表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/33

第14話 雇われました その1

領主様に雇ってもらえる事になったようだ。

詳細は不明だが、これで生存確率が爆上がりだぜ!

領主ダモンの屋敷、応接間――


 ダモンに仕事を与えると言われた健一。

 与えられる仕事か何かは解らないが収入を得る道が出来たと安堵した。

 これで扶養家族ミキと自分が食っていけると思ったからだ。

 生活に余裕が出来たら独立して、近くの子供達に勉強を教える塾でも開こうかとも思い描く健一。

 これから先、つらい事もあるだろうが今の健一は仕事を得た事により夢は広がるばかりのようだ。


「おい、健一!」


 ダモンの言葉にハッとした健一。

 仕事がもらえる事になって色々考えている内に上の空になっていた事にようやく気づく。


「すいません、ダモン様」


 すかさず頭を下げた健一は、話を聞く為に姿勢を正した。


「全く。 突然ボーっとするから、こっちは不安になるではないか。

 まあ、いい。

 健一、今日からお前は、この屋敷で住み込みで雇う事とする。

 村長からの紹介文にも、住むところが無いから世話をして欲しいとあったしな。

 毎月給金を支払うからそれを貯めて自立してみせろ」


 ダモンの申し出は住むところが無い健一にとって、ありがたいものだった。


「あ、ありがとうございます。

 早くお金を貯めて、ダモン様にご迷惑が掛からないように早く出ていけるよう努力いたします」


「ああ、でも焦らなくていい。

 この屋敷にいる間にこの場所に慣れるように、自分の地盤を固めればよい」


 ダモンの言葉がいちいち有難く、申し訳なくて自然と頭を下げる健一だった。

 だが、そこまでしてもらえる自分は、この屋敷でどんな仕事をさせられるのかが不安になってきた。


「……あの、僕はこのお屋敷でどのような仕事を?」


「ん? ああ、そうか、そうだな……」


 雇う事は決めていたが、割り振る仕事を考えていなかったって事が健一にも解ったが、流石に指摘できないでいる健一。


「おお、そうだ。

 健一には、私の下の息子の先生の一人になってもらおうか。

 今、アレスは8歳だが、王都の寄宿学校に入る12歳までに他の貴族の子息に負けない教養を他の教師と共に身に着けさせてやってくれ」


「(8歳…… 日本でいうとこの小学校3年生ぐらいか、そんで、12までだから、中学1年生くらい?までの約4年。

  少なくともヘマをしなければ、4年は生活が保障されるって訳だ。

  長いのか短いのか解らないけど、それまでに貯蓄して自分の生活基盤を固めないといけないな)

 家庭教師ですね、解りました。

 日本で教師をしていたので、その経験を生かして、アレス様のお力になれるよう先輩の家庭教師の方々と共に努力いたします」


 自分の専門外の肉体労働系だったらどうしようとも頭にあったので、正直ホッとした健一。

 何人も家庭教師を雇っているなんて、やっぱ庶民とは違うんだなとも思った。


「よろしく頼むぞ。

 まあ、仕事の件はこれで決まりだな。

 他の教師の事は、後で紹介するとして…… まずは、お前に与える部屋を案内させよう。

 ああ、そうそう夕食の時にでもアレスにお前を紹介するから」


 それだけ言うとダモンは立ち上がり、部屋の外に出て行った。


「労働条件とか、給料とか、全く聞いていないのだが……

 いや、日本じゃないし、聞いたら不敬だって殺されんじゃないか?

 殺されなくても、雇う話が白紙になったりしたり…… 凄く怖いんだが」


 ダモンが出て行ったドアを眺めて健一が言った。


「ワォン!」


「ん? 目を覚ました?

 よしよし、大人しくしてて偉かったぞミキ。

 そして、喜べ。

 仕事と住む場所が決まったからな!

