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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第六章  『竜魔王討伐戦』
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32  竜魔王討伐戦⑲  ファイナルラウンド

 32  竜魔王討伐戦⑲  ファイナルラウンド

 

 

「私は、あなたのお母さんを騙そうとなんてしないよ? 何があったのか、教えてくれない?」

 

「みんなそう言う。そうやって近付いて、カモの金を死ぬまで絞り取るんだ」

 

「どういう事?」

 

「毎日、誰かが部屋を訪ねて来る」

 

「誰かが?」

 

「子供だった僕には分からなかった。一つの借金が無くなりそうになると、お母さんは、もう毎日怖い人が来る事は無くなるからね? と僕に微笑むんだ。すると次の日には、また知らない誰かが現れ、お母さんと話しをする。そしてまた、新しい人達が借金を取り立てに来る。その借金が無くなりそうになると、また違う悪い人達がお母さんを騙しに来る」

 

「そんな事って……」

 

「お母さんをいじめるなよ‼︎ なんで……何でお母さんばっかり……? 他に地獄に堕ちるべき奴が山程居るだろぉが⁉︎ なんで、なんであんなに優しいお母さんを標的にするんだよ⁉︎ 何で僕達ばっかり、辛い思いをしないといけないの⁉︎」

 

「……優しいお母さんが、苦しまないといけないの辛かったよね? そんな世界、耐えられ無かったよね」

 

「優しい奴が馬鹿を見るんだよ‼︎ だから‼︎ ……あぁ、だからだ。お母さんは、死んだんだった。僕を施設に預けた後、首を吊って、死んだんだ」

 

「………………」

 

「ねぇメミ? 今の話しって、本当なのかな?」

 

 ナキが静寂を割いて聞いて来た。

 

「分からない……だって……」

 

 言葉に詰まる私を気遣い、ミーヤが捕捉してくれた。

 

「精霊になる権利は、本来現世で徳を積んだ者だけの筈ですもんね。今の話しを聞く限り、イーグルは現世に恨みを持っている様に感じました」

 

「神の側近だったんだよね? 現世で辛い過去あるとかありな訳?」

 

「マイ? 私は、現世で何があったとか関係無いと思う。この世界で生きてみて気付いた。導く者によって、傍で見守る人によって、その人の生き方って変わるんだよ」

 

「それって……?」

 

「だって! みんな頑張ってたもん! トキオやザリガニとかだって、現世ではヤンチャしてたんだろうなと思うけど、導く人と、傍に居る仲間のおかげで随分良くなったと思うもん」

 

「イーグルは、何でこんな?」

 

「決まってんじゃん⁉︎ 神のせいだよ‼︎ 上司だった訳でしょ? 神が側近さんの心を改心させられなかったのが悪い‼︎ 神に、文句言ってやらなきゃ気が済まない‼︎」

 

「でも神に、どうやって……?」

 

「分かんない……でも、可哀想じゃん……」

 

「変わらない人間だって居る。それもちゃんと頭に入れて置きなよ」

 

「ナキ……」

 

「アァァ——人は醜い。謀り、弱者の死を糧に生きている。馬鹿が死んだ話しを、笑いながら語るんですよ」

 

「えっ?」

 

 イーグルは目を見開き、左手で掴んだ眼鏡を握り潰した。

 

「そうしれいにげ——」

 

「プレス」

 

 目の前で、リナが大量の血を口から吐き出した。

 

「リナァ⁉︎ えっ、えっ、えっ……」

 

「クククッ、千載一遇のチャンスを逃しましたね?」

 

「えっ……リナ? リナ? えっ?」

 

「メミ⁉︎ 何突っ立ってる? 逃げろ‼︎」

 

 リナが、殺された。多分、死んでいるよね? プレス? 何その魔法? あっ、最初ら辺に竜魔王が地面に顔突っ込んで起こした爆発に紛れてやった魔法か。見落としていた。その謎が解けていなかった。簡単に、精霊を殺せる魔法を創ってたんだ。リナが、死んだのは、私のせいだ。

 

「ハァ、ハァ、クククッ」

 

