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第2話 国道は何処ですか? その1

何があったのだろう?

気が付いたら森の中だと……

こうなったら、煙草をすうしかねぇっ!

「教室で田村に謝っている最中に爆発があって俺は飛ばされたんだな。 うん」


 鬱蒼とした森の中、地べたにあぐらをかいて煙草を吸う中学校教員、上田 健一。

 健一は現在の状況をを整理すべく落ち着き考えようとしているのだ。


「思わずビンタしちまったけど、田村の奴大丈夫かなぁ?」


 煙草をふかしながら空を見上げると木々の間から青い空に白い雲が流れているのが見えた。 


 

「あっ!」




「……俺がこんな場所まで飛ばされるくらいの爆発だ。

 もしかしたら田村の奴……

 うん。

 そうなんだろうな。

 可哀相に…… 思い悩んでたみたいだし、若いのになぁ……」


 健一は口に煙草を咥え、教え子の為に両手を合わせた。

 死んだ田村の為にも大切に生きなければいけないと、勝手に田村が死んだ事に決定した健一。



「うむ。

 やはり人生…… 悪い事もあれば、良い事もあるんだな!

 田村には申し訳ないが、あの爆発で奇跡的に俺は無傷ですんだのだから!

 俺は、ツイてる!」


 ……などと喜んでいる健一。

 彼の考えだと、


 ・学校で爆発が起こる

    ↓

 ・吹き飛ばされる(60km以上の距離を)

    ↓

 ・森に落下

    ↓

 ・無傷で着地(寝そべった状態で)


 当然だが、ありえない。

 なぜなら学校の周りに健一が現在いるような森は存在していなかったからだ。

 中学校から近くの森のある山のほうまでは、少なくとも60km程の距離があった。

 その距離を飛ばされ、落下して、無事でしたと納得するなど、どうかしている……

 だが往々にして人は、自身の理解の範疇を超えた時、自己に都合の良い解釈に頼りたがるものである。

 まあ、教師も人間である、そんなトコなのだろう。

 そんな些細な事より、現在の健一にとって大事な事はこの状況をどうにかする事なのだ。

 ごちゃごちゃ考えている暇はないのだ。



「っと。

 ……行くか」


 煙草を吸い終わり立ち上がるとズボンのポケットからスマホを取り出した健一は、起動した画面をタップしてく。


「ええと、国道は…… あれ? なんで?」


 マップを起動させようとしたが、ネットにつながっていない為エラーメッセージが表示された。

 頭を掻いて溜息をつく。

 

「マジか。

 ん? あぁぁ。

 アンテナ消えてるし! これじゃ電話もつながんないし勘弁してくれよぉ。

 ……人がいるとこまでかなり遠いって事?


 ……最悪だ」


 諦めた健一は、嫌な予感と不安とスマホをポケットに突っ込んで国道を目指し歩くのだった。





1時間後――



「なんだぁ、ここっ!」


 汗を拭って叫ぶ健一。

 道なき道を進むが、草をかき分け平らではない森は移動するだけで想像以上に体力を奪う。

 1時間歩いたと言っても、その移動距離は健一が思うよりも少ない。

 アウトドアど素人の人間が何の装備も無しに森に入るなど自殺行為と言えるが、まあ、健一は好きでこの場所に来た訳では無い……


「……遭難だよな?」


 辺りを見渡す健一。

 不安の二文字が胸に広がっていく。

 そして喉の渇きが恐怖を煽り全身に広がっていく。


「おいおいおいぃぃ。

 洒落になんないぞ、この状況!

 どっちに国道があるか分かんない状態でむやみに歩きまわるのは危険なんじゃないのか?

 兎に角、どこか安全を確保出来る場所と…… 水、水が必要だよな?

 うん! そうだよね!

 んなもんドコにあんだよ!」


 キョロキョロしながら一人ブツブツと喋る健一は、自分で言って自分にキレた。

 そして、拾った小枝で生い茂る草木を叩きながら歩き出した。

 イライラするし歩き回るのが危険だと解っているが、ここにじっとしていても死をまつだけだと思ったからだ。


( 学校が爆発したのなら誰も自分が森まで飛ばされたと考えないかもしれない。

  いや、そうだろう。

  仮に幸運で自分の捜索隊が出る場合でも、警察や消防が学校にきて被害状況を調べ安否確認が行われ、そうして自分が飛ばされたと判断されるまでに、一体どれ位の時間がかかるんだ?

