表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/33

第23話 魔法使い その3

この世界では魔法が本当にあった。

俺が実際、魔法による治療を、今、受けたんだから間違いないだろう。

「おい、俺を魔法で治してくれたんだよな?」


 健一は魔法を使ったアレスに確認する。


「はい、それが何か?」


 何を当たり前の事を言っているのか、意味が解らないアレス。

 だが、アレスの答えを聞いた健一の目の色が変わる!


「それが何か? じゃないよ!

 魔法って初めてだが、やっぱり凄い、凄いよ、魔法!

 お前、既に魔法が使えるんだから、あんな詐欺師に教わらなくてもいいんじゃないの?!

 アレがやった事より、何倍も凄い事なんだから!!」


 興奮して聞いてきた健一に戸惑うアレス。

 目が血走っている。

 アレスもアリサも、健一の興奮ぶりに驚いて情緒不安定なヤバめの人じゃないのと少し後ずさった。


「ん?

 お前ら、何故少し距離をとった?

 おかしな奴等だな…… まあ、いいか。

 それより、アレスお前魔法使えるのに、本当になんでベルリアなんかに教わってるんだ?

 あの詐欺師がやってる事って、魔法でも何でもないし時間の無駄だろ?」


「何て事をいうの健一! あの人は本物の魔法使いよ!」


 アレスに聞いているのにアリサが抗議してきた。

 

「ヤレヤレ、健一先生も困った人ですねぇ」


 アレスが大げさに両手を広げて頭を振る。


「お前ら、まるで俺が間違ってるみたいじゃないか。

 ベルリアの自称魔法の手品と、今、アレスがした本物の魔法、全然違うじゃん」


 あれ? なんで俺が間違ってるみたいになってるのと戸惑う健一が言った。 


「いいですか、健一先生。

 先生もベルリア先生の奇跡と言えるあの魔法を見たじゃないですか!」

「いや、見たからだよ! どっちの魔法も見たから、俺が言ってるの!」


 自分の目で見た事が信じられないんですか?みたいな感じのアレスに驚く健一。


「アレス様、健一は田舎者だから魔法を見るのが初めてですし、混乱しているみたいですね」


「ああ、そのようだ」


 可哀相な人を見る感じのアリサにアレスも同調する。

 会話しているハズなのに全然通じないと頭を抱える健一。


「なんだか、俺が間違っているってのがお前らの中で確定しているみたいだが……

 アリサ、お前もあの詐欺師の自称魔法を見たら俺の言っている事を理解出来ると思うぞ」


 会話の徒労感が半端ない感じの健一。


「ベルリアさんの魔法なら見た事があるわ。

 去年の忘年会の時の余興で数々の魔法を見せてくれたからね!」

「宴会芸じゃねぇか!」


 どうだ、まいったか! の体でアリサに言われた健一が即座に答えた。

 手品と魔法をごっちゃにしているこいつ等では話にならない、もう、どうでもいいやと思い始めた健一。


「もう考えるのは、やめた。

 俺が金を払ってあの詐欺師を雇っている訳でもないし、みんなが満足なら俺がどうこう言うのも違うだろうしな。

 第一アホらしくなってきた」


「もう! 健一先生、さっきからベルリア先生の事を詐欺師詐欺師って、失礼ですよ!

 王都一の魔法使いであるベルリア先生がこんな田舎にきて俺を教えてくれているんですから、敬意をもって接してください!」


 健一のベルリアに対する暴言に耐えかねたアレスが抗議してきた。


「王都一? あれが?」


 聞き捨てならない一言に引っかかる健一。


「そうですよ!

 ベルリア先生が言ってましたから、間違いないですよ!」


「自己申告ねぇ……」

(怪しさ満点じゃねぇか、そんなの雇うって大丈夫かダモン。

 大体、王都一とか言ってんなら王都に身元照会とかしないのか?

 いや、してないな。 していたら、そもそも雇われていないだろう。

 そんな色んな認識が甘いってのは、領主としてどうなんだ?)


 領主である人間が、怪しい人をホイホイ雇って、領地経営とかちゃんと出来ているのか不安になる健一。

 そんな人物だから、健一はホイホイ雇われたのだが、人間、自分の事はよく見えないものであるという良い例であろう。


「不満そうですね、健一先生」


 胡散臭いって表情に出ていた健一を睨むアレス。

 手にはナイフが握られている。


「ベルリア先生を追い出すなら、俺は健一先生を殺す!

 ベルリア先生のおっぱいを揉むまでは、いや、ベッドで個人授業を受けるまで、うん! 俺は先生を守る!」

「本当に何を言っているの?」


 下心しかない煩悩の塊のアレスに、やっぱり普通の子供じゃないなと思った健一。

 普通の子供は、初対面の人の目をフォークで刺そうとはしない。

 それに腹を立てたからといってナイフを持って突っ込んでこようとはしないのだ!


「危ないっ!」


 寸前のところでアレスの攻撃を躱した健一。

 そして、チラッとアリサが走っていく姿が見えた。

 巻き込まれたら損だとばかりに安全な場所へと避難を開始したのだ。

 この対応の違いは、アレスと接してきた時間の差と言えよう。


「ズルい!」


 逃げたアリサに声をかける健一。

 だが、この状況で刃物から視線を外すのは自殺行為と言える。

 アレスの目が光る。


ダッ!


 全身全霊力の限り当たって砕けろの精神でナイフを両手で握りしめるアレスが子供とは思えない強烈な瞬発力を見せる!

