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第114話


 アタクールからリモージュに戻ってきた4人はその足でアラルの店に顔を出して向こうでの話を報告する。黙って聞いていたアラル。


「アラルの紹介だって言って紹介状を見せたらやってやろうと快諾してくれたよ」


「そりゃよかった。あいつはここリモージュの学校を卒業したら地元のアタクールに戻ってなそこで当時有名だった鍛冶師の家に弟子入りしたんだよ。親方はもう随分と前に亡くなってなそれからはあいつが店を継いで鍛冶職人としてやっているんだ」


 ランディの話が終わるとそう言った。加工賃の話になるとそりゃそうだろうとアラルが言う。


「鍛冶職人に取ったら新しい金属を叩ける機会なんて滅多にない。一生ないままに終わっていく職人の方がずっと多い。そんな中幻のヒヒイロカネが叩けるんだ。金なんて要求するはずがない。それとな、おそらくだがやつはヒヒイロカネを叩くことによって鍛治スキルがアップするのが分かったんだろう。だから金は要らないと言ったのだと思う」


 なるほどとアラルの言葉に納得する4人。全ての職業にスキルがある。そしてそれは新しい素材や鑑定をするとスキルが上がると言うのはどの職業でも同じだ。


「良くわかった、彼は今でも高い鍛冶スキルを持っているから1ヶ月で3本仕上げられると言ったんだな」


「おそらくそうだろう。いい加減なことを言う奴じゃない。奴が1ヶ月かかると言えばそれは1ヶ月かかるということだ。逆に言うとそれ以上はかからないということになる」


 アラルの家を出た4人が常宿に戻るとちょうど夕食に出ようとしていたドロシーらの5人と一緒になった。久しぶりと言ってそのまま9人で市内のレストランに入る。


「しばらく見てなかったけどどうしてたの?48層の攻略に時間がかかってたのかい?」


 個室に入ってオーダーが済むとドロシーが聞いてきた。


「48層はクリアできた。それでだな」


 そう言ってランディが48層で1度しか挑戦できないNM戦をしてそこで出たアイテムボックス、アンデッドキラー、そしてインゴットの話をする。聞いていた5人の女性の表情が変わった。アイテムボックスが出たことにも驚いたが一番驚いたのはインゴットだ。


「ヒヒイロカネ。名前は聞いたことがあるわ。実在したのね」


 そう言ったのは精霊士のカリンだ。ランディはそのカリンに顔を向ける。


「そうなんだよ。それで鑑定家のアラルの紹介でここから西に2日ほど歩いたところにあるアタクールって街に優秀な鍛冶職人がいるって聞いてそっちに行って俺たちの武器の強化を依頼してさっき帰ってきたところさ」


 3本の剣の鍛治に1ヶ月かかると言われてその間どうするかこれから皆で相談だよという。


「1ヶ月後には相当強い武器が手に入るんだからそれを待つのもありよね」


「もちろん、それもありだ。だからそっちが先に50層クリアしてもこっちは構わないからな。気を使わなくていいよ」


 ランディがそう言うとそうさせてもらうかもとドロシー。


「ただ47層をクリアしたところだから私たちもしばらく休養してから48層に挑戦する予定だけどね」


 ドロシーが食事を口に運びながら言った。47層はいやらしかっただろうとランディ。

 まぁねとドロシーが言った。


「ケイトが謎を解いてくれた。でなかったらまだまだ砂漠で彷徨ってただろうね」


 男性4人がケイトを見た。ローリーがよく解いたなと褒めたがケイトの表情は冴えない。


「ローリーからヒントはもらっていたからね。6日無駄に過ごした、そして次の2日でクリアした。それを知らなかったらあのヒントは解けなかったかも」


 完全に自分の力、知力で解いたんじゃないというケイトだがそれは違うぞとローリーが言った。


「6日彷徨った、そして次の2日でクリアした。これを聞いてもあの砂漠の攻略をできる奴は少ないだろう。特にオアシスの場所が砂漠のどのあたりに位置するのか。それはケイトが見つけたんだろう?だとしたらそこから下に降りる階段を見つけられたのはケイトの知力によるものだよ。あのオアシスまではまぁなんとか見つけられるだろうけどあそこから一旦右に移動するという発想は普通じゃできない」


 ローリーが言うと他のメンバーもその通りだ。あの崖の位置を見抜いてあそこの場所から一旦右に移動して攻略を開始したというのは簡単にできる事じゃないという。


「ほらっ、ローリーらも言ってるじゃない。だからケイトはもっと自信を持っていいって」


 ローリーや他の男性メンバーに言われてようやくケイトの気分も落ちついてきた。


「48層はノーヒントでやるわよ」


 とケイト。


「1度きりのNMの部屋は無くなっているかもしれないけどランディらが見逃しているNMがいるかもしれない。そして49層にもまたいるかもしれない。楽しみでしかないね」


 龍峰のダンジョンの攻略階よりも下に潜っているせいかドロシーらの表情が明るい。龍峰で自分たちの限界かと思っていたがやり方によってはまだまだ挑戦できると分かったからだろう。そしてそのやり方についても流砂のダンジョンの挑戦を始めてからまた数段伸びているとローリーは見ていた。


 雰囲気を見ればおおよそわかる。落ち着いて自信がある表情になっている。かと言って驕りや過信している風には見えない。自分たちの力を信じている5人だ。


「地獄のダンジョンは深層に降りると1層変わるだけで難易度がグッと上がることがある。十分に注意した方が良い」


「龍峰と火、ダンジョンを2つクリアしてるローリーの言葉は重いわね。肝に銘じておくわ」


 ドロシーが言った。彼女達なら48層は問題ないだろう。力技のフロアには強い上にここに来て各自の能力が上がっているさっくりと48層をクリアしてきそうな気がする。


 そして49層だ。階段から見た範囲では敵の種類や強さ、そしてフロアの様子が全く分からない。今まで出会わなかった敵が待っているかもしれない。罠かトリックが仕掛けられているかもしれない。50層というゴールが近づいてきているがその一方でダンジョンはあの手この手で冒険者を殺そうとしてくるだろう。力技なら良いがそうでない場合は自分たちも苦労するかもしれないと。ツバルの火のダンジョンでは空を飛ぶ魔獣が徘徊していた。そして49層から50層へは階段ではなく非常に見つけにくい場所にあったスロープだった。


 ここ流砂のダンジョンはどうなっているのか。未知のフロアに対する不安はあるがそれと同じくらいにそれを楽しみにしているローリーがいた。



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