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第31話 ピーターの家の隣人

領民の子の生徒第一号が出来たのに、変なおっさんが乱入してきて困った。

まったく。

人の迷惑を考えれないなんて、その年齢になるまでどうやって生きてきたんだか。

 自分の息子を領主の屋敷に雇い入れさせようとしていたカムラだったが、健一達が求めていたのは従業員では無く学校に通う生徒だった為に目論見が外れた。

 目論見が外れたカムラであったが、領主の息子であるアレスをじっと見ていた。


「おい、貴様。

 ジロジロと理由もなくアレス様を見るんじゃない」


 剣を携えたネッガルスがカムラに声をかけた。


「なに?!」


 ネッガルスの言葉に健一が反応する。


「アレス、こっちに!」


 慌ててアレスに声をかける健一。

 意味が解らないがアレスは健一の方に向かう。

 部屋にいる全員が何事かと健一に注目する。


「危なかったなアレス。

 最近は、小さい男の子を狙っていたずらする大人がいるからな!」

「ええぇっ!」


 キッとカムラを睨みつける健一。

 怯えるアレスを抱きしめ、生徒は俺が守るという強い意志が感じられた。

 そして、カムラに視線が集まる。


「おい、お前失礼だろう! 人を変質者みたいに言いやがって!」


 自分を非難するような視線が集まるカラムが健一に異議申し立てをした。


「そうだ! お父さんを馬鹿にするな!

 お父さんはお母さんの他にも女の人と仲良くしているんだからな!

 嘘じゃないぞ!

 この前、知らないおばさんとお父さんがベットで抱き合ってたの見たんだもん!」

「うん、その話は辞めようかタンカボ」


 息子が健気にも父親を庇おうとした。

 父親が女好きで絶賛不倫中なのだと皆に教えてくれたのだ。

 なのに、カムラは息子のタンカボを止めた。

 そして、部屋の中が変な空気になった。

 注目を浴び続けるカムラ。


「その顔でモテるのかお前?!

 うらや、いや、倫理的にダメだろう。

 教育者として、不倫なんてどうかと思うぜ!」


 健一はモテない自分の個人的感情を含みつつカムラを諭す。


「お前が、変な事を言い出したからこんな事になったんだろうが!」


 カラムが健一に声を荒げる。


「他人の家で騒ぐなんて……

 本当に、なんでお前なんかがモテるの?」

「お前!」


 健一に煽られてカムラが一歩前に出る。


「もう、健一もその辺で辞めときなさいよ。

 貴方も、その子が屋敷で雇われないって理解したなら、早く帰った方がいいんじゃないですか?」


 アリサに言われて立ち止まるカムラ。

 健一に煽られて熱くなってしまっていたカムラは、自分に目的を思い出せと言い聞かせた。


「いやぁ、皆さん冗談がキツいですなぁ。

 タンカボも冗談がキツいぞ」

「だって、この前お母さんが出かけてる時に」

「さあ! そんな事より!」


 カムラはタンカボの声をかき消すように大きな声で言った。

 冷たい視線を一身に集めるカムラだが、気にしない事に決めた。

 気にするような人間なら子供に稼がせて儲けようなど考えないのだろうから、相当な人物と言える。

 勿論、悪い意味でだが。


「この家のピーター君がアレス様と一緒に勉強するのならば、是非私の息子のタンカボもご一緒にお願い出来ないでしょうか」


 カムラが頭を下げる。


「生徒を集めていると言っても、家庭に問題を抱える人は……」


 アリサが健一を見る。

 健一も子供は関係ないとは思うが、領主の屋敷内で学校をするのに、家庭がゴタゴタしてる家の子供を受け入れるのはマズいんじゃないかと思った。


「勿論! 生徒が増えるのは大歓迎だ!

 アレス様、ピーター、タンカボ! 健一さん、生徒が増えましたね!」


 ネッガルスが大きな声で言った。


「いや、了解してな」

「ありがとうございます!」


 健一の言葉をかき消すようにカムラが言った。

 アリサと健一が目を見開いてカムラを見る。

 ネッガルスは、もうしょうがないとして、こんな強引なやり方でくるカムラに信頼はおけないと感じた。

 絶対に、そんな親の子供は受け入れたくないと思った二人だったのだが……


「健一先生、親がどうでも、彼は関係ないじゃないですか。

 僕だって問題児だったんです。

 今更家の評判を気にしないでも大丈夫ですから、タンカボを学校に入れてあげましょう」


 アレスが言った。

 その言葉を受け、健一は、子供は関係ないもんなと思い、アリサは、アレス様の命令ならばとタンカボの入学を認める考えになった。


「良かったな、タンカボ! 皆と勉強が出来るようになったぞ」

「勉強って何?」

「そうか、嬉しいか!