  絶対に時間かかる! ……発見されるまでもつか俺?

  うん。

  無理だろ、普通に! )


「急がなきゃ! 体力のある内に水や寝る場所を確保しなきゃいけない!

 暗くなる前に! 暗く…… あれ?」


( 学校にいた時って夕方だったよな? )


 立ち止まった健一は、先程しまったスマホを取り出して画面を開いた。


「……朝の9時16分??


 えっ? えっ?

 なんで? 飛ばされてから森の中で一晩過ごしたって事?

 いや、よく無事だったな、俺!

 嫌な予感がしないでは無いが…… 兎に角、今は安全と水だ!

 余計な事など考えるな、俺!

 バッテリーがもったいないから、スマホの電源も落としておこう」


 半分泣きそうになりながらも怒りを忘れて歩きだす健一。

 その足取りは先程に比べ速足であった。



 遭難中の健一が水を求め森を進みしばらくの時間が過ぎた。


「もう最悪だ。

 虫も多いし、木や草だらけだし、野生動物が襲い掛かってくるんじゃねぇか?」


 まだ不平不満を口にするくらいの元気は残っているみたいだ。


 更に森を進む……



 森を彷徨う中、少し離れた場所に見たこともない動物を目撃し恐怖を倍増させる健一。

 子犬くらいの大きさの蟻もいたし不安でいっぱいの健一。

 お腹が空く健一。

 真っ赤な果実を発見して喉の渇きと空腹を満たす事に成功した健一。

 直後、嘔吐と下痢に見舞われる健一。

 意識が朦朧とする健一。

 2~30分倒れていた健一。

 動物などに襲われずラッキーな健一。

 フラフラになりながらも進む健一。

 思ったよりガッツと体力がある健一。



 色々ありながらも進み続けた健一は、開けた場所についた。

  


「……み、水だ」

 フラフラになりながらも健一は川を発見したのだ。

 河原の砂利をザクザクと鳴らしながらヨロヨロと進み、水辺に到着するとへたり込んだ。

 震える手で川の水をすくいあげる。

 その水を一気に――


「……いや」

 健一は両手で掬った水を捨てた。

 せっかく少し体調が良くなってきたのに、また下痢等になってはいけないと学習した健一。

 しかし飲みたい健一。

 嘔吐と下痢で喉が限界の健一。


「くーーーっ! クソっ!

 こんなに水があるのに……

 そうだ!

 煮沸! 煮沸すりゃ大丈夫なんだろ!」


 誰に言っているのか健一は、覚悟を決めて水を煮沸するために森へと入っていった。

 そして、小枝や枯れ木など薪になりそうなものを拾い集めては河原へと持っていく。

 体力がどんどん持っていかれる。

 だが、安全な水を飲むため頑張る健一。

 フラフラの体での作業は時間がかかった。

 何とか最後に、水を沸かす鍋代わりの大きな葉っぱを苦労して引きちぎって河原へと戻ってくる事が出来た。


「よ、よし!

 後はライターで薪に火を点けて水を沸かすだ…… け……」


 ライターを取ろうとした時、ふと横を見ると知らない動物が普通にゴクゴクと川の水を飲んでいるのが見えた。


「……」


 その様子をじっと見ていると、他の知らない動物も水を飲みに来てゴクゴクと飲んでいるのが見えた。


ガバッ!


 健一は川に頭を突っ込みゴクゴクと飲んだ!


「ふざけんな! 俺の今の苦労は何だったんだ!

 何回も往復させやがって、普通に飲めるんじゃねぇかよ!」


 腹いっぱいに水を飲んだ健一は、大の字に寝ころびながら誰に言っているのかちょっとよく解らないが文句を言うのだった。

 そして横を見ると動物が川でおしっこをしているのが見えた。

 さっき飲んでたトコより上流でだ。


「……」


 健一は、見なかった事に決めた。

水を確保した。

俺はツイてる! ……いや、こんなトコにいる時点でツイてないのでは?

と、兎に角、人間水さえあれば少しは生き長らえるだろう。

なにせ60%は水で出来てるっていうしな!

しかし……学校の近くの山にこんな川なんてあったかな?

そもそも学校の近くに山あったっけ?

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