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第130話


「聞いていたとは言え、これは想像以上ね」


「流石にあの中に突っ込んでいく気は起きない」


 砂漠の起伏の上からその先を見ている5人の女性の前には徘徊している大量の魔獣とその道の周囲にある無数の流砂渦が見えていた。しばらくその光景を見ていた5人は踵を返すと自分たちが出てきた小屋に戻る。階段を降りて通路がY字になっている分岐の場所に来ると今度は打ち合わせ通りに2人と3人に分かれてそれぞれが階段を登って扉の前に立った。


「こちら準備OK」


 ケイトが大きな声を出すと向こうからドロシーの声が聞こえてきた。


「こっちもOK。いくわよ。3、2、1、開けて!」


 その声でケイトがドアを開けて外に出る。後ろから狩人のシモーヌが続いて出てきた。ケイトが左に顔を向けるとドロシー、カリン、ルイーズの3人の姿が見えた。


「扉が閉まって開けられないわ」


 シモーヌが自分が出てきた背後の扉をがちゃがちゃとやるが扉は開かない。向こう側でも同じ様に扉を開けようとしたが無理だった。


「ここまではローリーの情報通りね」


 5人が合流するとドロシーを先頭にして砂漠を歩き出し目の前にある起伏を目指した。


「全然違う」


 目の前にある風景を見てルイーズが呟いた。他のメンバーも声には出さなかったが皆同じ思いだ。魔獣の数と流砂の渦の数がさっきよりもずっと少なくなっている。


「これなら行けるわ」


 ドロシーの声で起伏を降りて砂漠の攻略を開始した5人。Aランク、その中でも上位に位置するドロシーのパーティ。次々と砂漠の魔獣を倒して正面の山を目指して進んでいくと聞いていた大きな洞窟が目に入ってきた。山裾に大きな口を開けている。


 洞窟の中での行動は事前に聞いていた通りだった。洞窟の横壁に隠れていたゴーレム2体も大きなダメージを喰らうこともなく倒し切った5人は今その窪んでいる場所で大休憩をとっている。


「ランディの盾には及ばないけどこの盾も相当よ」


 食事をしながらドロシーが言った。彼女の盾はここの35層のNMから出た盾で相手の物理、魔法のダメージ20%減少させると同時に受けたダメージの20%を体力に還元する効果がある。当人が言っている様にランディの持っている神龍の盾には及ばないがそれでもレアな業物であることは間違いない。それを知っている他の4人もその通りねと納得して頷いている。


「こっちは5人だからね。おそらく向こうの4人とこっちの5人でほぼ同じ戦力でしょう。ここでしっかりと休んでから行くわよ」


 そう言ったケイト。今の所は順調だ。事前の情報があるのとメンバーの技量も上がっているので問題はない。ここから先は通常の魔獣と50層に降りる階段の前に立っているゴーレムだ。ローリーが言った様にそこで指輪が出れば彼の予想が正しかったことになる。


 それにしても装備が優れているとは言え4人で初見で攻略してボスまでやっつけるとは流石だと感心しているケイト。仲間にはほぼ同じ戦力だとは言っているがそれは攻撃力、戦闘能力と言ったハード面での比較でありソフト面になると彼らとはまだまだ大きな差があることは理解している。今のゴーレムも簡単な敵ではない。事前に情報があったからカリンの精霊魔法がダメージソースとなって倒すことができたがいきなり壁から2体のゴーレムが出てきたら対応に苦慮しただろう。



「あれがローリーの言っていた門番ね」


 途中の敵を倒しつつ洞窟を進んだ5人は今は洞窟をでた先にある広場にいる1体のゴーレムを見ている。その奥には50層に降りていく階段が見えていた。ルイーズの強化魔法から戦闘が始まった。相手の強さや攻撃パターンもわかっているそしてこれを倒せばしっかりと休めることも分かっているということで最初から全力で門番のゴーレムに襲いかかった5人。


 打ち合わせ通りにカリンの精霊魔法が大きなダメージソースになってゴーレムの体力を削っていく。ドロシーがしっかりと攻撃を受け止め、ルイーズはドロシーにつきっきりで背後からフォローをしていた。10分以上攻撃を続けていると門番の動きが遅くなりそこでギアを上げた5人。20分近い戦闘で門番のゴーレムを倒すと光の粒になって消えたゴーレムの代わりに大きな宝箱が現れた。


 開けるよと言ったドロシーが蓋を開けると予想通り大きな箱の底に小さな指輪が1つだけ入っていた。


「何も知らなかったら大外れじゃんって言って終わってたよね」


 中を覗き込んでいるシモーヌの言葉に頷く他のメンバー。ガランとしている大きな箱に本当に1つだけしかアイテムが入っていない。


「本当よ。この状況でよくこの指輪が次のボス戦に必須になるって気が付くわね。私だったら外れかよと言ってポケットに入れて終わりよ」


「ドロシーだけじゃないわ。普通皆そうするわよ。箱がここまで大きいと期待しちゃうもの。それで指輪1個。大外れもいいところってなるわね」


 カリンが言った。ケイトも中を覗き込んでから顔を上げると大きく頷き、


「でも私たちはこの指輪の使い道を知っている。ドロシー、お願いね」


 もちろんと言って彼女が指輪を身につけると5人で階段を降りていった。彼女達にとっては初めての地獄のダンジョンの最下層、ボス部屋だ。目の前にはしっかりと閉じられている頑丈そうな扉があった。その前のちょっとした広場に腰を下ろして休養を取る5人。


 軽い食事をしながらボス戦の最後の打ち合わせをする。


「タゲは絶対にドロシーから外れたらダメ。ルイーズはドロシーのフォローだけどヘイト管理は気をつけてね。カリンとシモーヌ、もちろん私も同じよ。毒の煙には気をつけてね」

  

 もちろん49層に挑戦する前にしっかりと打ち合わせをしていた5人だがそれでももう一度再確認をする必要性は全員が理解している。ボスは大蠍。大暴れと毒の煙、あとは通常攻撃の蠍の爪と尾の先にある針に注意。作戦では全ての攻撃をドロシーが受け止めながら他のメンバーはヘイトに注意しつつ体力を削っていく。ルイーズはドロシーのフォローだが煙や大暴れに巻き込まれない立ち位置をキープすること。


 皆で確認しあってOKだとなったところで全員が立ち上がった。


「流砂の地獄のダンジョンをクリアするよ」

 

 そう言ったドロシーが目の前にある扉に手をかけて開いた。



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