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第四十二話 意外な真実


 「全体停止!これよりメーガン領に入るが、暫くは荒れ地と砂漠が続くので水の補給と体力回復の為三時間休憩を取るので各自行動せよ!」


 グレイズの号令で騎士達は動き出す。


 ジャンは陽射しを避ける簡易テントを素早く組み立てると、バロンドとロゼが食事の用意をし始めた。

 

 「…ロゼ手伝うよ」

 「ユウジさんはジャンが建てたテントで休んでいて」

 「………………」


 ジャンの元へ行くと、ジャンが建てたテントの下で胡座をかいて武器の手入れをしていたがユウジを見てニヤリと笑う。


 「ロゼに休んでろと言われたか?」

 「まぁ…そうです…」

 

 俺はジャンの近くに座り辺りを見渡す。

 メルカス領とは全く違う風景が広がっている。一面荒れ地で木々が全く見当たらない。


 「しかし、ユウジの魔法。まさか坑道を貫通して溪谷迄繫がってたのには驚いたな(笑)今後あの道を使えばかなり時間を短縮出来るぞ」

 「そうなんですか…」

 「ああ、本来の道は結構曲りくねりが多い上に高低差もあって面倒なんだよ」

 

 ユウジの放った○○砲イメージの魔法は一直線に全てを蒸発させてモンタス溪谷まで突き抜けていたのだ。

 古代建造物も全て蒸発させていたので何かしらのペナルティーがかかるかとビクビクしていたのだが、古代建造物はどうやらあまり重要ではなかったらしい。

 考古学と言う学問は無く知識人の趣味程度の位置付けだと言う。


 「まぁユウジは新しい道を開いたと自慢してれば良いさ」

 「はぁ……」

 

 と、そこまで言ったジャンが真面目な顔で俺を見る。


 「それよりもユウジは自分自身とロゼの身の安全に気を払えよ?余りに巨大な力は妬まれるからな」


 ジャンが言う心配は良く分かる。

 客観的に見れば"それは違う…"と言う行為も自分が行う時だけは客観視出来ない事がままある。

 会社で同期が出世するのを見て足を引っ張る人間がいたのも事実だ。

 この時代、邪魔だと思われたら足を引っ張るどころか毒殺や暗殺と言う手段に出てくるのは、ユウジのいた世界の過去の歴史を見れば分かる事だ。

 

 「気を付けます…」

 「まぁユーリヒやグレイズの旦那が行動を起こすとは考えにくいが、"絶対"はないからな」

 

 湧き水で食材を洗っていたロゼとバロンドが戻って来て簡単な食事を摂る。

 簡単な食事とは言え、流石女性のロゼや妻帯者のバロンドの作る食事は時間は掛からないが手の混んだものだった。


 「いやー流石女がいると食事が充実するなー」


 ジャンの言葉にチラリとロゼが視線を送る。


 「ジャンの当番の時は焼き物とパンだけですからね…」

 「酒も出すぜ?…」

 「お酒は食事とは言わないわ…」

 「…そうか?…元は果物だし…」


 この世界で一般的に飲まれている酒類はワイン的な物が多く"スリーブ"と呼ばれている。

 

 "ビラー"と言う蜂蜜酒(ミード)のような物もあるが値が高く一般的には出回ってはいないようだ。

 異世界の定番のエール等はサージュの町に来てから一度も見たことが無い。尤もユウジ自身酒場に入る事自体稀にしか無い。時間的にも…

 

 「坑道を直線で抜けられたから時間的にかなり余裕が出来たな。後は道なりに三日程進めばモンタスへ着くぜ」

 

