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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第七章  『導く者の居ない世界へ』
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「仲間……だと?」

 

 章を跨ぎ、回想で一話挟んだにも関わらず、舞台はまた戦場に戻る。

 

 イーグル、というか私、というか竜魔王は、アヤト君と手を繋いだまま硬直していた。

 

「そうだよ。僕らはもう、仲間だ!」

 

 私は張り詰めていた気を緩め、まとめは他の人に任せる事にした。

 

「そ、そんな……竜魔王を仲間になど……?」

 

「ルイ? どうかな?」

 

「まさかだよ……確かに、仲間になっている」

 

 魔女のルナだって仲間に出来たしね。実はマキナさんや、ヨルシゲも仲間になってる。ヨルシゲはルイに見えはしないけど、ザリガニに攻撃してみてダメージ無かったからパーティーメンバーになっているのが分かったんだ。

 

「オラァアッ‼︎」

 

 イーグルが竜魔王の身体でアヤト君を殴り付けた。

 

「仲間同士の攻撃は、無効になる」

 

 アヤト君が、竜魔王に説明した。

 

「馬鹿にするな‼︎ そんな事は知っている。これで、勝ったつもりか⁉︎ そうだ!」

 

 竜魔王は走り、リッカの手を掴んだ。

 

「へっ?」

 

「コイツがどうなっても良いのか⁉︎ 人質だよ‼︎ 助けて欲しければ、今すぐわたくしをパーティーから外せ‼︎」

 

 うわっ、最低……イーグルは、カラクリを知らない。

 

「プッ、フフッ! ピエロみたい!」

 

 リッカがたまらず吹き出した。

 

「な、何を言っている……?」

 

「ここに居るみんな、全員一つのパーティーなんです。リッカにも、りゅーちゃんの攻撃効きませんから!」

 

「何ィッ⁉︎」

 

 そりゃ驚くよね? しかも、りゅーちゃんとか言われてるし……

 

「呪いに掛けられている村人達は隔離している。君の攻撃はもう、僕達には通じない。それと同じ様に、僕達の攻撃も君には届かない。争う事なんか諦めて、僕達と共に生きるんだ‼︎」

 

 大きな戦があるからと、決まった言葉しか喋れなくてパーティーメンバーに出来ない村人達は隔離していた。本当に、こうなる事を予期してたんじゃないかと思えてくる。そのくらい、準備していたものが綺麗にはまった感覚だ。

 

「今までみたいに、地面への攻撃を‼︎」

 

 イーグルは知らないのか?

 

「無駄だよ。それも試してみたんだ! ノエルが大槌で地面を抉り、僕達が受けてみた。吹き飛ばされはしたけどノーダメージだった」

 

 ルナの絶対防御とは仕様が違うみたいだった。仲間からの攻撃は、全てが無効になる。

 

「まぁ、おかげでルナには、何の長所も無くなりましたけどね」

 

 あっ、ルナが不貞腐れちゃった。

 

「今まで、ずっとぼく達を守って来てくれたじゃないか? そろそろ、肩の荷を下ろして良いんじゃないかな?」

 

 カイト……そのセリフ、アヤト君が言うまで待てなかったかな?

 

「そうか……そこまで知っていたのか……ブラフで優位に事を運べないものかと画策してみたが、もう終わりの様だ。お前達、よくやってくれたな」

 

 竜魔王が言った。

 

「あれ? 君は、途中で消えてしまった竜魔王じゃないか⁉︎」

 

 えっ? そうなの? そういや、もう一人居るとか言ってなかったっけ? 途中からすっかり忘れてたわ!

 

(メミさん? 流石ですね。やはり、魔王を倒すのはあなた、いや、あなたとそのパーティーだと信じていましたよ?)

 

 はっ?

 

(イーグル? なに急に? 今更そんな褒められても嬉しくもないし。まだ何か企んでるの⁉︎)

 

(えっ? いや、本当に……もう良いんですよね神⁉︎)

 

(神? 何言って……)

 

(良い良い‼︎ メミよ! 上出来じゃ‼︎ まさか一周目でクリアするとは思って無かったわい‼︎)

 

(はっ?)

 

 これって……まさか、神?

 

(メミさん? 落ち着いて、聞いて下さいね?)

 

(神だよね? まさかだけどさ? これって、仕組まれた事、茶番だったとか言わないよね?)

 

(えっ? 怒っておるのか? わ、わしはただ! 徳無精を更生させる為に⁉︎)

 

(はっ? ……サイコパスかテメェこのヤロォ⁉︎ 顔出せや? みんなでボッコボコにしてやるから顔出せや⁉︎)

 

(お、落ち着くのじゃ⁉︎ 取り敢えず、締め括るから!)

 

(アァァッ⁉︎)

 

「お前達と出会えて、良かった。私は、消えるとしよう」

 

 神なのか? 竜魔王がイケボでアヤト君達に言った。

 

(何テメェが締め括ってんだよ⁉︎ 何するつもりなんだよ⁉︎)

 

(お、おぬし⁉︎ ずっと言葉使い荒いぞ⁉︎ 神に向かって——)

 

(あっ! ちょっと黙って⁉︎ アヤト君が何か言いそう!)

