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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第六章  『竜魔王討伐戦』
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36  竜魔王討伐戦㉓  僕が一番君の事を知ってる

 36  竜魔王討伐戦㉓  僕が一番君の事を知ってる

 

 

 私は名探偵では無いのだけれど、いくつかの謎を紐解いていこう。

 

 まず、イーグルに協力者が居たのかを考えてみよう。私は、NOだと思う。もし居たとしたらヤバかった。イーグルをマインドブレイクに掛けた時に、何かしらアクションをして来た筈だから。

 

 次に、イーグルは戦況に応じてシステムを変えれたのではないか? これも私の見解ではNOだ。そんな事が可能なら、イーグルならもっと優位に立ち回れる。それに、手にパソコンさえも持っていない状態でハッキングとか出来るんなら、まさに神だよ。イーグルは、この最終決戦、どうしても自身が赴いて決着を付けたかったのだろう。本物が影にずっと隠れていたら、私達に勝機は無かった。

 

 最後に、イーグルの最後の策、フュージョンには条件があったのではないか? もしかしてフュージョンも私使えるんじゃない? と思った時に、いくつかの疑問が残った。

 

 まず一つ目。私が生き残る可能性に気付けたのは、イーグルが瀕死の状態から竜魔王とフュージョンして傷が治っていた事。それを思い出して、私も助かるかも? って思った。でも、あの時の状況を思い出すと、イーグルはわざわざ、傷付いた身体を引き摺りながら竜魔王の元へ必死で近付いて行った。右手を翳し、魔法の言葉を唱えるだけではフュージョン出来無いのではないかと考えた。

 

 二つ目の疑問。魔法はそもそも、右手を翳して念じれば使えるものだけじゃ無い。リンクは、相手の精霊の肩に触れれば発動するし、魔法発動の条件を設定する事が出来たのかもしれない。

 

 三つ目。何故竜魔王・改はマイのドレインが効かなかったのか? そして、何故魔斬ノ剣でマイに、私に攻撃出来たのか? 正直それは意味分かんない。竜魔王と融合した事で仕様が変わったという事なのだろう。こんな状況に陥った時の為に、そういう設定に変えていたのかもしれない。

 

 分からない事が多すぎる中で、分かる事だけを整理したんだ。イーグルと私達の、魔法の条件は同じ。リナの受け売りだけどね。フュージョンすると傷が癒える。フュージョンする時は、相手に手を触れないといけない。

 

 その策を思い付いた時、それならナキかミーヤとフュージョンすれば傷治るかも? とも思った。でも、後が続かない。私達が目の前でフュージョンすれば、イーグルは必ず警戒態勢に入ると思った。だから賭けてみた。上手くいけば、竜魔王とイーグルを内側から操作出来ると思ったから。

 

「メ、メミ……? 竜魔王の左腕、再生されたな……」

 

「作戦は、成功したんですかね? 心なしか竜魔王も、ちょっとフェミニンになってる気がしますし……」

 

「ど、どういう事なんだ⁉︎ なんなんだこれは!」

 

 意外と周りの声聞こえるもんだな? ナキ、ミーヤ、そしてアヤト君? 私、こんな事になるなんて想像も付かなかったよ? この世界の始まりの時、側近さんに息巻いて、魔王なんてボッコボコにしてやるとか言ってたんだよ? それが、側近さんと融合して魔王になって、みんなから殺される役になるなんて、思いもよらなかったよ?

 

(あっ……メミさん? やってくれましたね?)

 

 何っ⁉︎ 頭の中に直接話し掛けられてる感じ! 同じ身体の中で会話してるって事?

 

(メミかっ⁉︎ あっ、いかん……)

 

 はっ? 今の誰?

 

(ちょっ⁉︎ 取り敢えず、メミさん流石ですね? まさか、最後の策をこんな形で攻略してくるなんて、夢にも思いませんでしたよ)

 

(イーグルなの? ってかさっきの誰? なんかここ、声色識別し辛いんだよ! この体内に、仲間潜ませてた的な⁉︎)

 

 リナの読み解き過ぎうつっちゃったかな? まさか、そんな訳……

 

(クククッ、ご名答ですね‼︎)

 

 マジかよ‼︎ どんだけ策練ってんだよコイツ⁉︎

 

(じゃあ! 私の思い通りにこの身体動かせないって事⁉︎)

 

(さぁ? どうでしょう?)

