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第69話


 翌朝野営のテントを畳んでジャングルの中を歩き出して2時間程経った頃、ローリーが歩いていた足を止めた。前方に気配がある。ローリーが一番気配感知が強い。そのローリーが足を止めたので直ぐにランディとハンクもその場で立ち止まった。


 立ち止まった前にあるジャングルの木の向こうからエルフが姿を現わした。ランディとローリーが知っているエルフのアルという男性だ。手に弓は持っているが今回はエルフも敵意を見せていない。


「やぁ、アル」


 アルを見つけたランディが片手をあげて声をかける。アルはランディとローリーを見て頷いた後でハンクに顔を向けてこちらに聞いてきた。


「彼も蘇生薬で?」


「そう。ツバルにある地獄のダンジョンをクリアしたら薬が出たんでね」


 やり取りはランディがしている。彼の言葉を聞いたアルが村に行こうと森の中を歩きだす。ローリーは周囲の気配を探っていた。自分達の周囲を取り囲む様にしてアル以外に3名のエルフが左右と背後を移動していた。ただエルフ全員の気配は前回と違って緊張感のないものだ。どうやら仲間だと認められているらしい。


 強力な結界を越えた時はハンクはびっくりしてこれ程の結界を張っているのかと感心していた。結界を抜けて森の中に敷かれている石畳の道を歩いていると以前訪ねたエルフの村が見えてきた。


 前を歩くアルに続いて平屋の一番大きな建物の中に入ると長老のキアラが既にテーブルに座って3人を待っていた。


 挨拶をして彼らの向かい側の椅子に座るとそのキアラが3人を見て聞いてきた。


「誰が妖精を見たんじゃ?」


「俺だよ。リモージュの宿のベッドに座っていたら目の前に現れた。半透明の背中に羽がついた妖精で部屋の中で浮いていた。何も話さなかったけどね」


 ローリーが答えた。


「それが妖精じゃ。我らエルフとは通じておる。我らの友であり拠り所でもある」


 なるほど言葉では無い何か別のものでエルフと妖精達は繋がっている様だ。


「ところでツバルの地獄のダンジョンをクリアしたらしいね。それでボスから出て蘇生薬を使って彼を生き返らせたのかい?」


 そう言って視線をハンクに向ける。


「実はちょっと違う」


 そう言ってツバルの地獄のダンジョンの話をエルフの長老たちに話をするランディ。長い話だが彼らは途中で口を挟まずに最後まで聞いていた。ただ聞いている途中でエルフ達の表情が驚いたものになっていた。


「エルフが認めた友だけはある。一緒に攻略していた仲間とは言えなかなか出来ないぞ」


「そうでもない」


 黙っていたローリーが言った。皆の顔がランディからローリに移った。


「損得だけで付き合っていた仲間なら今のキアラの発言の意味も分かる。でもあのダンジョンを攻略していて俺達とツバルの忍達とは本当の仲間になったんだ。ここにいるハンクやまだ生き返っていないマーカス、ビンセントらと同じ仲間だ。だから薬を使う事に躊躇いは全くなかった。エルフも同じだと思う。仲間の為には全力を尽くすだろう?同じだよ」


 表情一つ変えずに言うローリー。それをじっと見つめているエルフの長老達。


「なるほどの。ローリーの言う通りだ。お主らにしたら当たり前の事じゃの」


「その通り」


 やりとりが終わると暫く沈黙があった。キアラがおもむろに口を開いてエルフの言葉で何かを言った。すぐに扉が開いて1人の女性のエルフが部屋に入ってきた。女性のエルフは皆美人で同じ様な顔をしているがローリーは彼女を見てすぐに誰かがわかった。

 

 ユールという以前一人で世界樹から落ちてくる水滴を集めていた女性だ。その彼女は両手で大事そうに陶器の瓶を持っている。


「覚えてくれておる様じゃの。そう、以前世界樹の恵を集めていたユールだ。今回の人間のための雫集めについては彼女が自ら手を上げてくれての。1年ほどずっとやってくれたんだ」


 それを聞いてこちら側に座っている3人がありがとうと言い、頭を軽く下げた。同じ様に軽く頭を下げてそれに応えるユール。


「遅くなったが雫は集まった。ユールが持っている瓶の中に入っている。使い方は同じだ。生き返らせたい者の上半身、心臓の周りにゆっくりと垂らすが良い」


 そう言うとここじゃなくてベッドのある部屋がよかろうと同じ建物の中の別の部屋に入っていった。そこには木製のベッドが置かれている。


「わしとユールもその場に同席したいんじゃが構わぬか?」


「もちろんだ」


 ランディが答えている間、ローリーは収納の中から布に包まれている一人の男を取り出してゆっくりとベッドの上に寝かせる。慎重に布を剥がせると男の顔が現れた。狩人のマーカスだ。龍峰のダンジョンで倒れた時のままだ。


 ランディとハンクが彼の防具を脱がせて上半身を裸にさせる。ローリーはユールから受け取った陶器の瓶の蓋をとると瓶を斜めにする。透明な液体が滴りおちてマーカスの体に当たると液体は流れることなく彼の体の中に吸収されてはじめた。


 部屋にいるニナ、ユール、ランディ、ハンク、そしてローリーも何も言わない。慎重に瓶の中の液体を全て体に注ぐと同じ様にマーカスの身体が光出した。


 眩しくて目を開けられない程の光がゆっくりとおさまって消えていくとベッドに寝ていた男がうめき声を出したあとゆっくりと目を開いた。


「マーカス!」


 目を覚まして起き上がったマーカスにハンクとランディが抱きついていった。


 それを見ていたローリーは驚いている顔をしているニナとユールに顔を向ける。


「本当に世話になった。見ての通りだ、無事に生き返ったよ。ありがとう」


 と頭を下げた。ランディも同じ様に礼を言って2人に頭を下げた。



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