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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第六章  『竜魔王討伐戦』
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37  竜魔王討伐戦㉔  繋ぐ手と手

 37  竜魔王討伐戦㉔  繋ぐ手と手

 

 

 いつの間にか、辺りは真っ暗な闇に覆われていた。さっきまでは、竜魔王・改の創り出していた焔でわりかし明るかったのだが、先程その焔を全て消した事で、灯りは無くなってしまった。

 

 月と、満天の星の光のおかげで、みんなの姿を認識出来ていた。

 

「何してるの⁉︎ プランCなんて、本当は無いんでしょ⁉︎」

 

 竜魔王の中の私がアヤト君に問い掛けた。

 

「クククッ、これからどうするつもりですか?」

 

 竜魔王の中のイーグルが、アヤト君に問い掛けた。

 

「今のではっきり分かった。君の中に、幾つかの人格を感じる。前の竜魔王は居なくなってしまったのか? 今は、僕に危害を加えたい君と、自分を殺させて僕達を助けたい君が居る」

 

「はっ? またそんなスピリチュアルな事言ってるの?」

 

 まぁ、当たってるけど……

 

「またって? 僕達を助けたい君は、僕の事を……ずっと見守ってくれてたんだよね⁉︎」

 

 えっ⁉︎ なに急に⁉︎ 言い方がそんな風に聞こえちゃったのかな? ヤバっ! パートナーに私の存在気付かれたら私消えちゃうじゃん⁉︎ 初期の設定ちゃんと忘れて無いからね!

 

「ちょっと……何がしたいの⁉︎ 出来ないんだったら、さっさと他の人にその剣を渡しなよ‼︎」

 

「そんな事、出来ない……」

 

「わがままばっか言って‼︎ 私だって……」

 

「嫌なんだろ?」

 

「……だからって、やめる事なんか出来ない」

 

 私のわがままのせいで、大切な仲間を死なせてしまったから。

 

「その言葉が聞けて良かった。君を、誰にも殺させはしない‼︎ 君は! 僕が守る‼︎ 作戦があるんだ! 僕に、任せてくれないか?」

 

「作戦って……」

 

 なに? 本当にあるの?

 

「よく気付きましたねぇ? 別に隠す必要も無いでしょう。そうです。この竜魔王の中には今、二つの人格が共存しています。この世界を壊したいわたくしと、あなた達を救いたい私。この世界を壊したいわたくしは、いつ暴走してしまってもおかしく無いのです‼︎」

 

 イーグルがしゃしゃり出て来た。

 

「僕達を救いたい君に聞きたい。ほんの少しだけ、さっきみたいにその言動を奪う事は出来る?」

 

 それって私の事か? 作戦って何よ⁉︎ イーグルには聞かれたく無いって事かな?

 

「多分、出来ると思う……」

 

「よし!」

 

「ちょっと待って⁉︎ 分かった! 君を信じるよ? でも、こんな大事な場面なんだよ? 普通に私を殺せば世界は救われるのに、そんな不確かなプランで動いて良い訳⁉︎」

 

「分かった! みんなに聞いてみよう!」

 

「あっ」

 

 割と長々喋っていたおかげで、散り散りになっていたプレイヤー達がこの場に揃い踏みしていた。

 

「みんな‼︎ 僕は、プランCで行きたいんだ‼︎ 作戦の詳細を説明出来ないけど、僕に、お願いします。僕に、任せてくれないか⁉︎」

 

 アヤト君が後ろを振り返り、仲間達に懇願した。

 

 あの? 一応私竜魔王なんですけど? ラスボスに背中向けちゃってるんですけど? 君らしいよ。何故私の事をそんなに信頼出来る訳? 勿論私は君の事をよく知っているけど、君にとっては初めましてだよね? 本当、私を殺せば簡単に世界を救えたのにさ……でも、ありがとね。まぁ、ただ単に誰も殺したく無かっただけなんだろうけど、嬉しかったよ? 私を、誰にも殺させはしないって、僕が守るって……言ってくれて、嬉しかったよ? 私にも優しくしてくれて、本当に嬉しかったんだよ?

 

 でも……ザリガニとカイトとルナは大丈夫だろうけど、他の人は、簡単に納得出来ないと思うよ?