 それもそのハズ、魔法で身体強化をしているからだ!

 健一が気づいた時には既に刃先が健一の腹部まで数センチの距離に!

 もう駄目だと、目を閉じる健一!



「ぎゃああああああああああああ!!!













 ……ああ、あれ?」


 完全に刺されたと思った健一がお腹を見たが、なんともなっていなかった。

 ドッキリ?

 もう、びっくりさせやがってと安堵した健一が顔を上げると、


「大変な事に!」


 アレスを咥えているミキがいた。

 アレスの首の付け根、肩近くに噛みついているようだ。 がっつりミキの牙が食い込んでいる。


「わぁああ、振っちゃだめぇぇ!!」


 呆然としていた健一の目の前で、捕まえたよ!って誇示するように獲物を咥えてブンブンするミキ。


「ちょっと、子供相手に、あんな事させて…… 洒落になんないわよ」

「なんだお前! 逃げてたくせに!」


 安全が確保された事を確認したアリサがいつの間にか戻ってきて言ったので思わず返した健一。

 しかし、確かにこのままでは不味いと思った!

 子供が痛めつけられる描写は作者も不味いと思うのだ!

 オロオロとする健一。

 血がドクドクと出ているし、ホントに不味いと気持ちだけが焦った。


「何してるのよ! 早くやめさせないと!」


「へ? あっ、ああ、そうだな!

 これっ! ミキ、やめなさい! それダメ! ストップ!」


「ガウ!」


 ブンブン振っていたアレスを放り投げて、元気に答えたミキは、尻尾をブンブン振ってとても可愛かった。

 いや、そんな場合ではないと、人形のように転がったアレスに近づく健一達。


「……どうすんのよ、コレ」


 ビクンビクン痙攣しているアレスを見てアリサが聞いた。

 健一の不祥事は監督者である自分も確実に処罰されるので、不安そうな顔をしているアリサ。

 元気に尻尾を振るミキの頭を撫でた健一は、このまま現実逃避したい気持ちでいっぱいだが、彼には教師としての責任感があるのだ!


「……よし!」


 ぐったりするアレスを抱き上げると健一は、大きな声で呼びかける!


「アレス! 今こそ、魔法を使う時、自分を治すんだ!」


 何を言っているの?! こいつ正気じゃないとアリサは健一を見る。

 勿論、アレスはぐったりしている。


「アレス! ここで頑張ったら、ベルリア先生のおっぱいを揉ませてやるから、頑張れ! 頑張るんだアレス!」


ピカーー!!


 奇跡が起こった。

 意識がないであろうアレスが自分に回復魔法を使ったのだ!


「や、やった!」


 喜ぶ健一。


「……」

 

 複雑な表情のアリサ。


「ワォンワォン」


 もっと撫でてと尻尾を振るミキ。

 アレスの体がみるみる回復していく……



「あ、あれ?」


 横にされていたアレスが気が付いた。


「……起きたか、心配したぞ」 


 アレスが目を覚ましてホッとする健一。


「お、俺は?!」

「ああ、ナイフを持ったお前が俺を刺そうとして転んで自分で自分を刺したんだ。

 危なかったんだぞ。

 俺の処置がもう少し遅ければ、お前は、今、こうして俺と会話している事もなかっただろう」

「ミキに噛まれたような気がするんですが、そうですか。

 そうだったんですね……」


 納得するアレスと、よく真顔でそんな事が言えるなとアリサは健一を見た。


「いいか、アレス。

 人を傷つけようとすれば、必ず自分に返ってくるんだ。

 それを身をもってお前は体験した。

 俺が常々言っている命の大切さを実感出来たんじゃないのか?」

「聞いた事ありませんが……

 そうですね。

 ……俺、いや、僕が間違っていました。

 今まで人を傷つけても、僕以外の人間は、下の人間だから何をしても良いんだって…… そんな考えが、そもそも間違いだったんだ」

 

 お前、そんな考えしてたのか?

 そう思ったが健一は顔には出さない。


「ああ、知ってた。

 でもなアレス、今日、命の大切さを知れて良かったじゃないか。

 ひとつ、アレスは成長したんだよ。

 お前は子供なんだから、これから沢山色んな事をゆっくり学んで、人を思いやれる大人になればいい」


 何かそれっぽい事を言った健一。

 お前が成長しろと言いたいアリサだが、下手な事を言って自分も巻き添えになったら嫌なので黙っている。


「ありがとうございます、健一先生!」


 アレスが立ち上がり礼を言った。


「いや、気にするな、俺は何もしていない」


 本当に何もしていない健一が謙遜して言った。

 アレスの目にうっすらと涙が……

 よほど俺の話が感動的だったんだなと、健一が自画自賛している。


「健一先生、ベルリア先生のおっぱいの件、頼みましたよ!

 僕、夢にまでみたベルリアのおっぱいが揉めると思うと胸と股間が熱くなります」


「へ?

 いや、あれは」

(クソっ! 余計な事を覚えてやがる! こうなりゃ、また誤魔化しちまえ!)


「うん、アレス」

「頼みましたよ!」

「あっ!」

 屈託のない子供らしい弾けるような笑顔のアレスは、戸惑う健一に手を振って走って行ってしまった。





「……どうしよう?」


「知らないわよ」

 

 アリサに聞いた健一だが、当然すぎる答えが返ってきただけだった。

さて、どうしたものだろうか。

おっぱい揉ませてくれなど、完全にセクハラになるんじゃないのか?

しかし、約束した手前…… うーん、困ったぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