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第22話 魔法使い その2

待ってました!

とうとう魔法の登場だ、火か水か氷なのかしら?!

「ワォン!」

「静かに!」


 じゃれていた健一との触れ合いタイムが唐突に終了したので、ミキが「どうしたの?」的に吠えたが健一に一喝された。

 シュンとなるミキ。

 その姿に申し訳ない気持ちになったが、健一はベルリアへと視線を移す。

 何故なら、アレスが受けている健一的にはチンプンカンプンな魔法の授業、中々披露されないでいた、そう、健一が見たいと願っていた魔法がついに披露される時が来たからなのだ!

 固唾を呑む健一。

 緊張の面持ちのベルリアの様子に見ている健一も緊張しているようだ。


「一体どんな魔法が……」


 呟く健一。


「健一先生、ベルリア先生は凄い人ですよ。

 初日の授業の時、俺が先生のおっぱいを揉もうとしたら、こっぴどくやられましたから……

 持ち歩いているナイフを使ってもダメでしたからね!

 だから、俺は、ベルリア先生の授業は前から真面目に受けているんです」


 隣に座るアレスが健一にドヤ顔で言ってきたが、セクハラやナイフって、やっぱヤバい奴だなお前と健一は思った。

 思ったが、健一は同時に、こんな子供のくせにイカれた暴力野郎を大人しくさせたベルリアの魔法ってのに興味がわいた。

 健一も大概頭がアレなような気がするが、その事を指摘しても時間がかかるだけなので話をすすめよう。



「フフッ……」


 ベルリアは不敵な笑みを浮かべると、そばに置いてあるカバンへと向かう。



「じらしやがるじゃねぇか」


 眼鏡かけた男の子の魔法使いが使ってるような小さな杖でも出すのかと健一は思った。

 ベルリアが何かを取り出した。

 小さいものだ。

 健一が何だろうと首を伸ばそうとすると、ベルリアがそれをアレスに手渡した。



「……コップ?」 


 健一が呟いた通り、アレスがベルリアから渡されたのはガラスのコップ。

 日本で見るような透明度の高い薄いガラスでは無いが、確かにそれはガラスのコップだった。


「フフフ、貴様のような田舎者だと、このような高級なガラス製のコップなど見た事がないのだろう」


 あっけにとられる健一に、ベルリアが声をかける。

 健一としては、「は? いや、なんでコップ?」そう言いたいとこだったのだが、予想外の出来事に言葉が出ないでいた。


 アレスが渡されたコップを上から下から見ている。

 ベルリアが満足そうにその様子を伺っていた。

 そして、小汚いガラスのコップを十分見たからか、アレスはコップを健一に手渡した。


「……」


 手渡されてどうしろと? そんな表情でいる健一にベルリアが溜息をつく。


「しょうがない奴だな、お前。

 そのコップに怪しいところがないか、お前のそのアーモンドのような小さな目でしっかりと確認しろ。

 ちなみに、高価な物だから、丁寧に扱えよ!」


 腕組するベルリアが最後語気を強めて言った。

 ベルリアが心配するのは無理もない。

 ガラス製品など貴族か、よほど裕福な人間しか所有しない高価な物なのだから。


「……」


 意味が解らない健一は黙ってアレスが確認したのと同じような感じでコップを見た。

 健一からしたら小汚いコップを眺めた、それだけの感想だった。


「もういいだろう!」


 健一からひったくるようにコップを奪い返したベルリア。

 ぽかんとする健一。

 ヤレヤレといった表情のアレス。

 不貞腐れて寝ているミキ。

 ベルリアは教卓の上にコップを逆さにして置いた。


 ベルリアがニヤリと笑う。


 アレスが目を見開く。

 健一がなんだお前といった表情。

 ミキは寝ている。


 ベルリアが懐に手を…… 手を、ん? あれ? そういった表情をして、何かに気づいてカバンに手を入れてゴソゴソと…… あった! 思わずそんな表情をしてカバンの中から何かを取り出した。


 ゴクリとアレスが唾を飲みこんだ。

 え? なんで? そんな表情で健一がアレスを見る。

 

