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第128話


 ネフドにある流砂のダンジョンをクリアした翌日、ランディらはリモージュでの常宿でドロシーら5人と打ち合わせをする。食堂に人がいない昼過ぎの時間に集まった9人。それでも周囲に声が漏れない食堂の隅に陣取っていた。


 ローリーが49層のギミックを詳細に彼女らに説明していく。他のメンバーがそれに細くして説明をし、女性陣はルイーズがメモをとり他の4人も真剣な表情で聞いていた。


「階段を登ったところの出口のドアは声を掛け合って同時に開ける。すると砂漠にいる魔獣の数がぐっと減る。それから攻略スタートだね」


「そうだ。別々に開けるととんでもない数の魔獣が砂漠を徘徊している。別々に開けた時は小屋に戻れるから一度見てみるのも良いかもしれない。同時に開けて外に出ると扉は完全にしまって開かない。攻略するしかなくなる」


 砂漠の魔獣を倒しながら洞窟まではややこしくはない。彼女達なら問題ないだろう。


「洞窟は広くて蝙蝠やロックゴーレム。そして壁に隠れているゴーレム。これらが襲ってくるんだね」


 ローリーの言葉を再確認する様にドロシーが反復していく。その通りだと頷き、


「壁に隠れていたゴーレムがいた場所、洞窟の中で窪んでいる場所はゴーレムを倒すと安全地帯になる。俺たちはそこで大休憩をとった」


 ランディが言うと休憩できる場所がわかってるのは助かるわねと言う。


「そして洞窟を抜けた先。ここからが大事なんだ」


 そう言ってローリーが洞窟を抜けた先にある広場、下に降りる階段の前に立っていたゴーレムを倒した時に出た宝箱とその中にあった指輪の話をした。大きな宝箱の中にあったのは小さな指輪1つだけだったの?とカリンが言ったが、


「それが普通の反応だよな。俺もマーカスもハンクも宝箱を開けた時にはそう言ったんだよ」


 ローリーに代わってランディが言った。


「と言うことはその指輪が大事なのね」


 そう言ったのはケイトだ。その通りだと言ってローリーが再び話をする。ゴーレムを倒した後からの50層のボス戦の話までとハバルの店での鑑定結果の話をすると女性5人の顔色が変わった。


「えげつないわね。その指輪をしてなかったら確実に死ぬわよ」


「聞いている限り間違いないね。それにしても流石のローリーだね。よくまぁランディに装備させたよ」


 ケイトに続いてドロシーが感心した声で言った。


「ダンジョンの意図、違和感。これを感じたんだよ。となると今装備する方が良いだろうと思った。で、誰が装備するのが良いかと考えると一番ボスと対峙している時間が長いランディだろうなと。賭けの部分もあったけど結果上手くいってよかったよ」


 あっさりと言うローリーだが他の8人は流石の賢者ローリーだと感心する。普通の反応はカリンのそれだ。なんだ指輪だけ?で終わるところがそれが何か意図があるはずだと考えてそれをその場で装備する。しかも盾役に装備させるという読みは普通はできない。


「聞いておいて良かったわ。自分たちが先に攻略していると小屋のギミックはわかったとしても49層から50層のその流れは読めない。全滅コースだったわね」


 ケイトが言うと他の女性メンバーも本当ねと頷いていた。自分たちの実力をしっかり判断できるのが一流冒険者だ。その点においてドロシーらのパーティは間違いなく全員が一流冒険者と言える。



「50層をクリアしてリゼに戻ってS級になってくれよな」


「リゼに戻ると龍峰のダンジョンにも挑戦するんだろ?」


 打ち合わせが終わるとジュースや酒を飲みながらハンクやマーカスが言う。女性陣は酒を飲んでいる男性陣を見て禁酒明けだねと笑っていた。


「俺たちのアドバイスがあったからって流砂のダンジョンのクリアが簡単ではないのは俺たちは知っている。ここをクリアできたら立派なS級冒険者だよ。卑屈になったり深く考える事は何も無いな」


「ランディが言った通りだ。2番手でも3番手でもクリアするってことは大変な事だよ。胸を張ってS級になればいい。実力がないとそもそも最深部まで降りられないしな」


 ランディとローリーの言葉で彼女達の表情が明るくなった。他のダンジョンでもそうだ。地獄のダンジョンだから1番手以外は認めないということはない。クリア自体が簡単じゃないダンジョンを攻略すればそれは誰から見ても立派な結果となる。


「わかった。しっかりと準備して挑戦してくるよ」


 そう言ったドロシーの表情は引き締まっていた。


「俺たちはドロシーらの攻略結果が出るまではこの街から動かない。だからと言ってこっちに合わせる必要はないからな。自分たちが納得できるタイミングで攻略してくれればいい」


 ランディらが先にレストランを出たあと残ったドロシーら女性5人はそのまま打ち合わせを続けていた。


「私とシモーヌ、ドロシーとカリンとルイーズ。扉を開けるのはこれでいいかしら」


「ケイトと私がこの中で一番声が大きい。それでいいんじゃない?」


 ドロシーの返答に皆が笑った。悲壮感は漂っていない。自分たちでもクリアできるとローリーらが言ってくれているし自分たちもリゼでランディらと双璧を張っているトップパーティだ。プライドがある。そして実力もあった。


「できたら一度はその砂漠を埋め尽くしているという光景も見てみたいわね。どれくらい減ったのかが分かるし」


 シモーヌの言葉でまずは1つの小屋から出て様子をみようということになった。こうやって少しずつ作戦を詰めていく5人。


「洞窟の中は力技で押せる。いつものフォーメーションでいいわね」


 戦術の打ち合わせはケイトの領分だ。彼女がまず案を出して皆の了解をとりながら進めていた。


「49層の最後のゴーレム。ここはカリンの出番よ」


「任せて」


 ランディらは4人でクリアしている。こちらは5人いて精霊士がいる。カリンの動き方がポイントになるというケイト。装備はランディらの方が優れているだろう。ただこちらは5人いる。装備が劣る分を補って余りある戦力だという自負はある。


「ヘイト管理だけお願い。あとは自由に撃って。これはボス戦も同じよ」


「ヘイト取っちゃって毒の煙が来たら洒落にならないものね」


「その通りよ」


 指輪は当然ドロシーがはめることにし、ボス戦ではドロシーから離れて立ってボスを囲む様にしながら攻撃していくことにする。全員の立ち位置を確認する5人。ルイーズはドロシーに近づき過ぎない様にすると言う。


「爪と尾の先の針。これに注意。大暴れもあるから適度な距離を取らないとね。私もヒットアンドアウェイで攻撃したら離れる様にするわ」


「大暴れが終わったら煙というか毒ガスに注意だね」


 カリンが言ったがケイトは首を横に振った。


「大暴れの後に煙だと順序は決めつけない方が良いかもしれない。いつ毒の煙が来ても問題ない様な立ち位置でお願い」

 

 そう言ったケイトの言葉にわかったとカリン。前例通りになるという確証が無い中、色々なパターンを想定しておいた方が良い。皆も納得した表情だ。


「ケイトの言う通りよ。立ち位置はできるだけ変えずにいましょう。時間はかかってもいいから確実に削りましょう


 ドロシーの言葉で打ち合わせが終わった。その後は所持品や薬品の確認をし、5人は2日後に49層に飛ぶことになった。


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