 イーグルが、近付いて来る。そっか……リナは、もしもイーグルが起き上がり何か仕掛けて来た時の事まで考えて、自分が一番イーグルに近い位置に陣取っていたんだ。私を、こんな馬鹿な私を、守る為に。

 

「もうわたくしも、悠長な事は言ってられない。メミさん、殺します! プレ——」

 

 私に右手を翳したイーグルが、魔法の言葉を唱える寸前に口籠もった。

 

「メミっち……」

 

「ア、アガッ……」

 

「マイ⁉︎」

 

 マイが、いざという時の為に皆に持たせていた精霊剣で、イーグルを背中から突き刺していた。

 

「アァァァァァアッ? こ、殺した、つもりですか⁉︎」

 

「メミっちが生かしてやるって言ってんのにコイツ⁉︎ 良いですかメミっち⁉︎ 悪いけど、死んで‼︎ プレ——」

 

「ドレイン」

 

「ス……あれ?」

 

 イーグルがプレスなる魔法をマイから受ける前に、マイの腕を掴み、ドレインをした。MPが足りなくなってしまい、マイのプレスはイーグルに掛からなかった。

 

「クククッ、アァァァァアッハッハハァ‼︎ バァーカ、馬鹿共めぇ‼︎」

 

「最低……そんな事の、何が楽しいの?」

 

「楽しいィよ? コイツ、人質! 近付いたら、殺す」

 

 イーグルが、マイの髪の毛を掴み言った。

 

「っざけんな! 大人しくしてると思ってんのか⁉︎」

 

 マイが動き出した瞬間、イーグルがマイに右手を翳し、魔法を唱えた。

 

「ステイ」

 

「あっ……キャンセル!」

 

「メミさん? キャンセルが、少し遅かったみたいですね?」

 

 イーグルからマイへのステイをキャンセルしようとしたのだが、反応が遅れてしまっていた。今、この近くでMPを保有しているのは私しか居ないのに。私は、本当使えない。

 

「マイ、ごめんなさい。私……」

 

「なんでメミっちが謝るんすかぁ⁉︎ コイツが全部悪いに決まってるでしょ⁉︎」

 

「ククッ」

 

「さっきの話しは、嘘だったって事? そういえば言ってたもんね? いざとなれば、私の心理さえ利用するって……」

 

「さっきの話し……? まぁいい。よくここまでわたくしを追い詰めましたね? 正真正銘、これがわたくしの最後の策です‼︎」

 

 少しずつ、イーグルが私達から距離を取っていく。

 

「くっ……メミっち⁉︎ プレスを‼︎」

 

 引き摺られているマイが、私の目を見て叫んだ。あっ、そうだ……私が、やらないと……

 

「おおっと、気を付けた方が良いですよ? プレスは、掛けた者の向く方向全ての精霊の心臓を潰します。この女も、巻き添えになるかもしれませんね?」

 

「えっ……」

 

「騙されるな‼︎ コイツの得意なブラフだよ! それに……アタシは、それでも大丈夫だからさ」

 

 ……出来ないよ。イーグルの言っている事は、信憑性もある。もし、あの竜魔王の火焔が爆発した時、混乱の中であの数の精霊を殺したとするのなら、一人一人じゃ無く、無差別に様々な方向へプレスを掛けまくったと考える方が自然なんだ。

 

「メミっち……お願い。じゃないと……」

 

「わ、私……出来ない……マイを殺すかもしれない魔法なんて、掛けられないよ……」

 

「ハハハァァァァアッ‼︎ 馬鹿共めぇぇぇぇえ‼︎ 準備は出来た! ファイナルラウンドとイこうじゃあぁぁりませんかぁ⁉︎」

 

「側近さん……もうやめて? そんな傷付いた身体で、何が出来ると言うの?」

 

「クッ、クククッ」

 

 イーグルは、私達と距離を取る為に歩いていたのだと思っていた。違った。竜魔王に近付いていたのだった。

 

 竜魔王の傍まで辿り着くと、イーグルはマイから手を離し、竜魔王の身体に右手を触れ叫んだ。

 

「フュージョン‼︎」

 

 はっ? ドラゴンボールでしかその言葉聞いた事無いんだけど? ってか、マジかよ。竜魔王の身体が、見る見るうちにイーグルの身体に取り込まれて行く。

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