 アレスと健一の目の前にベルリアがカバンから取り出した銀貨を差し出し確認させる。

 アレスが受け取り注意深く上から下から横から斜めから注意深く確認し、健一へと銀貨を渡す。

 受け取った健一。


「……」


 じっと銀貨を眺めて、凄く嫌な予感しかしなかったが、適当に確認してベルリアに返した。


 銀貨を受け取ったベルリアが不敵な笑みを浮かべる。

 嫌な予感しかしない健一。


「お前達が確認した、この何の変哲もないコップと」


 ベルリアが教卓に置いてあったコップを持ち上げ言うと逆さに教卓の上にコップを戻す。

 とても嫌な感じしかない健一。



「この何の変哲もないコップと銀貨……」


 アレスがベルリアの持つ銀貨に注目する。

 凄く嫌な感じしかしない健一。


 ベルリアは教卓においたコップに手に持った銀貨を近づけていく。

 アレスは息をのんだ。

 健一は凄く嫌な感じしかしない。


コツン……


 逆さに置いてあったコップの底に銀貨が当たる音が聞こえた次の瞬間!


「うおおおおおおおおお!!!」


 ベルリアが叫び声をあげてコップに銀貨を押し当てる!


「まっ、まさか!?」


 アレスは立ち上がり身を乗りだしコップに注視する!

 健一は突然立ち上がったアレスにい驚いた。


「はぁああああああああ!!!!」


 叫ぶベルリア!

 目を見開くアレス!

 ベルリアとアレスを交互に見る健一。




カチャン……


 なんと逆さにしたコップの上から押しあてた銀貨がガラスをすり抜け教卓の上に落ちたのだ!



「えええぇ!!」


 アレスが驚きのあまり椅子にドスンと腰を落とした!


「いや、凄い見た事あるやつ!」


 一瞬アレスの行動に驚いたが、健一が突っ込んだ。

 テレビで何回もみた手品を手際悪く見せられた健一の素直な感想だった。


「ふう……」


 やり切った感満載で額を手で拭うベルリア。


「いやいやいや、それって手品じゃな」


サッ!


 健一が手を伸ばそうとした時にベルリアが教卓のコップと銀貨をカバンにしまった。


「ねっ! ベルリア先生の魔法は凄いでしょう!」

「いや、何が?!

 ただの手品じゃん、あんなのテレビでやり倒されてるだろ?!」

 純粋に騙されているアレスに言ったが、アレスの表情を見る限り健一の言葉は届いていないようだ。


「魔法です」

「黙れ!」

 ベルリアの言葉にかぶせる様に言った健一。

 アホみたいに魔法を期待していた分、裏切られた反動が大きいようだ。


「流石、ベルリア先生……

 健一先生、僕はベルリア先生みたいな魔法が中々出来なんですよ……

 あのレベルに行くのにどれだけの修行が必要なんでしょうか……」

 

「そりゃ、タネを教えられていないマジックを自力で解読して覚えるなんて大変でしょうね。

 いやそうじゃなくて、アイツが手品しただけでしょ?!」


 騙されているアレスに健一が言っ


「魔法です」

「だから黙れお前!」 


 あくまでも魔法と言い張るベルリア。


「では、アレス、お前もやってみろ」


「やってみろって、お前」


 呆れる健一を無視してアレスに道具を渡すベルリア。


 高価なガラスのコップでは無く木のコップと銀貨を使って手品を実践するようだ。


コツン、コツン……


 一生懸命にコップの底からコインを通そうとするアレス。

 だが、何度やってもコインがコップに当たって音がなるだけで一向に突き抜ける気配はないようだ。

 満足そうなベルリア。

 なんだお前、その顔は?! ベルリアの表情を見て健一は、そうイラっとした。


「やっぱりベルリア先生は凄い!

 全然銀貨がコップをすり抜けない……」


 ベルリアを尊敬しているアレスは、出来ない自分の不甲斐なさに落ち込んだ。


「お、おい。

 そんな落ち込むなよ、そもそもタネも教えられてないのに出来る訳ないじゃん」


 狂暴で頭のおかしい子供だが、純粋なところもあるんだなと健一は思った。

 そして、手品を魔法と言い張るベルリア。

 この世界では手品が魔法と思われているのか?