 変わり果てたゲダの話はジャンもロゼも口には出さなかった。ただ、流精虫の事だけは我々四人とグレイズ、ユーリヒを交え話してはいた。

 フェニルの推察にユーリヒは考え込んではいたが、流精虫がフェニルのような形を取った前例が無い為対応策を取るには至らないようだ。

 但し、流精虫自体が国の管理下にある限り不明な用途を調べる事は可能らしい。だが、それはこの国内に限ってだが…


 「他国で今回の様な流精虫の使われ方が発見された場合手の打ちようが無いわけだ…」

 「はい…この事は早めに調べて対処しなければ…あれは脅威です。国の存続にも関わるくらいに…」


 グレイズの部下とゲダを比較した感じでは、素となる肉体の差が如実に現れている気がする。

 中にいる流精虫が同じ物だとしてグレイズの部下にはゲダ程の脅威を感じなかった。

 ユウジの感想にジャンも同意する。


 「確かに俺もそう感じたな…仮にユウジが参加しなくてもあの騎士相手なら時間を掛ければもしかすれば何とかなりそうな気がしたからな…まぁ結局ユウジに頼ったが…」

 「そうね、物理的にあの化物にダメージを与えるのは辛いみたいだけど、時間を掛けて魔法を撃てば倒せる可能性はあったわね…ゲダのような速さも無かったからね…」

 

 ユーリヒは流精虫の出処と流精虫をあのような形にする技術的な物が存在するのか早急に調べる事を宣言しその場をお開きにした。


 「ジャンとバロンドは休憩していて。私とユウジさんは見回りしてくるから」


 "ふーん"と言いジャンが寝転びバロンドは装備品のチェックを始める。

 

 「ロゼさんメーガン領ってこんな感じなの?」

 「海岸沿いの街はかなり栄えてるし木々も茂ってるわ。他は大体こんな感じね…この領地は鉱石と海産物、後は貿易で栄えてるのよ。ほらユウジさんあそこに見える背の高いトゲトゲの植物が見えるでしょ?」

 「ああ見えるね」 

 「あの植物を使ってお酒を作る研究をしてるそうよ。以前試飲してみたけど、まだ売り出すには至らない出来だったけど完成すればメーガン領の名物になるかもね」


 (…テキーラ的なものか?竜舌蘭に似てなくもないからな…)


 暫くロゼは無言だった。


 「ねえユウジさんゲダはゲダだった?」

 「……ゲダさんの意識は無かったよ…ゲダさんの口から出た言葉は全て中にいた流精虫の言葉だよ…奴が言うにはゲダさんの意識は完全に消滅していたらしい」

 「…そう……か……あのねユウジさん、私以前ゲダからプロポーズされた事あったのよ…」

 「へー……」

 「勿論断ったけど……でも、やはり気になるものよね…」


 (そう言うものなのか…結構女は振った男にはサバサバしてると聞いてたんだが…)


 「…今回の事でジャンから俺自身とロゼさんの身の安全に気を付けろと言われたよ」

 「でしょうね。ユウジさんの魔法は私達の想像を遥かに凌駕しているもの。脅威に感じてもおかしくはないわ」

 「そこでだ、この依頼終わったらシレミナ婦人の知り合いのタティラ共和国の商会を訪ねようと思うんだが」

 「私は構わないわよ?ユウジさんは冒険者を続けるの?」

 「俺個人としては続けたいんだが、また同じ事になりそうだしな…魔法は身体能力向上と防御だけにすればやれるか…駄目なら商人にでもなるかな?」

 「ユウジさん商売をやった事あるの?」

 「個人的には無いが、仕入れと流通の経験はあるよ」

 「仕入れと流通…」

 「まぁいざとなれば以前の知識で何か作って売り出すよ。簡単な物なら俺でも作れる物かなり有るしね」

 「……どう言う世界だったのかしらね…」


 大気が乾燥してるおかげか陽射しは強いが、余り汗をかくこともなくその後もロゼさんと見回りを続けたのだった。


 

 「防御陣形!」


 グレイズを先頭に数名の騎士が巨大なミミズに突き進む。

 

 (すげー…生騎士の戦闘初めて見た…)


 ジャンの様な変則的な動きではない堅実な護りと攻撃をユウジは見て感動していた。

 休憩を終え前進すること二時間程で最初の魔物と鉢合わせた。

 

 「隊長我々にお任せ下さい」

 

 部下の提案にグレイズが肯き、数名と我々を馬車の守りに据えてグレイズ本人が部下を従え巨大ミミズに突っ込んで行った。

 

 「…ジャンさんあれって強いんですか?」

 「ワラブはそれ程脅威では無いな…毒とかも無いし踏み潰されたり飲み込まれない限り一般人でも逃げ切れる…かな?」

 「はー…そう言う魔物ですか…」

 「若い騎士の訓練には良いかもな」

 「あ、だが死に際に溶解液を吐き出すからそれだけ気を付ければ大丈夫じゃないか?」

 

 "ぐわー!"

