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第146話


 ダンジョンボスが消えて、その代わりに現れた大きな宝箱を開けた彼女達は再び歓喜の声を出した。箱の中には大量の金貨、ボスの大きな魔石、それとランディが持っているのと同じ盾とローリーが着ているローブが入っていたのだ。


「天上の雫はないわね」


 興奮から落ち着いてきたケイトが言うと箱の中を覗いているドロシーも首を左右に振る。


「ローリーが言っていたけどレア中のレアアイテムだ。ダンジョンを一番最初にクリアした時にチャンスがあるだけかも知れないね」


 そう言ったドロシーは全員を見て言った。


「天上の雫はローリーらが今挑戦しているクイーバの大森林のダンジョンのクリアに任せよう。私たちは胸を張って地上に帰るよ!」



 地上に戻ってリゼのギルドに帰った彼女達はギルマスとの面会を求めた。ギルマスは全員をギルド2階にある会議室に案内した。


「おめでとう。これで2つ目のダンジョンクリアだな。見事だ」


 テーブルの上に置かれているボスの大きな魔石やアイテムを見てギルマスのダニエルが言った。隣にはアンが座っている。アンはテーブルの上に置かれたアイテムを手に取ると査定のために部屋を出ていった。


 ドロシーが代表して龍峰のダンジョンの様子、そしてボス戦について話をする。途中でアンも戻ってきてギルマスと一緒に報告を聞く。


「ローリーから聞いていた報告と同じだな」


 話を聞き終えるとギルマスが言った。


「ローリーらから話を聞いていたけどそれでもボス戦は簡単じゃなかった」


「そりゃそうだろう。地獄のダンジョンのボスだ。相手の癖が分かっているからと言って簡単に倒せるものじゃない。お前さん達以外だと下層にすら降りていけないのだからな」


 ノックの音がしてギルド職員が部屋に入ってきた。査定が終わった様だ。


「以前ローリーさんが持ち込んでいただいた物と同じでした。魔石はダンジョンボスのブラックドラゴンの魔石であることが確認できました。ギルドとして金貨3,000枚での買取となります」


 ボスの魔石が金貨3,000枚であることは周知の事実だがそれでも実際に3,000枚で買い取ると言われて5人の表情が緩む。


「盾は神龍の盾。物理、魔法のダメージを50%カット及び受けたダメージの            40%を自分の体力に還元する効果があります」


 それを聞いてドロシーがガッツポーズをする。


「ローブは魔力、体力の自動回復及び魔法の40%の威力増大、一方使用魔力は30%の減少、そして敵対心マイナスの効果がついています。自動回復の数値はこのローブを着ている人のスキルに依存します。盾、ローブともにローリーさんが持ち込んだものと全く同じ効果が確認できました」


「盾もローブも2つとない優れものだ。これでまた強くなれるな。それでこれからはどうするんだ?他のダンジョンにも挑戦するのか?」


 アイテムの鑑定が終わるとダニエルが5人を見ながら聞いてきた。


「まだ決めてないけどとりあえずはリゼの街にいるつもりよ。正直言って地獄のダンジョンの挑戦は気力と体力を相当使うの。クリアした今はしばらく身体を休めたいというのがメンバーの総意なの」


 ドロシーの言葉にそうだろうなと頷くギルマスのダニエル。他のダンジョンと異なり地獄のダンジョンの難易度は桁が違う。下層に降りれば降りるほどそれが厳しくなっていく。


「ゆっくり休んでくれ。リゼにいるのであればこっちも安心できる。ランディらは当分帰ってこないだろうからな。普段のクエストも無理せずにこなしてくれ」


 部屋はしばらく使っていいぞと言ってギルマスのダニエルとアンが部屋から出て言った。5人はまず金貨を5等分する。神龍の盾はドロシーが装備するとして1つ出たローブをどうしようかという話になったがルイーズから、


「カリンでいいんじゃないかな。私よりも適任だよ」


「いいの?」


 カリンはルイーズなのかなと思っていたのでびっくりして彼女を見た。


「ルイーズ、本当にいいの?」


 ドロシーもルイーズに顔を向けて言った。


「うん。パーティ活動を考えたら絶対にカリンだよ。精霊魔法の威力は増すし敵対心はマイナスになってる。私は魔力+20の腕輪と回復魔法+2の指輪があるから平気だよ。それにドロシーが良い盾、今持っている盾以上の盾を手に入れたでしょ?私の回復魔法の回数が減るのが間違いないしさ」


 ケイトとシモーヌは黙ってやり取りを聞いている。当人達が納得した形でないとチームワークが乱れる。今は余計な事を言うべきではないと彼らのやり取りを黙って聞いていたがルイーズの説明が理にかなっているのは明白だ。


「ありがとう。じゃあローブは私がもらう。その代わりに私の取り分の金貨はルイーズに渡すから」


 カリンが言った。2つとないローブだただ貰いっぱなしと言うのは自分の気が済まない。いいよと言っているルイーズだがリーダーのドロシーが言った。


「ルイーズ、遠慮せずに貰ったら?カリンの気持ちだよ。受け取ってあげてよ」


「そうそう。貰いっぱなしだと落ち着かないしさ。これがお金で買えるローブじゃないのは分かってるけどそれでも何かしたいの」


 カリンがそう言うとしばらく考えていたルイーズ。


「分かった。そのお金で最高級の僧侶のローブを買うわ」


 そう言ったルイーズの肩をドロシーがぽんぽんと叩く。黙っていたケイトとシモーヌもそれがいいよと言った。


 ドロシーら女性5名のS級パーティがリゼの龍峰のダンジョンをクリアしたことは大きなニュースになった。リゼ所属の冒険者達は彼女達がS級になった時からそう遠くない時期に龍峰のダンジョンをクリアするだろうという話をしていたがそれでも実際にボスを倒してクリアしたというニュースを聞くと湧き上がり、リゼのギルドはお祭り状態になる。


「ランディらに続いて2組目だな」


「流砂のダンジョンもクリアしているんでしょ?すごいわね」


 あちこちから声がかかる5人。ギルドの酒場で皆と酒やジュースを飲んでワイワイやっていると誰かが言った。


「ランディ達は今はどうしているんだい?」


「彼らはクイーバ大森林を攻略中よ」


 ドロシーが言うとあいつら全ての地獄のダンジョンのクリアを狙ってるのかよ、半端ないなという声があちこちから聞こえてきた。ドロシーやギルマス以外はここ龍峰のダンジョンでローリー一人が生き残って蘇生薬を求めてあちこちの地獄のダンジョンを攻略しながら仲間を生き返らせているということは知らない。5人で次々と攻略しているものだと理解していた。


「賢者ローリーとランディがいるあのパーティならクリアできないダンジョンはないんじゃないの?」


「ハンク、マーカス、ビンセントだって半端ないしな。あいつらならやるだろう」


 口々にそう言って酒を飲んでいる仲間を見ながらドロシーらもローリーなら最後までやってのけるだろうと信じている。


「ローリー達ならやり遂げるわよ」


 ケイトがそう言うとドロシーも続ける。


「そう。あのメンバーならやり遂げるのは間違いないわね」


 そう言った二人は他のメンバーと顔を見合わせて頷きあっていた。


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