 

(う、うむ……)

 

「消えるって……? ちょっと待ってよ? 君は……まだ君はその中に居るの⁉︎」

 

 誰に話し掛けてるの?

 

「君とは?」

 

 神? お前が答えるのかよ? 少なくともお前じゃねぇから出しゃばんなよ。

 

「僕と……握手をしてくれた君だよ」

 

 あっ、私だ! はいはーい! あれっ?

 

「悪いな。時間切れじゃ」

 

 急に時間切れ⁉︎ ちょっとくらい良いじゃん‼︎ さっきまで必死過ぎてアヤト君の言葉ちゃんと聞けて無かったんだからさ!

 

「どうしても、お礼を言いたいんだ……」

 

 ほらぁ! ちょっとくらい時間あるでしょ? ってか時間無いって何に追われてるの神?

 

「また、機会を設けてやる。おぬし、気付いておったのじゃろ?」

 

 何言ってんのジジイ?

 

「それは……?」

 

「さらばじゃ‼︎」

 

 あれ? 何か私、ってか竜魔王光ってない? 何が起こるの? ハァッ⁉︎

 

 私は気が付くと、ナキとミーヤの傍に居た。神と側近さんが目の前に居て、竜魔王が以前の竜王の姿に戻っていた。

 

「あっ! 竜魔王が竜王の姿に戻ってる……」

 

 アヤト君が言った。

 

「でもちゃんと、パーティーメンバーのままだよ」

 

 ルイが言った。

 

「終わった……って事で良いんだよな?」

 

 トキオがみんなに質問した。

 

「ルイ? 竜王は元々お前の仲間だろ? 何か言ってやれよ?」

 

 ザリガニがルイに言った。めっちゃ肩並べて喋ってるな? 最初はめっちゃビビってた癖に。

 

「竜王? 不甲斐ない主人でごめん……ボクは、君の力を自分の力だと勘違いして、強くなった気でいたんだ。今更だと思う。でも……ボクも、アヤトとヨルシゲの様に、君と友達として接していきたいんだ‼︎」

 

「ガルゥゥゥゥ、ルゥゥゥゥゥウ!」

 

 竜王が、ルイの傍で顎を地面に着けた。

 

「ルイ様、戸惑わないで? アタシは知ってます。戦闘の時は、悪い顔して竜王に命令してたけど、普段は毛繕いしてあげたり、頭を撫でてあげてたじゃないですか? あの時の様に、接してあげれば良いんですよ?」

 

 ノエルが、悪い顔でとか嫌味も交えつつ、ルイと竜王の仲を取り持った。

 

「竜王……ごめん、ごめんなさい……」

 

 うわっ、ルイ泣いてんじゃん。ルイは泣きながら、竜王の頭を撫でていた。竜王は、嬉しそうに目を閉じ、尻尾を振っていた。

 

「もう、争いなんて起こらない世界で暮らしたい……」

 

 振り絞る様なアヤト君の声は、みんなに伝わったのかな?

 

「俺達だけでも、争いの無い世界にする事を誓おうぜ」

 

 トキオ、あんたがそれを言うのか?

 

「そうだね」

 

「もう争いは懲り懲りだぜ」

 

 カイトとザリガニが言った。他のみんなも何か言っていたけど、同じ様な内容だったので割愛した。

 

「ルナは、本当は無理だと思ってました。竜魔王を殺さず、この世界を救うなんて。でも、アヤトはやってのけました! 流石です! 自分が愚かだと思いました‼︎ 諦め無いあなたに、あなたの事を、好きになって良かったって思いました!」

 

 私も諦めてたわ。絶対アヤト君を説得しないと戦いは終わらないと思ってたからね。

 

「違うよ。今回は、たまたま上手く行っただけだ。僕だって途中で、竜魔王を殺さなければ終わらないって思ったよ? 過大評価は止めてくれ」

 

 あの時か? 魔斬ノ剣を手にしたあの時。にしても上手く行ったんだし、ルナが、好きになって良かった、とか加藤いづみかよ! と思う程ちょっとこそばゆい事言ってくれたんだから素直に受け入れてやりなよ?

 

「過大評価って、受け取っちゃうんですか?」

 

「みんなが言う様に、竜魔王を殺していれば、怪我人の数は減っていたと思う。僕は、自分の意見を通した事が、正しい事だったのかって、まだ、分からないから」

 

「アヤト?」

 

 ルイがアヤト君の前まで歩き、右手を差し出した。

 

「ルイ……?」

 

「アヤトのおかげで、竜王が戻って来た。君のおかげなんだ! ありがとうアヤト‼︎」

 

「うん……」

 

 アヤト君がルイと握手をした。何か言いたげではあったけれど、みんなの異様な盛り上がりに、アヤト君もそれ以上言葉を繋がなかった。

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