 

 何そのリアクション⁉︎ でも……まぁやってみっか! アクションを、起こせ!

 

「ウラァァァァァァァァアッ‼︎」

 

 私はただ、願ったんだ。竜魔王・改が創り出した、全ての焔が消える様にって。

 

「あっ!」

 

「焔が……」

 

 ナキ、ミーヤ、何言ってんの? そんな簡単に消える訳……消えてるし……しかも今、ウラァァっとかって声に出てなかった⁉︎

 

 空を覆っていた焔の元気玉も消え、雲が散ったおかげで雨も降り止んでいた。

 

「アヤト!」

 

「アヤト‼︎」

 

「アヤトさん」

 

「アヤト」

 

「アヤト……」

 

「アヤト?」

 

「アヤト——」

 

「アヤトの兄貴ィ⁉︎」

 

 ルイ、トキオ、リッカ、ゴロウ、ユキナ、ユウヤ、ノエル、マモルの声が聞こえた。

 

 焔が消えた事で、私が、竜魔王が、力を使い切ったって思ったのかな? 今がチャンスだから、息の根を止めろって言いたいんだよね?

 

 アヤト君は、みんなの声援に促され、竜魔王・改が私と融合した時に落としてしまった魔斬ノ剣を拾い、両手で握り締めた。

 

「えっ? ダメ! メミ⁉︎」

 

「嘘ですこんなの⁉︎ こんな、こんな結末……誰が望むんですか⁉︎」

 

(ナキさんとミーヤさんでしたかね? お二人は、ああ言ってますけど?)

 

(側近さん。本当はね? フュージョンする時に気付いてたんだ。融合した後の、最善のこの世界の終わらせ方)

 

(それは……?)

 

(私が、この身体を支配して、動かない様にして、誰かに殺してもらう事)

 

(あの時にそこまで……悪魔の様な発想しますね、メミさん)

 

(あなたに言われたく無い! まぁ、アヤト君じゃ無い方が良かったけど)

 

(やはり、辛いですか?)

 

(パートナーだったから辛いとかじゃ無いよ? ただ、アヤト君は、きっと引き摺ってしまうよ。とても、心の優しい人だから)

 

(ここまで来てアヤトの為、ですか……それなら、抗えば良いじゃないですか?)

 

(駄目。その剣を持った以上、その役目を他の人に渡すのは、ただ逃げただけなんだ)

 

(良いんですか? あなたは、耐えられるんですか?)

 

(やめてよ。今更同情してくんのとか)

 

(そんなつもりじゃ、無いんですけどね)

 

 何か言いたげだなぁ? まぁ良い。ほら! アヤト君? 私、ってか竜魔王のボディガラ空きだよ! その剣で、この心臓を、貫いて……

 

 私を、殺して?

 

 アヤト君が魔斬ノ剣を持って私と、竜魔王と睨み合った。

 

「僕のせいで、僕のせいで、僕のせいで、僕のせいで……」

 

 自分のせいで、圧倒的な優位から形勢が逆転した。だから、その剣を手に取ったんだね?

 

 あれ? なんだろう、この感情。私、大丈夫かな? アヤト君に刺された時、泣かないでいられるのかな? 大好きだった人に殺された経験なんて無いからさ、心が、どうなっちゃうか分かんないよ。駄目だよ? 絶対泣いたらダメなんだよ? 最後まで、悪役を演じ切らなくちゃ。アヤト君の罪悪感が、少しでも和らぐ様に。優しい君が、ルナと幸せに暮らしていける様に。

 

 ……やめて? 何で君が泣くの? 泣きたいのはこっちだよ。剣を持つ手が、プルプル震えてるよ? 情け無いな。格好悪いよ……ごめん、やっぱり。やめて欲しいな……ブレッブレでごめんね……この世界がどうなっても、私、やっぱり君には……

 

 誰かを殺して欲しくなんか無い。私が大好きだった、優しいままの君で居て欲しい。

 

 ……ダメだよ。何言ってんの? 私と君のせいで、こんな危機的状況に陥ってるんだよ。落とし前、つけないと。

 

「アヤト⁉︎ やめろ!」

 

 ザリガニ! 近くまで来ていたのか? 必死で全然気付かなかった。カイトとルナも居る。ってか、やめろってなんで?