 

 アヤト君の懇願に、マモル、ノエル、ユウヤ、ユキナ、ゴロウ、リッカ、トキオ、ルイが応えた。

 

「勿論ですぜ兄貴ィ‼︎」

 

「あっ、これ大丈夫なやつだわ! ずっとその愚直さに騙されて来たから分かっちゃうんだよなぁ。頼んだからね‼︎」

 

「青春だな! もっとやれぇい‼︎」

 

「アヤト、任せたからね‼︎」

 

「が、頑張れ‼︎ アヤト‼︎」

 

「アヤトさん! 精一杯、応援しますからね! 負けるなぁ‼︎」

 

「んだよくだらねぇ。仲良しこよしになっちまったなぁ? ……ってか、確認なんか取ってんじゃねぇよ! 敵に背中見せてるぞ? お前の、好きにやりゃ良いんだよ‼︎」

 

「アヤト? ボク達の中で、君に異を唱える者なんていないよ? 確かに君は、強く無い。武力に関してだよ? ってか、戦ってる所見た事無い気もするけど……でも、一番ボクらからの信頼を得ている。君の優しさに触れた者は、どうしても君を信じたくなってしまうんだ! その結果がどうであろうと、君を、信じたくなるんだよ。アヤト、任せた‼︎」

 

 良い話しかもしんないけど、こっちはイーグル抑え込んでんだよ‼︎ 何一人一人この世界のまとめみたいな事言ってんの⁉︎ プランあるんだよね⁉︎ 早くやってくんない⁉︎ 良かったねアヤト君……みたいに感慨深くも一瞬なったけど、最終局面なんだよ‼︎

 

 私もギリギリで持ち堪えてるの‼︎ 分かるかなぁ⁉︎ 例えるなら、出勤時間に間に合うギリギリの電車に乗ったとするじゃない? 勤務先の最寄り駅まで電車で四十分掛かるとするじゃない? 二駅目で強烈な便意を催したらどう? 地獄じゃない⁉︎ 今ね、それよ。感覚はそれ! でも便意だと大体二分毎に波が来るでしょ? 違うの。二十秒毎くらいに大きな波来てるの。ウゥ、ウゥ、ってなってるんだけど、とっても我慢してるの。

 

 だって現世では、途中で止まる駅で降りてトイレ行こうかな? ってなったりしても、結構踏ん張っちゃったりするけど、別に途中で降りても遅刻になるだけじゃん? 今回違うから。途中で降りたら、この世界終わるから‼︎ 戦犯になっちゃうから‼︎ ってかさぁルイ⁉︎ あんたが一番長かったんだからね⁉︎ やたらゆっくり喋るもんだから二回大きな波来たわ‼︎ でも……良い事言ってくれてありがとう。耐えれたからね! やっと、苦しみから解放される……

 

「ザリガニ? カイト? ルナ? 君達は、どうかな……?」

 

 マジかよ⁉︎ そこ三人は聞かなくても大丈夫でしょ⁉︎ ヤバッ……もうトイレ目の前だって思って気が緩んだんだ。

 

 トイレのドアは全て閉じられ、鍵が掛かっていたんだ。

 

「えっ? あぁ、おう!」

 

「ぼく達には聞かなくて良いよ!」

 

「ですね。さっきからそう言ってるでしょ?」

 

 あっ! 良かった‼︎ すぐ水流す音聞こえて来た! めっちゃ短かったし我慢出来そうだよ! ……それならさ? もうちょっとくらい私、踏ん張れるよ?

 

「……ヨルシゲ? 君には……聞かなくても分かってしまうよ」

 

 そりゃやっぱり声掛けてあげないと! 一番の、友達だもんね?

 

「バウ! バウゥゥゥゥゥゥゥゥウ‼︎」

 

 これは私にも分かる! めっちゃ喜んでる! ……あれ? でもこんだけヨルシゲの気持ちが分かるんだったら、今まで私がヨルシゲを通して言ってた時とか、ヨルシゲの本心じゃ無いって分かる筈だよね? 

 

 ……今考えても見当付かないや。終わってから考えるか?

 

「竜魔王、準備は整った!」

 

 アヤト君が振り返り言った。

 

「やっとこっち向いたね?」

 

(クククッ、一応言っておきますけど、わたくしも地獄の苦しみだったのですよ?)

 

 イーグル? そうだったのか⁉︎ じゃあ引いて様子見といてよ‼︎ ってか同じじゃ無いから! そっちはいつだって攻撃やめれた筈でしょ? 自業自得なんだよ!

 

「いいかな?」

 

 いや、知らんし。作戦知らない内は何の心の準備も出来んし!

 

「まぁ、やってみなよ……」

 

 意を決して、アヤト君が右手を差し出して来た。

 

「あっ……」

 

 そういう事か‼︎ ちょっと! 誰にもそんな作戦言って無かったけど、もしかして、君は初めからこうする為に、パーティーを一つにしたんじゃ無いの⁉︎

 

「何をしている?」

 

 イーグルがアヤト君に言った。

 

「竜魔王! 僕達の、仲間になるんだ‼︎」

 

「はっ?」

 

「ふっ?」

 

「ほっ?」

 

 カップスターか⁉︎ 各方面からバリエーション豊かな、はっ? ふっ? ほっ? が飛んで来た。イーグルはアヤト君のぶっ飛んだ発言に虚を衝かれたのだろう。意識が散漫になった。

 

 私は、ゆっくりと右手を動かし、アヤト君の右手をしっかりと握って言った。

 

「うん! 喜んで‼︎」

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