 

 騎士の一人が右足を抑え倒れている。


 「………あれを食らうか…ロゼ…手当してやれよ…」

 「……ええ…」


 倒れている若い騎士のもとに近寄りロゼが魔法で治療して帰ってくる。

 

 「…お疲れロゼ…」

 「溶解液をまともに浴びてたわ…」

 「へ、へーそりゃ珍しいな…」


 3匹いたワラブを倒したのか騎士達が雄叫びを挙げていた。


 荒れ地では鳥や昆虫系の魔物が現れ砂漠では蠍のような魔物やミミズ、蜘蛛の姿をした魔物が現れるようだ。

 空を飛ぶ魔物には騎士達は苦戦していたがロゼとユウジの魔法で叩き落としてボコボコにする感じだ。

 本来騎士の数が多ければ、弓兵等を揃え空中の魔物にも対処可能なのだが、弓兵隊を組織出来る人数を揃えるわけにはいかないため必然的にロゼとユウジの魔法頼みとなっていた。

 

 「それにしても魔物の襲撃多いですね…」

 「魔物にとっても厳しい環境なんだろうぜ。人が見えりゃ襲うのは生きるに必然だな」


 荒れ地の夜は日中とはうって変わり気温が下がり寒暖差で体力の消耗も激しい。

 狼のような鳴き声が四方から聞こえてくる。

 

 「荒れ地の王者"デッドバウラ"の行動時間だな」


 ジャンの言葉に"デッドバウラ"の事を尋ねるとどうやら"ウルム"に似た魔物らしい。

 

 「あ、でもユウジさんウルムと比べれば弱い魔物ですよ」

  

 ロゼが親切に追加情報を教えてくれた。


 「まぁ若い騎士だと二対一でギリギリといったところだな」

 「いやバロンド…昼間のやつら見たろ?普通溶解液を食らうか?三対一じゃないと無理だろ…」

 「………………………」


 俺は聞いて良いものか迷ったが疑問を口にする。


 「あの…騎士の実力は見た感じなんですか?」

 「ああ、普通の騎士の実力はあんなもんだぞ?グレイズだけ突出してるな」

 「そうなんですか…」

 「ユウジさん魔法と言えど、単身で戦う事が出来る人は極少数よ。詠唱の壁がある限り離れた位置から初撃を当てない限りソロは無理だから」


 《フェニル魔法に詠唱は絶対必要なのか?》

 《あー…基本的には必要ないわよ?》

 《は?》

 《必要ないの》

 《マジ?》

 《マジ!》

 

 《あのね、ガナを私が必要なのと魔法使いがガナ操作をして魔法を現出するのは意味が違うのよ》

 《………………》

 《私がガナを必要としてるのはユウジ達の食事にあたる行為なの。魔法使いが体内ガナ操作で外部のガナを使って魔法を現出してると勘違いしてるようだけど、実際はガナなんて必要無いわよ?》

 《……でも詠唱で魔法は発現してるよね?》

 《してるわね。不思議よねー(笑)魔法の現出に体内ガナの操作は必要だけど魔法自体には外部ガナは余り必要ないわ。じっさいイメージだけしっかりしてれば体内ガナ操作だけで良いのよ。多分だけど詠唱と言う行為をする事で明確なイメージを持つ事が出来るんじゃないかしら?》

 《……じゃあ魔法って何が素で現出するんだ?》

 《知らないわよ!そう言う世界だからじゃないの?》

 

 (え?え?そんな単純に考えて良いものなのか?信念さえあればいける!っての?)

 (……この事実ロゼさんに伝えて良いものなのか……)


 

 

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