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第156話


 ランディらが大森林のダンジョンを攻略したと言うニュースをリゼのギルドで聞いたドロシーらは今、ギルマスのダニエルの部屋にいた。


「ビンセントについての情報はない。カシアスのギルドの報告は4名でクリアしたという事になっている」


 彼女達も分かってる。もしガラス瓶が出てもその場で使わずにリモージュのアラルに持ち込んで鑑定をしてもらってからだろうと。そう分かっていてもダンジョンをクリアしたと聞くといても立ってもいられずに、ひょっとしたらと思ってギルドに顔を出していた。


「それにしてもローリーとランディは地獄のダンジョンを全てクリアしたんだね」


 ドロシーが言うと大きく頷くギルマス。


「そうなるな。特にローリーだ。あいつが他のメンバーを蘇生させるとこの街を出ていってから実際にあちこちのダンジョンを攻略して3人を蘇生させている。大した奴だよ」


 ギルマスのダニエルの言葉に頷いてからケイトが口を開いた。


「私たちはネフドのリモージュで彼らとはアライアンスを組んでフロアを攻略したし、その後別々に攻略することになっても向こうでよく話しをしたけど、ギルマスが言うとおりあの実力者の集まりのパーティの中でもローリーは突き抜けてたわ。参謀としての能力は言わずもがなだけど、彼、気持ちがすごく強いわ。仲間を生き返らせるという使命感をずっと持ち続けている。普通ならやっていることが正しいかどうか自分自身を疑いたくなる時もあると思うんだけど見ている限りローリーからはそれは全く感じられなかった。芯がぶれないの。あの気持ちの強さも彼の強みよ」


 周囲もその通りだと大きく頷いている。


 ギルマスのダニエルは彼女達のパーティの参謀役である彼女の言葉を聞いていた。このケイトもリモージュに行って帰ってきてから雰囲気が大きく変わったとギルマスは感じていた。ケイトは以前からこのパーティの参謀役だったが一皮も二皮も剥けてリゼに帰ってきている。


 リゼに所属している他の冒険者達に聞いても一番変わったのがケイトだという。


「行く前はおどおどしているというか自信なさげのところがあったんだけど、ネフドからリゼに戻ってきた後は積極的にパーティの方針を出しているし言動が何というか落ち着いてきているの。自分に自信が出てきたのいうのかしら。とにかく彼女は以前よりもずっと伸びてるわね」


 これが他の仲間のケイト評だ。近くで見ている仲間が、それも1人じゃなく何人も同じ事を言う。ギルマスも周りのケイト評と同じ感想を持っている。


 ローリーという優れた手本が同じ街にいる。ケイトなら追いつけるぞ。ギルマスのダニエルは声には出さないが彼女にエールを送っていた。


 彼女達はここリゼでランディらのパーティが帰ってくるのを待つと言う。


「1、2ヶ月で戻ってくるでしょう。5人揃って帰ってくるんだ。盛大に出迎えてあげないとね」


 ビンセントが生き返ると信じている5人。蘇生についてはここにいるメンバーしか知らない。当然だが彼女達も周囲の誰にも言っていない。聞かれたら向こうで怪我をして治療しているという事にしようとギルマスとも口裏を合わせていた。


 蘇生薬の取り扱いについてギルマスと相談した際にはギルマスからもこれは開示しない方がいいだろうと言われている。


「下手に王家や貴族の耳に入ったら大騒動になる。ランディらだってこの情報を開示したらどういう影響が出るかは当然分かっているだろう。ギルド職員のアンは事情を知っているが彼女には俺から口止めしている。まぁ彼女はベテランでギルドの守秘義務についてもよく知っているから問題ない」


「こっちもここの5人しか知らない。蘇生薬の件もエルフの村の件もね。どちらも大っぴらに言う事じゃないしね」


「そう言う事だ」





 カシアスの港から船で2日強かけて夕刻の遅い時間にリモージュの港に着いた4人はまずは宿を確保する。流砂のダンジョンを攻略した時の常宿の部屋が空いていたので4部屋押さえると、時間も遅かったこともあり今日はこのまま休んで明日の朝にアラルを訪ねる事にした。


 宿の食堂で久しぶりにネフド料理を口にする4人。酒も解禁だ。まずはビールで乾杯する5人。禁酒明けのビールは最高に美味い。地獄のダンジョンを攻略した後となれば尚更だ。


「この味、この味に飢えてたんだよ」


 ビールを飲んだ後から出てきた料理を一口食べたランディが言った。他のメンバーも頷きながら料理を口に運んでいる。


「クイーバの料理も悪くなかったが俺はネフドの方が好きだな。ビールによく合うぜ」


 マーカスが言うとこれは病みつきになる味だとハンクも言う。黙って食べているローリーも同じだった。香辛料が効いていて辛口の料理が美味い。ビールによく合う。


「いよいよ明日だな」


 全員が綺麗に料理を食べ終えたタイミングでマーカスが言った。


「俺はローリーのツキを信じてる。間違いないさ」


 ランディがそう言うとハンクもマーカスも俺もだと口を揃えて言う。


「もし駄目だったら、エルフの村に頭を下げに行けば良いと思うと気が楽だよ」


「明日生き返ったとしてもエルフのキアラには礼を言う必要はあるよな」


「当然だ。俺はあの村で生き返った。行かないという選択肢はないぞ」


 その通りだ。ここにいる4人、もちろんここにはいないビンセントもそうだが、こいつらはただ腕っぷしが強いだけじゃない。心が強い奴らだ。だからずっとこのメンバーで大きな揉め事もなく活動できている。


 最高の仲間達だとローリーは感じていた。



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