 

「似合わない事するなよ!」

 

 カイトまで……

 

「ほらぁ! もう剣なんか捨てて、竜魔王も何故か分かんないけど大人しくしてるんですから、プランAで行きましょ?」

 

 ちょっと……あんた達正気なの⁉︎ ブレブレな私も悪いけど、今殺ってくれないと、イーグルに何されるか分かんないんだよ⁉︎

 

「クハハァッ‼︎ 腰抜け共めぇ! 早くその剣を捨てろ‼︎」

 

 あっ、今のは私じゃ無いよ? イーグルが言ったんだ! 二人でこの身体取り合ってる感じだな!

 

「プランA? 私を懐柔する作戦か⁉︎ そんなもの聞き入れる訳が無いだろ? ここで殺さねば次は無いぞ‼︎」

 

 今のは私。

 

(ちょっとイーグル⁉︎ 余計な事言わないでよ‼︎)

 

(なんの圧ですかぁ⁉︎ わたくしだって死ぬかもしれないのだから、抗うでしょ?)

 

(……って事は、そうする以外策が無いって事?)

 

(そうですよ? わたくし、最後の策って言いましたよねぇ?)

 

(嘘くさっ‼︎ あなたの言葉もう信じらんないから‼︎ 何かこの身体の操作も私の方が出来てるし、早く降参しちゃえば良いのに!)

 

(信じられないなら何で聞いたんですか? それじゃあ降参しますよ? 大人しくしていますねぇ)

 

(クサッ! クッサ‼︎ 私今体内で鼻つまんでますー! だって嘘臭過ぎなんだもん‼︎ ちょっと黙ってなよ!)

 

(クククッ)

 

 なんだ? 何か狙ってんのか⁉︎

 

「僕は……どうしても、何があっても……誰かを殺めるなんて、出来ないんだよ……」

 

 うわぁ、はっきり言ったぁ。分かったよ。それじゃあ、他の人にトドメを刺してもらう作戦を考えるよ。分かってるの? まぁブレブレな自分も戒めてーの、君にも、ちゃんと言ってやらなきゃ。

 

「ねぇ⁉︎ 分かってるの? それは、他の誰かに自分のしたくない事を擦りつけてるだけなんだよ?」

 

「えっ? 君は……」

 

「誰もやりたく無い事を、やらなきゃいけない人が居るんだよ⁉︎」

 

「そんな事、させない‼︎」

 

「君に何が出来る⁉︎ プルプル震えて満足に剣を握る事さえ出来無いんじゃん⁉︎ 情け無い。みんな私を……竜魔王を君が殺してくれるのを待っているのに!」

 

「そんな事、みんな望んで無い!」

 

「これだから君は⁉︎ みんな思ってるよ。早く、諸悪の根源を成敗してって。駄目なの‼︎ 今しか無いかもしれないの‼︎ その両手で握ってる剣を私に突き刺せば良いんだよ⁉︎ 難しくもなんとも無い‼︎ 簡単な……簡単な事でしょ?」

 

「簡単なんかじゃ無い……君は、僕にそんな事をさせる人じゃ無い‼︎ 僕が、一番君の事を知ってる‼︎ 何か理由があるんだろ? じゃなきゃ、君がそんな事言う筈が無い‼︎」

 

 いや、マジ、意味不明なんだけど? 何で竜魔王の一番の理解者面してるの?

 

「君が、私の事を知ってる……?」

 

「だって君は……」

 

「ねぇ教えてよ……君が私の何を知ってる⁉︎ 私の事を、見てくれない癖に‼︎ 話しを聞いてもくれない癖に‼︎ 優しくしてくれない癖に‼︎」

 

「君は……傷付いていたんだね……そうか、みんな‼︎ プランCだ‼︎」

 

 アヤト君がみんなに聞こえる様に、大声で叫んだ。プランC? そんなの、作戦に無かったよね?

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