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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第六章  『竜魔王討伐戦』
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35  竜魔王討伐戦㉒  私が守ってあげなきゃ

 35  竜魔王討伐戦㉒  私が守ってあげなきゃ

 

 

「まだやりますかぁ?」

 

 竜魔王・改の目は、完全にキマっていた。

 

 リナ? マイ? 私、どうすれば……?

 

「ふざけるな! さっきから何を言ってるんだ? ちゃんと、話しを聞け‼︎」

 

 アヤト君にも竜魔王・改の声だけは聞こえているんだった……ねぇ聞いて? もう、無理だよ。私、心がもう。

 

「クククッ、もういいかな、殺しても」

 

「やめてくれよ。何が、楽しいんだ?」

 

「お前達の、絶望の表情を見るのが楽しいんだよ‼︎」

 

「もう、充分絶望している。許してくれ……」

 

「アヤト、あなた随分周りから信頼されているみたいですね? あなたを殺せば、他の奴等はもっと笑える顔になる」

 

「……終わりにしてくれ。僕で、終わりにしてくれ。頼むから、他のみんなは巻き込まないでくれ……」

 

 やめて……もう、やめてよ。

 

「ざんねぇぇぇぇぇん‼︎ もう止まれないんですよぉ‼︎ お前を殺す。クッ、クククックククククッ‼︎」

 

「あれ……君は、誰?」

 

 えっ?

 

「何を言っている? 竜魔王だ」

 

「……違う。さっきまで話していた竜魔王と、君は別人だ……」

 

 分かるの?

 

「時間稼ぎのつもりか?」

 

「分かるんだ。君と真剣に向き合ったから、さっきまでの君じゃ無い事が分かる」

 

「姿形が変わったからそう感じるだけだ。くだらん。命乞いでもした方がまだ賢いぞ?」

 

 口調はだいぶ竜魔王に寄せているみたいだけど、アヤト君には分かってしまうんだね。

 

「君とも、ちゃんと話しがしたい‼︎」

 

「まだ言うか?」

 

 竜魔王・改が、魔斬ノ剣を握り、アヤト君に詰め寄った。

 

「駄目ェッ‼︎」

 

 竜魔王・改の攻撃は、精霊にも通用する。マイが、身をもって教えてくれた。私は、アヤト君の元まで駆け出した。

 

「えっ……メミっ⁉︎」

 

 この身を呈せば、アヤト君を守れるかもしれない。

 

「死ねぇぇぇぇぇぇえっ‼︎」

 

「アヤト君‼︎」

 

 私は、アヤト君に覆い被さった。背中から激痛と共に、身体の中を剣が貫いていく感覚があった。その先に両手を待ち伏せた。下腹部から出て来た剣を両手で待ち構え、掴もうとした。グリップこそしたものの、六本程の指が切れて落ち、上手く力が入らなかった。

 

 もう、無理だと思った。守れないと思った。でも、アヤト君の身体に刺さる寸前に、その刃は勢いを失った。

 

「あっ、あっ……」

 

 アヤト君の顔を見てみた。めっちゃ近っ…… キョトンと、してるなぁ……

 

「何故……?」

 

 剣が止まったのか? そりゃ訳分かんないよね?

 

「メミ‼︎ 何してんだよ⁉︎」

 

 ナキやめて。叱らないで? 叱られるの嫌いなんだよ。最後、あなたとの思い出を、嫌な記憶で締め括りたくない。

 

「メミ⁉︎ 嫌、嫌ァァァァァァアッ‼︎」

 

 ミーヤ……キャラ突き通してよ。私は、メミチじゃなかったの?

 

「クククッ、お見事ですね。パートナーを、庇いますか?」

 

 イーグルが、私を貫いた剣を引き抜いた。

 

 ヤバッ‼︎ 血が、大量に噴き出してる。無理。無理無理もう無理‼︎ 意識薄れてる。

 

「なんで……なんでこんな事したの⁉︎」

 

 ナキ……それ、応えなきゃいけないかな? もう……死にそうなんだけど?

 

「こ、この子は……私が守ってあげなくちゃ……ルナと、結婚する約束した癖に、少し目を離すと、またすぐこうなっちゃうんだから。私が守ってあげなきゃ。私しか……私しかこの子を守ってあげれる人は居ないから……」

 

 アヤト君の目を見つめて言った。アヤト君の視線は、私の背後の竜魔王・改に向けられていた。

 

「もう、アヤト達にあたし達は必要無いって言ってた癖に……」

 

「ナキ……最後くらい、優しくしてよ?」

 

「メミ⁉︎ 嫌だよ……嫌だぁ‼︎」

 

「ミーヤ? キャラ崩壊してるよ?」

 

 もう、私が助からない事を確信しているのだろう。竜魔王・改は、攻撃の手を休めていた。

 

「竜魔王? 急に表情が……? 話しをしてくれる気になったのか?」

 

