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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第六章  『竜魔王討伐戦』
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34  竜魔王討伐戦㉑  地獄

 34  竜魔王討伐戦㉑  地獄

 

 

「お前達、すぐに殺して……?」

 

 竜魔王・改が、左腕を斬り落としたユキナに目をやると、そこには大剣を振り上げたザリガニが居た。

 

「何故お前が⁉︎」

 

 意表を突かれたにも関わらず、竜魔王・改はその大剣を払いのけてみせた。

 

「流石だ。でも、一手読み遅れたね」

 

 背後から、カイトが魔斬ノ剣で一太刀入れた。

 

「何ィッ⁉︎」

 

 流石に次の一振りは空を切ったものの、竜魔王・改に大きなダメージを与えられた。

 

 私には、さっぱり訳が分からなかった。

 

「どういう事⁉︎」

 

 ナキとミーヤに聞いてみた。

 

「ザリガニとカイト君は竜魔王の攻撃で吹き飛ばされた後、念には念を入れてカメレオンブランケットで身を潜めてこっちに向かって来てたんです! まぁ、ポタルのおかげでその事知ってナキチにも伝えてたんですけどね。身を潜めながら、火焔無効の防具をユキナとリッカに渡し、包囲から抜けさせたんですよ!」

 

 ポタルそんな事まで教えに来てくれたの⁉︎ 精霊に超協力的な魔獣だな! ってか!

 

「ユキナとリッカが突然消えたのは⁉︎」

 

「二人が攻撃した後、カメレオンブランケットを渡して隠したんだよ!」

 

 そうか。だから私から見て、リッカとユキナが攻撃した後急に消えて、ザリガニとカイトが突然姿を現したのか!

 

「魔斬ノ剣は? 何でカイトが持ってるの?」

 

「まずユウヤ君とカイトはアヤトと接触してたんだよ。竜魔王が変化を始める時には傍に居て、いざという時の為に魔斬ノ剣はカイトに渡り、カイトが持っていた盾がアヤトに渡ってたんだ。ユウヤ君が大剣持ってるのは、竜魔王の左脚に刺さっていた大剣が、あの姿になった時には外れていたから拾ったんだよ」

 

 そうだったのか。ってか、ザリガニっていつも武器拾って使ってるよね。うちのパーティーって、まぁ今はもううちの元パーティーメンバーだな、一貫性の無い武器ばっか使ってるな。いや、ってかさ……

 

「なんで……? 二人は、私の事責めないの?」

 

 私のせいでこうなった事は、二人共分かってる筈なのに。

 

「はぁっ⁉︎ それはお門違いってもんだろ?」

 

「ですね」

 

 ……どういう事?

 

「私が……私のせいでこんな事になったんだよ⁉︎ 何で、何も言わないの?」

 

「ざけんなよ。まだお前は、一人ぼっちのつもりかよ⁉︎」

 

「ホント、いくら懐の広いみぃでも、その言葉は許せません‼︎」

 

「えっ……?」

 

「みぃは、メミチを絶対に一人きりにさせないって約束しました‼︎ 忘れちゃったんですか? 全ての罪は、三人で背負うんです‼︎」

 

「メミ? 生きてりゃ、間違う事もあるよ。でも、メミの言う事が間違ってたなんて事も思わないし、あたしは反対の意見を出したけど、最終的にあんたが正しいと思って受け入れたんだよ? だから、あたし達三人の総意の意見なんだよ。ってか、ちゃんと納得したいから反論したんだ! 言葉が荒くなってしまってマジごめんな‼︎ 心から、納得したかったからなんだ」

 

「ナキ……ミーヤ……」

 

「迷ってる時のメミはマジポンコツなんだよ‼︎ 焦んな、気負うな、落ち着いて、いつも通りやれ!」

 

「こんな無茶苦茶な世界なんです。殺された精霊が、生き返る術だってあるのかもしれません‼︎」

 

「……うん。分かった‼︎」

 

 ありがとうは、終わった後に言おう。

 

「糞っ、糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞クソォッ‼︎」

 

 竜魔王・改が取り乱しながら叫んだ。

 

「カイト‼︎」

 

「オッケーリーダー‼︎」

 

 ザリガニとカイトが同時に竜魔王・改に襲い掛かった。

 

「ヌオォォォォォォォォォォォオッ‼︎」

 

「はぁっ⁉︎」

 

「なにっ⁉︎」

 

