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第18話 今日は授業が出来るんだろうな?

昨日は訳の分からない理由で勝負させられた。

今日はまともな一日であってくれ。

 ネッガルスとの闘いから一夜明け、健一、家庭教師2日目の朝。



「今日は授業が出来るんだろうな?」


 屋敷の廊下をアリサとミキと共に歩く健一が聞いた。


「知らないわよ。

 そんな事より、昨日はあんたのせいで、ダモン様から怒られたんだから、今日はちゃんとしてよね」


「なんで俺のせいなんだよ?

 ミキのウンコを片付けなかったからか?

 だってしょうがないじゃない、片付けるもなにも、あの時はそんな暇なかったし!

 それは、お前も知ってるだろう?」


「……そりゃそうだけど」


「ウォンウォン!」


「ほら、可哀相に!

 お前やダモンにウンコを弄ばれたミキが抗議しているぞ!

 謝れ。

 ミキに謝れ、この野郎。

 レディーに辱しめを与えた事を詫びろ」


 健一はここぞとばかりにアリサに言った。

 実は健一も昨日ダモンにミキの排泄物をちゃんと処理するようにと強い剣幕で怒られていたので、その八つ当たりなのだ。

 どれ、アリサのバカは俺に指摘されてどんな顔をしていますかな?と健一がアリサの表情を伺ったのだが明後日の方向を向いている。

 アリサのノーダメージぶりに落胆した健一だが、人の話を聞かないのは如何なものかとイラっとした。


「……ねえ、健一?」


「なんだよ、あのなお前は俺の話をちゃんと聞い」

「そのレディーが、またしそうよ」


「なにを? ……あっ! ミキ!」


 健一がアリサが指さす方向を向くと丁度ミキが排泄行動に入るところだった。

 ミキがプルプルしている。


「お前、一応屋敷の中なんだから不味いだろう!

 あああ、しかし、もう遅いか、既に少し出てるし……

 すまんアリサ、雑巾とか掃除道具ないか?

 ウンコを片付けねばならぬ」


 昨日、大人なのに凄く怒られた健一は、今日も怒られたくないので、ちゃんと片付けしようと思った。


「仕方ないわね、持ってくるからちゃんと責任もって処理しなさいよ」


 そういうとアリサは廊下を駆けていく。

 アリサも昨日凄く怒られたので、健一の頼みを素直に聞くのだった。



「健一さん! おはようございます!」


 アリサと入れ替わるようにネッガルスがやってきた。

 昨日の鎧姿と違い、ラフな格好だ。


「ネッガルスおはよう。

 今日もアレスに剣術教えるのか?」


「ええ、午後からの予定です。

 昨日もバタバタとしていましたが、午後からちゃんと教えてたんですよ」


「そうなんだ、俺は午後からダモンと個人面談があったから……」


 明らかにテンションの下がった健一の顔をみて、怒られるほうの面談だったんだなとネッガルスは悟った。

 何故なら、自分もダモンに部屋に呼ばれて怒られた事が幾度かあったからだ。


「ダモン様の話は長いですからね…… でも、あんまり気にしない方がいいですよ。

 気にしてもしょうがないですから」


 経験があるので、健一の辛さが解る分、ネッガルスの言葉は実感がこもっていた。


「ネッガルス、お前は良い奴だなぁ、ごついけどかわいい顔してるし、女だったら彼女にしてあげても良かったんだけどな」


「してあげてもって、なんで上から目線なんですか」


「そういや、アレス様の教師って俺とお前と、後はどんな人達なんだ?

 それから、時間割とか何曜日に誰が教えるとかの勤番的な物がないの?

 前もって予定がわからないと、自分の予定たてらんないだろ?

 そもそも仕事の説明とか勤務形態とか、かなりおざなりなんだが……」


「あれ? まだ教えられて無いんですか?