 凄く不安だけど」


「ワォン!ワォン!」


 ミキが健一の顔をベロベロと舐めた。


「うわっ! もう、べちょべちょじゃねぇか!」


 ミキに言って袖で顔を拭う健一。

 そして、


「よし。 うん。

 そうだよな、ミキ。

 森で死にかけた事に比べれば、こんな不安、どうって事ないよな!」


「ワォン!」


 拭い終えたその顔は、不安そうだったものから、いつもの健一の顔に戻っていたのだった。

 


 暫くすると部屋のドアがノックされ、自分より少し上位の年齢に見える男と健一と揉めたメイドの女性が中に入ってきた。


「初めまして、健一さん。 

 私は、この屋敷の執事をさせていただいておりますフェルスです。

 住み込みでアレス坊ちゃまの先生なられたと、ご主人様より伺っております。

 屋敷の事で何か不明な事がありましたら、私かこちらのアリサに何でも聞いてください」


 想像する執事像より若い人物だった事に少し驚いたが、感じのよさそうな人だと健一は思った。


「あ、どうも。

 上だ…… ケンイチ・ウエーダです、ケンイチとお呼びください。

 フェルスさん今日からお世話になるので、よろしくお願いします」


 フェルスにお辞儀をして隣のメイドをみると、顔の筋肉だけで笑っているので顔がひきつっていた。

 揉めたし嫌なんだろうなと健一は思った。


「アリスもよろしく」


 爽やかな笑顔で煽るように名前をわざと間違えてアリサに言った健一。


「ア、アリサです。 よ、よろしくお願いします」


 頭を下げるアリサを健一は満足そうな顔でニヤニヤして聞いた。


「あら? ちゃんと挨拶出来るんだ、ふーん」  

「なにぃ」


「アリサ!」


 更に煽る意地の悪い健一にアリサが言い返そうになったところで、すかさずフェルスがアリサを窘めた。

 するとアリサは黙って俯いてしまい、なんだか可哀相な事をしてしまったと健一は思った。

 多分、ドアの前で言い争いした事でフェルスさんから大分怒られたんだろうなと想像が出来た。


「いや、フェルスさん、今のは僕が悪いんで。

 アリサ、ごめんな煽っちゃって」


 謝って顔を見るとアリサに凄い睨まれた健一。

 誤ったのに、心の狭い女だとイラっとした健一。


「まあ、今日からお屋敷で働く仲間になる訳ですから、仲良くやっていきましょう。

 アリサも普段はとても良い子なのですよ。

 暫く、健一さんにつけますので、何でも聞いて早くここの生活に慣れてください」


 いや、良い子って、現在進行形で睨んでますけど? 大丈夫かお前? そう思いつつも改めて「よろしくお願いします」と健一はフェルスに返した。


「さてと、私は仕事が残っていますので、後の事はアリサに聞いてくださいね」

( あああ、そう! そこの俺を睨んでいる性悪女の顔を見てくださいフェルスさん! ほら、睨んでる!)


 振り返るフェルスに向って心で叫ぶ健一だったが、アリサは既に普通の顔をしていた。

 お前が早く振り向かないから! とフェルスの後ろ姿に恨めしい視線を送る健一。

 当然そんな事に気づかないフェルスはスタスタと部屋を出て行くのだった。




「あんたみたいなのが、採用されるなんてね」


「お前な、フェルスさんがいなくなったら直ぐだな」


 全然本性を隠さない姿勢に呆れながら言った健一を無視して、アリサはミキの首に手をやってワサワサと撫でる。


「ワァウワァウ!」


 気持ちいいのかミキは尻尾をふった。


「もう! こっちはペット飼えないのにズルいわね。

 モフモフで可愛いし、私も可愛がるから宜しくね」


「あのな、ミキはペットじゃないし、相棒だよ。

 本人いや本犬もそう思ってるに違いない」


「ワァウワォン!」


「ほら、ミキもそうだってよ」


「ふーん、どうでもいいけどくっちゃべってないで、さっさと案内始めるわよ」


「……(そっちがミキのモフモフを堪能していたくせに)」


 釈然としない気持ちの健一だが、さっさと歩き出してしまったアリサの後を慌てて追った。

アリサってメイドが慣れるまでの間世話してくれるみたいだけど、大丈夫かしら?

気さくで話やすいけど、あの女は下品でいかん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