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回想(1)

この世界とは・・・魔法とは・・・そして・・・


  ◇ ◇ 回想(魔法) ◇ ◇


それから、『魔法』という力を自覚した私たちは、異世界に放り出されたという現実も忘れて、子供のように何が出来るのかを確かめあった。


 まずは、火。


「普通の火、だね。何かを燃やしてる感じじゃないけど。

それに出してる手のひらは熱くない、

けど、手をかざすと普通に熱いね。」


 続いて、水。


「なんだか不思議ね。手から湧きだしてくる。」

そう言って彼女はその手のひらに鼻を近づけていく。

「匂いはしないね。」


 つぎに、草花に触れてみた。

「わっ!、わっ!」

なんと、『綺麗だね』というような思いを込めるとまだ固い蕾が膨らみ、花が咲いたのだ。


私達は、こんな厳しい状況に置かれていることも忘れて、一日中『初めての魔法使い』を一緒に楽しんだのだった。


・・・


「ね、家ってどうやって建てるんだっけ?」

「基礎を作って、間取りを決めて、柱を立てて、そんな感じ?」


「あはっ、なんだかワクワクして来たね。

 家を建てたら、やっぱりベッドとお風呂が最初よね?」

「ちょっとまって、お風呂や木のベッドはともかく、布団とかの織物は少し時間がかるんじゃない?」


「あ。そっか、繊維から紡いでいかなきゃ。

 そうなると、服、着替えも結構時間かかるかな。」

「うん。着てるものを参考にしていろいろやってみよう。」


・・・

   ・・・

      ・・・


 二人であれこれ話し合い、どんな家にするのか、どんな間取りにするのか、そして・・・寝室はやっぱりもめる要素はなかった。



食事は、最初の一日はこの森に生る木の実を調べて食べていたのだけど、それじゃすぐに無くなるからと、草花から創り出してみることにした。まだ小さな実を付けた枝にに魔力を流して見たところ、それはすぐに熟して食べごろになったのだが、二人で顔を見合わせて『なんだか気が咎めるね』という事でやめることにした。


 あちらにいた頃は、食べられるものかそうでないのかなんて全く分からなかったのだが、魔法のせいなのかこちらでは害になる要素が分かったし、それを取り除くことも難しくなかった。


はじめの二日はただの草むらに二人まるまって眠り、

その間に家を建て、

ついで家具を作り、

衣類を織り、

殆どのものを覚えたての魔法を使って賄っていった。


・・・


そうして一月ほどもすると、どうやらこの世界の魔法の概念は、元いた地球の『五行』と同じような考え方なのだなと分かってきた。また、その構造についての知識があるものや、現物があるものなら構造をトレースして作り出せると言う事も分かった。


魔法とはなんと便利なものなのか。


 ・・・そして、さらに月日は過ぎていった。



  ◇ ◇ 回想(家庭) ◇ ◇


 私はもともと彼女が好きだった。

綺麗で、淑やかで、誰に対しても分け隔てもせず、かといって口数が多い訳でもなく、よく図書館で本を読むその姿は私の癒しだった。


だが、彼女は私のことをどう思っていたのか?それは分からない。


しかし、お互いがお互いしかいない、おいそれと外にも出歩けないと言うこの状況下では、こうなってしまう事は『生物』としてしょうがなかったのかもしれない。


 たとえ外に出られなくても、毎日が幸せで幸せで、幸せ過ぎてこの後にどんなことが起きるんだろう、と不安にすらなった。


そして、私達はすぐに子供を授かった。


上の男の子をひびき、下の女の子をみやびと名付けた。

二人の名前とも柴杏さんの希望だったし、私もとてもきれいな名前だと大賛成した。


この限られた状況の中でも子供たちはすくすくと成長し、その姿に私たちは喜び、そして安堵した。

『もっと遠くへ行きたい』、

『どうしてここから出てはいけないのか』、

そんな風に問い詰められたら何と答えようか、一時期はとても悩んでいたものだが、この子たちがそう言って来る事はとうとう一度もなかった。


さて、驚いたことに、当時身に着けていたものはそのまま流されており、スマホもその一つだった。

魔法で構造をトレースしてみると、それがそのまま理解できた。

流されて以降、イヤに頭の中がクリアーになっていると感じてはいたが、こんな精密機械の構造まで理解できるとはさすがに驚いたものだった。


こんな物さえ造る事が出来るようだと分かると、暇を見つけては地面を掘り、素材を集めていった。

初めの頃は1㎞程しか惚れなかった地面も、魔力が上がるに従ってかどんどん深くまで掘れるようになり、あっという間に10㎞程まで掘れるようになった。


『魔法』の気づきからその使い方を覚え、満足いくレベルになるまでにはおよそ1年半を要し、自分達でもまずまず一人前かな・・・などと納得すると、いよいよ森の外への興味は強まった。


そして、子供たちが3歳になった頃、言い含めておけば留守をしても大丈夫だと判断した私たちは、ついに外へ踏み出してみようと話し合ったのだった。


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