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第85話

層の攻略を開始した9人。石畳の道は歩きやすい。最初の流砂の川にかかる橋を渡り始めるとその川の中から砂と同色の魚が多数しかも橋の左右から飛び出してきた。魚の口の先端は鋭利に尖っていてそれで突き刺す様に突撃してくる。


 彼らは事前に川から何かが飛び出てくるだろうと予測をしていたのでランディとドロシーは盾で魚を受け止めケイトやハンクは飛んでくる魚をかわしながら片手剣で次々と魚を切り裂いていく。マーカスも同じ様に体を交わして魚を避けながら精霊の弓で次々と倒していった。カリン、ルイーズ、そしてローリーらは先に橋を渡るとルイーズは前衛のフォローに回りカリンは精霊魔法で対応する。そんな中ローリーは橋を渡った先の地形を見ていた。


 広い洞窟の中を石畳の道が蛇行して奥に伸びている。流砂の川はいくつも流れていて橋がかかっていたり川に飛び石が置かれていたりする。目に見える範囲で徘徊している魔獣の姿は見えない。


「どうだ?」


 全員が橋を渡り終えるとランディが近づいてきた。


「おかしい。39層で敵の姿が見えないなんてことはないんだ」


「楽すぎるってこと?」


 ランディの隣にやってきたドロシーが言った。その通りだと前を向いたまま答えるローリー。


「ケイト、この状況をどう見る?」


「確かにおかしいわね。となると川のない砂の中からも飛び出してくる?」


 ケイトは先日の酒場での話から周囲を警戒して気配を感知し次を予測することが必要だとローリーに言われていた。そして今の問いだ。自分のスキルを高める為に聞いてきてくれたのだとわかっていた。


「当然だろうな。それもサイズが大きのが出てくるかもしれない」


 そう言ってから周りの仲間の顔を見る。


「ケイトが言った通りだ。流砂の川以外の場所から飛び出してくることもある。おそらくここはまだ39層の入り口付近だろう。まだまだ序盤だ。39層はこんなもんじゃない筈だから気を引き締めていこう」


 皆がローリーの言葉に頷いていた。ケイトは彼の言葉を聞きながらなるほどこれかと思っていた。自分はとりあえず目の前の状況の予想をしたに過ぎない。ところがローリーは目の前の状況の分析のみならずこのフロア全体の予想、そして自分たちが今いる場所の推定と今のパーティメンバーが欲している情報を全て話している。もちろん彼も初めてのフロアで詳細は分からないから推測での話だ。ただフロアの階層、今まで攻略してきた上のフロアでの戦闘状況や敵の分布状況などを瞬時に分析してこんなもんじゃないと判断しての発言だ。


 これが本当の参謀のやるべき仕事だわとケイトは気合を入れ直す。



 ケイトとローリの予想通りに彼らがフロアを進んで行くと流砂の川のみならず砂の地面下からも魔獣が飛び出してくる様になった。それも魚ではなくサンドリザートと呼ばれる四つ足で走ることができるトカゲだ。硬い皮膚で突撃し上位種になると火を吐くと言われている。


 ランディとドロシーの盾が彼らの攻撃を防ぎつつマーカス、ハンク、ケイト、シモーヌ、そしてカリンの遠隔攻撃組みは左右に矢、魔法を撃っていた。その指示を出しているのはローリーだ。 左、右と矢継ぎ早に指示を出すと左右に分かれているメンバーが飛び出してくる寸前に遠隔攻撃で倒していく。


「左前方に洞窟があるぞ!」


 倒しながら前に進んでいると広かった空洞の奥が見え、洞窟の入り口が目に入ってきた。すぐに指示を出すローリー。全員がギアを上げて周辺の敵を倒すとなだれ込む様に洞窟に入っていく。洞窟は奥が開けており、先に入っていたカイルとケイトが直ぐに洞窟の先、出口の警戒に向かった。何も言わなくても各自がやるべき事を理解していた。


「奥も大きな空洞になっている。そして地上に魔獣が徘徊しているぞ。ランクはSっぽいな」


 入り口から戻ってきたカイルが言った。全員が出口に近づいて外の様子を確認する。流砂の川は相変わらず流れおり川のない地面にはサンドリザードやサンドワームがいるのが見えた。


「サンドワームもいるな」


「音を感知して石の魔法を撃ってくるんだよね」


 ローリーと並んで出口を見ているケイトが言った。彼女はできるだけローリーの近くで彼のやり方を学ぼうとしている。


「その通り。ようやく39層らしくなってきたじゃないか」


 洞窟の中は安全地帯だ。全員が腰を下ろしていてその場所に戻ってくるローリーとケイトを待っていた。


「大休憩にしようか。ここから先はハードになる。しっかり休んだ方がいいと思う」


 各自が洞窟の中で腰を下ろし、ローリーが収納から食事と飲み物を取り出すとそれに手を伸ばして口に運ぶ。

 

 ローリーは食事をしながら隣に腰掛けてきたケイトと話をしていた。


「サンドワームが厄介ね」


「その通りだ。あいつらは音に反応する。そっちを気にしていると魚が飛び出しリザードが襲いかかってくる。俺たちの配置はどうする?」


 そう言ってケイトの意見を聞く。


「先頭は盾2枚は変えない。ただしどちらかがサンドワームのタゲを取る。マーカスの弓は敵対心が低い、ローリーとカリンの装備もそうよね。なのでこの3人でサンドワームを退治。他のメンバーはそれ以外を担当」

 

 ケイトは言ってからどうかしらという目をローリーに向けた。大きく頷いたローリー。


「俺の考えと同じだな。それで行こう。ドロシーがサンドワーム、ランディがそれ以外の魔獣の担当でいいだろう」


「となると今のところは力技で攻略するフロアになっているってことね」


 そうなるなとローリー。力技で攻略するフロアであればこの戦力だとまず問題ないだろう。ローリーは食事を終えると洞窟の壁に背中を預けて目を閉じた。お互い力のあるパーティならこうやってアライアンスを組んで進むのもありだ。この2つのパーティなら揉めることもない。リゼでの付き合いが長いことのメリットがしっかりと出ている。


 ダンジョンもアライアンスで攻略されるとは思っていなかったのだろう。仮に1パーティだけなら35層からの攻略はかなり厳しいものになっていたのは間違いない。この39層もこの洞窟の先を1パーティだけで進むのは簡単ではない。恐らくまだ39層の半分にも達していないだろう。これから先がどうなっているか分からないがこのメンバーなら行ける。ローリーは気持ちの整理をつけるとしっかり休もうと全身から力を抜いた。



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