 訳が解らないとベルリアのカバンを漁っているミキを眺めながら健一は思った。


「ちょっと! 人の商売道具になにしてんのよ!」


 ベルリアがミキに気づいて血相を変えた。

 手品の道具が入っているんだなと健一は思った。

 実際、ベルリアとミキが揉み合った結果、トランプみたいなカードや、中に花が仕込まれた杖とか色々辺りに散らばっているから間違いないだろうなと健一は思った。


「健一先生、ベルリア先生はあのカードの中から一枚抜いたのをどれかって言い当てる魔法もつかえるんですよ!」

 

 アレスが、凄く聞いた事がある古典的な手品を教えてきたので、複雑な表情になる健一。


 散らばった手品道具をベルリアが片付けている内に本日の授業が終了した。



「あーあ、今日はガッカリだなぁ」


 アレスと廊下を歩く健一が言った。


「どうしてです? ベルリア先生の魔法凄かったじゃないですか?」


 不思議そうな顔で健一に言ったアレス。


「あんなの詐欺師だろ?

 魔法使いを騙って……

 しかし、魔法があるって期待したのに、あんなのかよ」


 一人ブツブツ言っている健一。


「そういや、あの魔法の授業の初日にこっぴどくやられたって言ってたけど、魔法でやられたんじゃないんだな?」


「はい、普通にぶん殴られました。

 ……ベルリア先生にとって俺なんか魔法を使うまでもないって事ですよね」


 それは違うんじゃないかと健一はアレスをみた。


「健一、どう? 反省した?」


 後ろからアリサが声をかけてきた。

 朝の事をまだ根にもってるのか、しつこい女だと口に出さず健一が振り返る。


「なによ、その顔。

 あんたが悪いのに、アンタの側にいないからってフェルスさんに怒られちゃったじゃない、私に謝りなさいよ」


「無茶苦茶だな、おい」


 突然の謝罪要求に思わず逃げ出そうとした健一。

 アリサがが逃げようとする健一の服を掴んだので、引っ張られた健一が豪快に転び床に頭を打ち付けた!


 頭を押さえ悶絶する健一。

 固い床に健一の頭が当たった時、結構大きな音がした。


「ご、ごめん、ちょっと、大丈夫なの?」


 そこまでするつもりのなかったアリサが声をかけるが、苦悶の表情で頭を押さえ悶絶している健一から返事が無い。


「もう、おじさんとおばさんで何をしてるんですか」


 呆れたように言ったアレスが倒れている健一の頭に手をかざす。


「リカバ!」


 一瞬アレスの手が発光した。

 次の瞬間、健一が一瞬光る。



「……あれ、頭が痛くなくなった」


 痛みが消え去った健一が体を起こした。


「大丈夫ですか? 気をつけてくださいよ」

「いや、アレス。 お前、今何をした?!」


 ヤレヤレといった表情のアレスの両肩を掴んで健一がまくしたてた。


「ちょっと、アレス様に何してんの!

 魔法で治療してくれたんだから、お礼言いなさいよ!」

「痛っ!」


 アリサから拳骨を頭に落とされた健一だったが、身をもって魔法を体験出来た喜びの方が強いようである。


「……なに?」


 アリサが引く。

 何故なら、殴られたのに満面の笑みでいる健一がそこにいたからである。


(とんだ詐欺師のベルリアのおかげで、魔法と手品が同じ扱いなのかと思ったが、あるじゃないの魔法!

……ん? すると、なんで本当の魔法が使えるアレスがベルリアなんて詐欺師から魔法を、いや、アレは魔法じゃないけど、兎に角なんで教わっているんだ?)

 気持ち悪い笑みを浮かべていた健一だったが、そんな疑問をもってアレスを見た。

いやぁ、ガッカリだったが、最後に魔法が見れてよかった。

しっかし、アレスの野郎、なんであんな詐欺師に教わってるんだろうね?

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