な参謀だ。いや超がつくほどの優秀さだ。


 と同時に自分たちだけで40層に挑戦しなくてよかったと心底ほっとしてる自分がいた。ケイトがそう感じている間、他のメンバー同士で情報交換、というか男性陣が一方的に情報を提供しているだけだが、話し合いが続いていた。


「それにしてもその3つ目の小屋から見えた陽の反射。何が陽に反射してたんだろう」


 男性陣の報告が落ち着いたところでシモーヌが思い出した様に言った。


「俺たちも山裾に近づいた時に下から探してみたんだけど見つけられなかったんだよ」


「推測になるけど表面が綺麗に磨かれた岩だと思う。雪をかぶっていた山々は岩山でそこらじゅうに岩があった。その中の1つに陽の光を反射する岩があったんだと思う」


 ランディに続いてローリーが言った。彼らは小屋に近づきながら反射していた岩を目視で探そうとしたが結局どの岩か分からなかった。岩ではなかったのかもしれないが全員があれには近づかない方が良いだろうと感じていたので下から見ただけで諦めたという背景がある。


「あの反射するものを近くで確かめようとかどうにかしようという発想は皆になかった。後から来るであろう冒険者達にとっても目印になるすごく大切な物だしな。手をだすどころか近づくことも良いことだとは思わない」


 ハンクが言った。その通りだとランディいか40層をクリアした全員が頷く。


「3つ目の小屋には間違いなく魔人がいるだろう。そしてそれを倒すと宝箱が出るのも間違いないはずだ。難しいが見返りのあるフロアになってるぞ」


「確かにね。金貨や装備が出るのならモチベーションの維持にはなるわね」


 話題を変えたランディとそれに答えているドロシーのやり取りを聞いていたローリー。


「俺たちは明日、明後日と休養日にする。カリンも少なくとも明日は休んだ方が良いだろう。40層を攻略する相談ならいつでも乗るよ」


 ローリーにありがとうとお礼を言うカリン。


 翌日アラルの店で鑑定をしてもらった指輪は体力+2だった。戦士のハンクがそれを身につけることになるだろう。


「次から41層か。ダンジョンも深層になると相手も強くなるが落とすアイテムもよくなる。そうだよな?」


「その通り。危険度が上がるとアイテムの質もあがる」


 アラルの言葉に頷くローリー。今日この店に顔を出しているのはローリー1人だ。休養日なので他のメンバーがどこで何をしているのかは分からない。休みの日は相互不干渉が原則だ。鑑定が終わるとアラルと2人で雑談になる。幸いに客も来なくてアラルとローリーは結構長い間いろいろと話をした。


 ローリーはこの鑑定家のアラルが好きだったしアラルもローリーを気に入っている。お互いに活躍している分野は異なるがその実力を認め合っている者同士だ。


 アラルによるとスキルが上がった結果鑑定の仕事にやりがいが出てきたという。


「今まで見えなかったものが見えてくる。するともっと詳細に鑑定しようという気になるんだよ。今までもいい加減な仕事をしてきたという訳じゃないが何となく流れというか惰性で鑑定をしていたが今は仕事に対して今まで以上に真摯に取り組める様になった。これも蘇生薬を持ち込んできたローリーのおかげだな」


「アラル自身に前向きな気持ちがあったからだろう。天上の雫はそのきっかけを出したにすぎないさ」


 あっさりと言うローリー。アラルもそれ以上は言わずにただそうかもしれないなとだけ言った。ローリーが鑑定の礼を言って店をでようとすると同じ様に椅子から立ち上がったアラル。


「ローリーには無駄な小言かも知れんが気をつけるんだぞ」


「ありがとう。またアイテムが出た時には鑑定を頼む」


「いつでも持ってきてくれて構わないぞ」


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