 そんなんじゃ健一さんも困りますよね。

 僕の方からフェルスさんに健一さんの今月の予定とか、ある程度の決め事とか書いたものを用意してくれるように伝えておきますね。

 それと他の先生の事でしたら、武芸は僕ですし、魔法はベルリアって女性が教えています。

 後、カッサルさんってベテランの人がいます。

 カッサルさんは、アレス様に文字や歴史や計算、マナーとか全般的な勉強を教えてますね。

 あっ!!」


「どうした?」


「そうだ、健一さんも計算が得意だから、カッサルさんと分担してアレス様に指導するんじゃないですか?」


「別に計算が得意でも無いが…… 国語の先生だったし。

 しかし、アレにマナーって、そのカッサルって人、随分苦労したんだろうな……」


 アレス相手にマナー教えるとか、どんな罰ゲームかと健一は思った。

 そして、まだ見ぬカッサルなる人物を気の毒に思った。


「あー、ところで、そのベルリアって、おいくつくらいのどんな女性なのかな?」


 目尻の垂れ下がった健一が、下心丸出しできいた。

 本人的には、それとなく聞いているつもりなのが痛々しいが。


「ベルリアですか?

 とんでもない女ですよ、僕より若いくせに生意気だし、魔法が使えるからって人を見下すような女ですよ!

 僕も魔法が使えないですから、見下される対象らしいです。

 健一さんも気をつけた方がいいですよ」


「うん、それで見た目はどうなんだ、可愛い感じなのか、綺麗な感じなのか?!」


「え?」


「いや、え? じゃなくて、どっちなの?」


「は、はあ、まあ…… 可愛い感じ、かな?」

「あ、そう!

 キツイ性格っぽいのに、可愛いと!

 ほう!

 ギャップが良いかもね、うん!

 いや、同僚としてね。

 そうかぁ、うん、そうだよなぁ、同じ職場の仲間だから、ぜひ仲良くしないと!」


 健一が笑顔で食いついてきたので若干ネッガルスは引いた。


「そうかぁ、うん、うん。

 可愛くて魔法が使えると…… 可愛いのにねぇ」


 健一がしみじみと、うんうん頷いている。


「可愛いのに、まほ……

 

 ん?


 っま、魔法ぅぅぅぅ?!?!」


 今更の驚きの健一だが、この世界は、みんなが魔法を使える訳ではないが普通に魔法が存在する世界なのだ。

 魔法に驚く健一だったが、魔法が存在するのが当たり前の世界に生きてきたネッガルスには、健一が何をそんなに驚いているのかが理解出来ないでいた。


「魔法があるのか!」


 興奮気味にネッガルスに聞く健一。


「? それは、そうでしょう?

 で、それが何かありました?」


 本当に意味が解らない、何、この人怖いという感じで答えるネッガルス。


「いや、俺の故郷だと魔法使える奴が周りにいなかったから、ハハハ

 そ、そうだ! 俺も使えるようになるかな?」


「魔法がつかえる人間がいないと生活が不便そうですね。

 確かに魔法が使える人って少ないですし、地域によっては、そうなっちゃうのかな?

 僕も使えないですしね。

 魔法が使えるかどうかって、才能と魔力の有無で決まるみたいですから、健一さんベルリアに聞いてみたらどうです」


「なるほど!

 会話のきっかけにも良いかもしれないし、ベルリアって女の子と仲良くなるためにも是非会話しなければ!」


 今迄生きてきて魔法なんて使えなかったのだから無理だろうと思う健一だったが、ベルリアと仲良くなれそうと勝手に期待を膨らませた。


「ワォン!」


 ミキが爽やかな笑顔で健一に声をかけてきた。

 排泄が終わり、実にスッキリとした顔をしている。

 丁度その時、バケツや雑巾、ホウキ、塵取り等の掃除道具を手にしたアリサが戻ってきた。

 

「はい、持ってきたわよ。

 あんたに、預けるから、自分で管理しなさいよ」


「おかえり、助かるよ。

 ありがとね、アリサ。

 ようし、ミキ、お前のウンコを片付ける俺に感謝するんだぞ!