 竜魔王・改は自身の周りに爆炎を纏わせ、その時に生じた風でザリガニとカイトを吹き飛ばした。

 

「余裕なツラしやがってぇ⁉︎ 全員殺してやる‼︎ 手加減はオワリダ‼︎」

 

 竜魔王・改が右手を空に上げた。

 

 なに? 元気玉でも作ってんの? みんなが空を見上げた。

 

 とても遠くの宙に一つの黒い玉が出来た。少しずつ、焔を纏い膨らんでいく。

 

「竜魔王……? 何をしている?」

 

 アヤト君が問い掛けた。

 

「お前達を全滅させる絶望の焔だ」

 

 マジ元気玉じゃん……どんどん膨らんでいく。今止めないとヤバい!

 

「大人しく見てると思ってんのかよ⁉︎」

 

 ルナの絶対防御の加護を受けていたトキオが、その手を離し飛び出した。

 

「トキオ⁉︎ 一人じゃ何も? くっ……」

 

 ルイもルナから離れ、トキオの反対側から竜魔王・改に向かった。

 

「クククッ、お前達、正気か?」

 

 トキオは予備の短剣を抜き、竜魔王・改に襲い掛かった。爆炎で簡単に吹き飛ばされた。

 

「グァァァァァァァッ‼︎」

 

「クソッ! これでどうだ⁉︎」

 

 ルイのこんな捨て身、初めて見たよ。カイトが吹き飛ばされた時に落とした魔斬ノ剣を拾い、トキオとは反対側からその剣を竜魔王・改に突き付けた。

 

「舐めてるのかい?」

 

 竜魔王・改が、一瞬で真っ赤に膨れ上がり、爆発した様に見えた。

 

「ウワァァッ‼︎」

 

 ルイが爆風で宙を舞った。ってか自爆みたいな事も出来んの⁉︎ ねぇ? そんな事までするんだ? もう元に戻ってるし。どうすりゃいいの?

 

「邪魔だな? 絶対防御の魔女よ」

 

 ヤバい。ルナが狙われる。

 

「ルナ! 僕の後ろに隠れるんだ!」

 

 アヤト君が、カイトから受け取っていた盾を地面に突き刺し言った。

 

「はい!」

 

「それで防いだつもりか⁉︎ ハァァァァッ‼︎」

 

 竜魔王・改は右手を地面に突き刺し、焔を繰り出したのだろう。竜魔王が始めの頃にやった様に、地面が割れ、隙間から焔が立ち昇った。

 

「キャァァァァァァァァァッ‼︎」

 

「力を溜める時間が無かったにしては、上出来でしょう」

 

 竜魔王が見せたものより小規模ではあったが、近くに居たアヤト君とルナを引き剥がすには充分な威力だった。

 

 ルナごめん! そう心で呟き、狙われているアヤト君が吹き飛ばされた所まで走っていた。アヤト君は、盾さえも失っていた。

 

「クククッ」

 

「アッッッツ‼︎ ドレイン‼︎」

 

 えっ……マイ⁉︎ なんで? なんでそんな所居るの⁉︎ 竜魔王・改に、ドレインを掛け様としたの? ってか……て、手が……

 

「クッ、クククッ‼︎ MPを吸い取れば、わたくしが何も出来なくなると思ったんですかね? 残念。この姿になったわたくしには、MPという概念は無いのです」

 

「無駄だったみたいだね? ヤケドしちゃった」

 

 ヤケドって……先程竜魔王・改が言った、自身の攻撃は精霊にも通用するという言葉は嘘じゃ無かった様だ。火焔を纏ったその身体に触れたせいで、マイの右手は骨まで灼かれ、肘から先は身体から離れ、地面に落ち燃え尽きた。

 

「マイ⁉︎」

 

「メミっち⁉︎ 勝てる術がある筈だから! だから、諦めないで‼︎」

 

「クククッ」

 

 竜魔王・改が、ルイの手放した魔斬ノ剣を拾い、大きく振りかぶった。どうしても、間に合わなかった。助ける事が出来なかった。私は、ただ叫ぶ事しか出来なかった。

 

「マイ‼︎ 嫌っ、嫌ァァァァァァァァァッ‼︎」

 

「死ね」

 

「メミっち、まかせ——」

 

 竜魔王・改の一閃——マイの胴体が二つに分かれた。

 

 そうだ。そうだった。この世界は、地獄だったんだ。

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