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素敵な異世界の情報屋さん  作者: なのった
5/8

二つ名とか外見とか

「聞きたいんだが良いか?」


 良いも何も、ここは情報屋。お金を出してくれれば話さない道理はありません。

 明らかにこなれている雰囲気は、冒険者として数年間やってきた証でしょうか。この町には何かの目的があってたまたま寄ったのでしょう。


「はい、なんでしょうか♪」


「『魔王』や『竜剣』って名前を耳にするんだが、これ二つ名ってやつだよな?」


 サンディは良い笑顔で話を聞きながら、料金表とお金を出すためのトレイを手で指し示します。正式名称カルトン。この世界ではチャージしてある石から料金を引き出す、プリペイドカードのような形式が採用されているために必要性の薄い道具です。


「そうですね。二つ名とか異名とかいうやつですね」


 料金を受け取りながら返事をするサンディ。

 どちらもこの世界の最強議論で頻出する名前です。冒険者はそういうのが大好きな方が多いので、耳にすることが多いことでしょう。

 もっとも、この始まりの町では初心者さんばかりで事情通の冒険者自体が少ないので珍しい話題かもしれません。


「今俺は下級冒険者のつもりで中級の方々にお世話になることが多いんだが、みんな普通に名前で呼んでる。たまに上級者の方も見るのだが名前で呼ぶ。二つ名で呼ぶ基準ってなんだ?」


「よほど特徴的な存在じゃないと付けられないし呼ばれないんですよ。自分で作ったところで中々浸透しませんし。最上級と言われる方々でも名前呼びしかされない方は珍しくありません。逆に上級でも呼ばれる人は呼ばれます。『後ろの掃除屋』さんとかですね」


「『掃除屋』か。聞いたことあるな」


「『後ろの掃除屋』です。ここら辺は当に略さない方が良いです。

 呼ばれるようになる基準があるわけでもないですし、結局は分かりやすさ重視になるのであんまり気にする必要もないですよ」


「そうか。結構二つ名とかそういうの好きなんだがなぁ」


「あと、略さない理由の一つでもあるのですが、異名の長さは強さ準拠なところがあります。まあ明確な基準というわけでもないですが、」


「長さ?」


「例えば『剣鬼』という異名の方がいたとして、それよりも強い剣を主武器とする他の冒険者がいたらどう思いますか?」


「どうって……そりゃ名前負けというか」


「ですよね?短い名前だと想像出来る範囲が広くなりがちなので、名前負けしないように迂闊には付けられないんですよ。だから範囲を絞るために言葉を増やして、意味を限定させていくんです。

 『双剣鬼』にすれば二刀流限定になりますし『漆黒の双剣鬼』とでもすればイメージカラーが黒限定になります」

 

 言ってて恥ずかしくなるような人はこのような香ばしい二つ名を嫌いますが、サンディを含めて現地民はその感覚があまりありませんし、転生前の文化も様々。このような部分でまた二つ名の有無が変わったりします。


「実例としては『魔王』さんと『魔導老師』でしょうか。『魔王』さんは最強の魔法使いとしてその名が付きました。『魔導老師』は強力な魔法を使い、広め、老人であるという理由で名が付きました。『魔王』さんは『簡易魔法』の開発者で指導者としても上ですし、実年齢も『魔導老師』より上らしいです。

 『魔王』さんは『魔導老師』という異名でも問題ありませんが、逆はあり得ません」


 もっとも、『魔王』は直接誰かに指導することがなく見た目も若いままなので老師というイメージには合っていません。


「わりと考えられているんだな」


「ポピュラーなものは、なんですけどね。本気でそういうの好きな人はゴリ押して来ますから」


「どういうことだ?」


「『堕天し流転し巡り逢う一条の奇跡』という方がいます」


「はぁ……いかにもな二つ名だな。」


「本名です。ある上級冒険者の。呼ばれたいから改名したそうです」


 とても残念なことに、普段は一条さんとしか呼ばれません。





「こんちにはー……」


「はい、こんにちは!」


 か細い声の挨拶に、元気よく答えるサンディ。

 今回のお客様はいかにも気の小さそうな姿勢の悪い青年です。


「えっと、この世界って外見を今と変えられるんですよね……?」


「はい、変えられますよ。北にある町『ヴォーヨン』がここからだと一番近いですね」


 『ヴォーヨン』はこの始まりの町の次に行くべきとされる町です。この世界で最大規模の町であり、多くの施設が集まっています。

 情報自体が無料なので躊躇いなく話が始まります。近い町に張り出されている案内に書いてあるようなことですし、この件に執着を見せるならばお金稼ぎに精を出してくれるはずなので都合が良いのです。


「あ、へぇー、そうなんですね……。えっと、外見を変えるって具体的にはどういうことなんでしょうか」


「顔や体の全てのパーツを、対応する施設で変更できます。この施設は世界、言わば神様が作ったもので非常に機械的です。首から上は『顔』で一括りになります」


「転生させるための宣伝文句でしたもんね……まあそれに釣られたんですけど」


「目的の一つだったのですね。正直大変ではあるのですが、頑張りましょうね!」


「え、なんでですか」


「変えるだけなら安価ですが自分の理想を目指そうとすると莫大なお金が掛かるからです。

 方法としてはまず、ランダム調整と微調整の二つがあります。どちらも一回十万Eです。大きく変える気ならランダム調整で大体の方向が合ってるものを当てるまで粘り、その後微調整。少しずつ理想に近付けていく感じになります。少し変えるだけなら微調整を繰り返すだけです」


「微調整を繰り返す?そんなちょっとずつしか変えられないんですか」


「ちょっとしか変えられません。そのうえ失敗して振り出しに戻るどころか悪化したりしますので、転生者の間ではクソガチャと言われています。ランダム調整の方も振れ幅が大きく、最低でも百回分の料金は確保しておかなければ自殺の切っ掛けに成り得るとして恐れられています。」


「百回分、一千万Eですか……」


「ランダムからだと微調整の方も嵩みますので合わせて二百回分、二千万E準備したいところですね。理想を目指すならその十倍の二億E欲しいと言われています」


「う、運が良いということもあり得るんですよね?」


「もちろんあります。ランダム一回で良い感じになったという『ランダムさん』と名乗る割と有名な方もいます。」


 『ランダムさん』は、なんかちょっと後頭部が長いのですがそれ以外はまともなためランダム調整一回で終わらせた猛者です。用意しておいた資金が浮いたため装備も充実し、話題になったこと

で信用も上がり冒険者としても順調に成功したラッキーマン。


「ただ先ほども申し上げました通り、あまりに酷い外見で資金が尽きたため出歩くことを躊躇うようになり、そのまま鬱で自殺したという方もいるらしいので運に身を任せる場合は相応の御覚悟をして下さいね」


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