 では、ネッガルス、俺は今からやる事があるから、ああ、色々教えてくれてありがとうな」


 アリサから掃除道具を受け取った健一がネッガルスに言うと、ミキのウンコを片付けるべく歩き出した。


「ネッガルスさん、アレが何かご迷惑かけなかったですか?」


「いや、大丈夫だよ。

 それじゃ僕も行くから、健一さんが解らない事あったら教えてあげてね」


「嫌ですけど、それが仕事ですから」


 アリサが笑顔でネッガルスに言うと、苦笑いしてネッガルスは去っていった。



 朝食を終えた健一達は、アレスの部屋にいた。


 部屋の中、机に向かうアレス、その向かいに頭の禿げたカッサルがいる。

 健一、ミキ、アリサは邪魔にならないようにアレスの席の後ろからカッサルの授業を見学しているのだ。


「……なるほど」


 熱心にアレスに説明するカッサルをみて健一が呟く。

 その真剣な視線に、アリサは健一を少し見直した。


「全く何を言っているのか理解出来ん」


 続けて出た健一の発言にガックリくるアリサ。

 だが、この国の歴史の授業のようだが、知らない世界の歴史を流れも解らず聞いたところで健一の反応はしょうがないものと言える。

 渡された資料もこの国の言語で書かれているため、何が書いてあるのかさっぱりな健一。

 そんな健一が、だんだん眠くなってくるのもしょうがないと言えるのだ。



「ちょっと、健一」


 うつらうつらしていた健一をつつき小声で言うアリサ。

 気づいてハッとする健一。


「すまん、寝るとこだった」


 小声で言った健一の服を引っ張り、目配せするアリサ。


「?」


 気づかない鈍い健一にイラついた感じで指を小さく差すアリサ。

 健一がその指の先をみる。


「あ。

 ……何してんだ?」


 アリサが指さすとこにいたのは、寝てるミキにちょっかいをかけているアレスだった。


「ワォン、ワウォン」


 耳を触ったり体を撫でたり口を引っ張られたりして、うっとおしいとミキが吠える。


「あひゃひゃ、ワンちゃん、ワンちゃん!」


 嬉しそうなアレス。

 健一とアリサは呆れてみている。

 カッサルは死んだ魚のような目をして、ずっと歴史の話を無人の机に向かって喋り続けていた。


「あのおっさん、注意しないのか?」

「そうよね、なんか一人でずっと喋ってるけど」

「あのガキも大概だけど、あのおっさんもヤバいんじゃないか?」

「アレ相手に授業…… 成立しないで、精神的にまいっちゃったんじゃない?」

「もう、貰ってる給金分喋ると割り切ってるのかもしれないな……」

「それより、アレからミキちゃんを助けてあげなさいよ」

「お前、アレス様とか言わないで良いのかよ?」

「あんただって、ガキとか言ってるじゃない」

 ひそひそと健一とアリサが言っている間もアレスはミキにちょっかいを出し続け、授業は淡々と進行している。


「ワォンワォ」

「あひゃひゃひゃひゃーー」


 アレスがミキのほっぺを左右に引き伸ばして嬉しそうにしている。


「あー、おい、その辺にしてやってくれないか、ミキが可哀そうだ」


 堪らず声をかける健一。


 背後から声を掛けられ、アレスの手が止まった。



「あ゛?

 テメェ、俺に言ってんのか?」


 首を少し後ろに向けアレスが言った。


「は?」


 子供とは思えないドスのきいた声に戸惑う健一。


「ハァ……」


 溜息をついて、立ち上がるアレス。


「おう、そこ座れや、チンピラ」


「ち、ちんぴ、お前何を言って」


「良いから座れっつってんだろうが、ぶっ殺すぞ!」


 何故か解らないが凄く怒っているアレスをこれ以上刺激しないように健一は床に座った。


 カッサルはその間も淡々と喋り続けている。

 この状況下で、このおっさん大丈夫か? と健一はチラッとカッサルを見て思った。

……カッサル。

金の為と割り切ってるのか、授業を喋るだけのマシーンのようになっているが、大丈夫か?

いや、そんな事よりも、アレス、お前が一番大丈夫なのか?!


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