 親の言う事を聞かないとぶん殴るが、タンカボは違うよな?

 今まで俺の言う事を守ってきたもんな。 なっ!」

「ぼ、僕、勉強嬉しい!」


 タンカボは親の言いなりで嬉しいと言った。

 最低の親だなと皆が思ったが、下手に何か言うと顔を真っ赤にムキになりそうなので口にしなかった。

 入学の確約が出来て目標が果たせたと満足気な顔をした、カムラ親子は帰って行く。

 領主の屋敷で雇われないとなったが、カムラは息子のタンカボをアレスに近づける作戦に切り替えたのだ。

 アレスに取り入り甘い汁を吸ってやろうという魂胆である。



「なんだったんだ、あの頭のおかしいの。

 昔からアレは、ああなの?」


 健一がピーターの父親にカムラの事を聞いたが、カラムの事を良く知りもしないくせに失礼な男である。


「お隣のカムラさんですよね?

 正直、解らないですね。

 カムラさん一家が隣に越してきて一年くらいしかたっていないですし、あんまり交流が無いですから……」


「そうなんだ。

 なんかごめんなさい。

 あんまり関わりあわない方がいいよ」


「そうですね」


 ピーターの父親の言葉に母親も頷いていた。

 カムラは要注意人物として、子供はどうだ? 学校にアレも通う事になったが大丈夫なのかと健一は心配になってきた。


「ピーターお前、となりのガキと同じくらいの年齢だけど遊ばないのか?」


 子供の事は子供が一番解っているだろうとピーターに聞く健一。 


「タンカボ君は金をくれない奴は友達じゃないとか言うから、遊ばなくなったよ」


「そ、そうなんだ。

 凄いな、あの年で金なんだ。

 まあアレも学校に通うみたいだから仲良くしてくれよ」


 絶対問題児じゃないかと思った健一はアレスを見た。


「何ですか?」


 ジッと見られ居心地が悪いくなったアレスが健一に聞く。


「……いや」


 アレスに手を振って視線をずらした健一。

 タンカボもアレだが、アレスの方がよっぽど問題行動していた人物だったので、タンカボも大丈夫だなと思う事にした健一。

 何よりもうめんどくさくなってきていた。


「もうめんどくせえし、生徒も三人になったから学校始めるか?

 山奥の分校とかも少ない人数で学校やってんだし、人数少なくても良いだろ。

 理想は領地の子供全てに教育をいきわたらせたいが、最初から上手くはいかないだろうしな。

 兎に角、学校を始めるのが肝心。

 最初は少ない人数で始めても、評判良ければ向こうから生徒がくる!」


 そんな健一の言葉に、めんどくせえって、お前が学校やりたいって言いだしたんだろとアリサは思った。

 だが、正直、自分もめんどくさいので何も言わないアリサ。


「学校か……」


 アレスは二人でも一緒に学ぶ仲間が増えて内心嬉しいと思っている。

 なにせ、アレスは自身の行動により、友達が一人もいなかったのだから。


「この領地を守る立派な兵士に育て上げますよ!」


 ネッガルスは、学校がいよいよ始まるんだとやる気に燃えた。


「ピーター、お前の友達で学校に行っても良いって子がいたら連れてきて良いんだからな」


「は、はい。

 声はかけてみますが、期待しないでください」


「いいよ、ダメ元だから気楽にな」


 生徒が増えたらラッキーぐらいの感じで勧誘を外注した健一。 


「ところで、他の先生に学校するって伝えなくて大丈夫なの?

 給金かわらないけど生徒増えますって、納得すると思う?」


「一人教えるのも三人教えるのも同じだろ?

 どうせ、ベルリアもカッサルも、たいした授業してないしな。

 ガタガタ言ったら、教頭のミキに注意してもらうから大丈夫だ」


 アリサの質問に笑顔で答える健一。

 注意って、ミキを使って脅すのかしら? 本当に屑なんだと思ったが、健一が屑なのは今に始まった事じゃないので、らしいなと思うアリサだった。 


 健一が楽観視していたが、本当にベルリアとカッサルは了解するのであろうか。

 そもそも学校を作るなど一言も相談なしに進めているのに本当に問題がないのであろうか。


 健一、アリサ、アレス、ネッガルス。

 この四人は、ベルリアとカッサルに健一が学校づくを伝えた時に起こる騒ぎを、今の時点で知る由はなかった……

機転のきく俺。

勧誘も面倒だし、生徒が三名いるんだから学校をもう始める事にする。

自称魔法使いのベルリアと授業内容を一方的に話すマシーンのカッサルにも教えてやろう。

生徒増えた事により、やりがいが増えたと二人から喜んでもらえるに違いない。

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