 アヤト君が問い掛けた。

 

「少し黙っていろ」

 

 竜魔王・改がアヤト君の言葉を制止した。

 

「最後ってなんだよ……」

 

「ナキ? これ、どう見ても助からないよね? 血がヤバいほど出てんだって」

 

「それでも……何かあんだろ⁉︎ 起死回生の策閃けよ‼︎ 頭の柔軟さで勝負するんじゃ無かったのかよ⁉︎」

 

「そ、そんな……こっからどうやって……? 頭回んないし、それ、鬼だよ……」

 

「死ぬなよ……」

 

 ナキ……

 

「諦めるなんて、らしく無い‼︎」

 

「ミーヤまで……諦めるってか、しょうがないとは、思えないかな?」

 

「嫌だ、嫌だ嫌だもん‼︎ 嫌だぁぁぁぁぁあ……」

 

 ミーヤ……

 

 まだ、こんなに死にそうな私にまだ、案を出せと言うのか……? マジ鬼なんだけど。

 

「ってか、どっちか私にドレイン掛けて? 二人共MP無いじゃん?」

 

「なにそれ?」

 

「メミが生き長らえる術があるとすれば、MPが絶対必要! 私達は受け取らない。最後まで希望を捨てない‼︎」

 

 えぇぇぇぇぇぇ……? 策なんて思い付かないよきっと‼︎

 

「クククッ、友情が悪い方向に働きましたね?」

 

 うるさいイーグル‼︎ 腹立つなぁ⁉︎ あんただってさっきまで瀕死だった癖に‼︎

 

 ………………あっ

 

「……ナキ? ミーヤ? 耳貸して?」

 

「えっ? なに?」

 

「どうしたの?」

 

 イーグルに聞かれたく無い。二人に、突如思い付いた策をこっそり伝えた。

 

「いや⁉︎ マジで言ってんの⁉︎」

 

「分かんない。無理かもしれない。でも、私もちゃんと助かる方法があるとしたら、それしか無いんだ。チャンスは一回しか無いと思う。最善を尽くしたい」

 

「マジ悪魔の様な発想しますね……? みぃ、若干引きました」

 

 引くなし‼︎ キャラ戻ってんな? さっきまでの方が可愛かったよ?

 

「クククッ、その状態からどんな策があるというのですか⁉︎ 面白い! 見せてもらおうじゃありませんか‼︎」

 

「どうしたんだ竜魔王⁉︎」

 

 アヤト君ちょっと黙ってて⁉︎ 今はまだ、私達のターンだからさ!

 

 ナキに右腕、ミーヤに左腕を肩に担いでもらい立ち上がった。

 

「えっ、ちょっヤバッ‼︎ 想像以上にキツい‼︎ しんどい‼︎ おろしておろして‼︎」

 

 痛ァァァ‼︎ めっちゃ血滴れてるし⁉︎ 切り口から内臓出ちゃうんじゃない⁉︎

 

「ここでおろしたらメミチもう立てないよ‼︎ 頑張れ‼︎」

 

 意識飛びそう……でも、確かにここで倒れたら、二度と立ち上がる事は出来ない。

 

「何が目的だ?」

 

 竜魔王・改はその意図に気付いていない‼︎ 散々私達を振り回しやがって⁉︎ よぉーし怒り湧いて来たわ‼︎ 行ける! ナキ⁉︎

 

 ナキの右肩をポンポンと叩いた。ナキは合図と共に、右手であさっての方向を指差しとぼけた顔をして言った。

 

「あっ、UFOだ!」

 

 合図出したらイーグルの意識を逸らしてって言ったけどそれは無いだろ⁉︎ 小学生レベルのフェイント掛けやがった‼︎

 

「UFOだと⁉︎」

 

 イーグルがナキの指さす方を見た。引っ掛かんのかよ……

 

 でも、今だ‼︎

 

「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ‼︎」

 

 ナキ⁉︎ 声出すなよ⁉︎ フェイント掛けた意味無いじゃん⁉︎ もう良い‼︎ 後は気合いだよ‼︎

 

 ナキとミーヤが、私を勢いよく竜魔王・改へ放り投げた。

 

「ウラァァァァァァァァアってアッツゥゥゥゥゥゥゥゥウ‼︎」

 

 灼熱の焔を纏ったその身体に、右手を突っ込んだ。

 

「なんだ⁉︎」

 

 竜魔王が気付いた! ってか熱ッッ‼︎ でも、届いた‼︎

 

 竜魔王・改の身体に右手が触れ、イーグルが唱えた言葉を真似して叫んだ。

 

「フュージョン‼︎」

 

「はっ?」

 

 成功した⁉︎ そりゃ呆気にも取られるってもんだよ。ざまぁみろ!

 

 竜魔王・改の身体が、見る見るうちに私の中へ取り込まれていった。

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