「漫才がやりたい」
ツッコミ 「コント!回覧板!
ピンポーン!すみませーん、隣の山田なんですけどー。
回覧板渡しに来ましたー」
ボケ 「(立ったまま悩んだ素振りをしているだけ)」
ツッコミ 「・・・ピンポーン!すみませーん!
回覧板を!渡しに来たんですけどー!」
ボケ 「(立ったまま悩んだ素振りをしているだけ)」
ツッコミ 「すみません!!回覧板を!!渡しに!!!」
ボケ 「漫才がやりたい!!」
ツッコミ 「えぇっ!?」
ボケ 「漫才がやりたいの!!」
ツッコミ 「お前本番中に何言ってんだよ!」
ボケ 「俺はこんなコントじゃなくて、漫才やりたいがやりたいの!」
今も昔もお笑い業界をけん引してきたのは漫才!
このお笑い戦国時代、自分の『べしゃり』だけで
勝ち進んでいきたいんだよ!もちろん、お前も一緒にな!」
ツッコミ 「ところところダッサい言い回しだなぁ。
わかったわかった。今日は特別に漫才やってやるから!」
ボケ 「おぉ、ありがとう!じゃあ俺がボケやるから、お前ツッコミやって」
ツッコミ 「いきなり漫才コントのフリみたいになってるから」
ボケ、手を叩くと舞台が暗転
ツッコミ 「待て待て!漫才中になんで暗転すんの!
これコントの入り方だから」
舞台明転
ボケ 「ここが舞台袖かー」
ツッコミ 「なんで袖からやるんだよ、コントの導入部分じゃねーか」
ボケ 「さて、今日も1発笑わせたりまひょか?」
ツッコミ 「何その関西弁!」
ボケ 「ウィーン!(センターマイクに向かって駆け出す)
どーもー、(コンビ名)です」
ツッコミ 「なんで舞台上に自動ドアあんだよ!」
ボケ 「まずは自己紹介させてください!
こいつがスーパーのバイトの面接に来たと思ってる学生役で、
僕が、こいつを万引き犯だと思ってるスーパーの店長です」
ツッコミ 「それすれ違いコントの設定だから!
本当に漫才できる?」
ボケ 「できるよ!早く振って来いよ!」
ツッコミ 「じゃあやるよ!
えー、最近、タクシーに乗ってたら運転手さんが急に変な話してきてさ。
どう返せばいいかわかんなかったんだよね」
ボケ 「そうなんだ。じゃあどう返せばいいか俺が教えてあげるよ。
俺が客やるから、お前タクシー運転手やって」
ツッコミ 「わかった」
ボケ、全速力で袖に走っていく。
ツッコミ 「え?どこ行くの?タクシーやるよ」
ボケ、パイプ椅子を2脚抱えて帰ってくる
ツッコミ 「いや、パイプ椅子実際にいらないから!
立ちっぱでいいから!」」
ボケ 「え!?でも椅子ないとタクシー運転できないし、お前乗ってこれないよ!」
ツッコミ 「漫才って基本小道具使わないから!」
ボケ 「そうだよな。
小道具なんかなくたって、世界観が伝えられるのが一流の芸人だよな」
ツッコミ 「もうコント師を通り越して、演劇の領域にいってるから!
ゴメン、漫才コントやろうとしたのが悪かったな。
じゃあ、コレはどうだろう。
俺が今から10回クイズ出すから、お前答えてよ」
ボケ 「わかった」
ツッコミ 「じゃあ、『ピザ』って10回言って」
ボケ 「ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ」
ツッコミ 「(ヒジを指さして)ココは?」
ボケ 「ヒザ」
ツッコミ 「ブッブー、そこはヒジでしたー」
舞台が暗転して、ボケにスポットライトが当たる
ボケ 「みなさん、ご覧になりましたか?」
ツッコミ 「え、なんで照明消えんの?何コレ?」
ボケ 「いま彼は、私のことを卑怯な手を使い、騙し、笑いものにしました。
ですが、私は彼のことを嫌いになったりはしません。
それはなぜでしょう」
素敵なBGMが流れる
ツッコミ 「なんか流れてきた!なにこの世界観!」
ボケ 「私が彼を嫌いにならない理由、それは、彼が私の相方だからです!
楽しい時には共に笑い、悲しい時には共に涙を流す。
この先の運命を共にした、世界でたった一人の相方だからです」
ツッコミ 「お、おまえ・・・」
ボケ 「彼とはこの先、幾度となく衝突するでしょう。
ですが、それを乗り切って、私たちはこれからも輝いていきます。
輝き続けます。そう、この舞台の上で」
BGMが消え、照明が普通に戻る
ボケ 「あのさ」
ツッコミ 「なに?」
ボケ 「漫才やってみたけどさ」
ツッコミ 「うん」
ボケ 「俺やっぱりコントがいいわ」
ツッコミ 「いい加減にしろ」