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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第六章  『竜魔王討伐戦』
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26  竜魔王討伐戦⑬  因果応報

 26  竜魔王討伐戦⑬  因果応報

 

 

 リッカとゴロウは、言葉を失っていた。

 

「ルナは‼︎ アヤトを信じています! リッカとゴロウは、ユキナ達を助けに行って下さい!」

 

「でも……二人は竜魔王に立ち向かえる武器なんて、持って無いじゃないですか?」

 

 立ち向かえる武器を持っていないというのは少し違う。二人は、武器さえ持っていない。

 

「リッカ……お願いします。アヤトに、もう一度チャンスをあげて? もう一度だけ、竜魔王と対話する場を設けさせてあげて? ルナとアヤトが死んだら、さっきアヤトが言った作戦で、竜魔王を倒して下さいね?」

 

「駄目です。了承しかねます」

 

「リッカ……」

 

「死んだら、なんて言わないで下さい……死なないって約束してくれないと、リッカだって約束出来ません‼︎ 絶対に死なないって約束して下さい‼︎」

 

 リッカの言葉にルナは、優しい笑みを浮かべて応えた。

 

「はい。絶対に死なないって、約束します」

 

 桜の花弁を美しいと思うのは何故だろうか? ほんのひとときだけ咲き誇るから、儚いから美しい。ルナが返事をしたその時の表情は、初夏に散りゆく桜を思い出させた。儚くて、美しくて、だからリッカは、何も言い返す事が出来なかったのだろう。

 

「ヨルシゲ、お借りします」

 

 リッカが諦めた様にその言葉を発すると、アヤト君が、声を振り絞って言った。

 

「リッカ、ゴロウ、気を付けて……」

 

「こっちのセリフですから‼︎ 本当にアヤトさんは、優しさの塊で具現化したモンスターの様なもんですね⁉︎」

 

「えっ?」

 

「あっ、ちょっと自分でも何言ってんのか分かんないっす! 悪い意味じゃ無いっす! 褒めてるんですよ? ただ……一言だけ良いですか?」

 

「うん……なんだろう?」

 

 キツイのは止めてね? アヤト君心弱いんだから。

 

「変わらないで下さい! 優しいままで居て下さい! 約束です……」

 

 一言じゃなくない? でも、リッカもアヤト君の反吐が出る程の優しさに魅了されてしまったのかな? 嵌まんない方が良いよー? それ底無し沼だから。リッカとゴロウがヨルシゲの背に乗り、ユキナ達の戦場へ向かった。で、あんた達二人はどうすんの?

 

「ヨルシゲは竜魔王より速い。二人がヨルシゲに乗っている事で、竜魔王があっちへ向かう可能性は減るだろう」

 

「えっ? そういう理由だったんですか? 何か色々言ってましたけど?」

 

「うん……正直今ユキナ達に加勢は要らないと思う。人数では不利だけど、ユキナ達が押される様な相手じゃ無い。真顔で嘘を吐ける様になってしまった。数々の戦いを経て、僕は変わってしまったんだ……」

 

 そうなんだ。傍から見てる限りあなた何も変わって無いけど? 優しさの振り分け方が狡猾になっただけ。そんな言葉初めて使ったよ!

 

「うん。変わったって言うんだったらですね? 竜魔王討伐する事前向きに考えてもらって良いかなぁ⁉︎ 竜魔王説得とか、無理ですから‼︎ いや、まぁ最後まで付き合いますけど! でもさっきのリッカとゴロウの武器から攻める案良かったじゃないですか! あれなら竜魔王討伐出来たかもしれないのに⁉︎ まだ信じてるんですか? 竜魔王が心入れ替えるなんて?」

 

 本音出たァァ‼︎ やっぱそうだよね⁉︎ ……あっ、気付いちゃった。ルナもこちら側になった事で確定しちゃった。竜魔王を説得して攻略しようとしてるのアヤト君だけなんだわ……もしかすると、アヤト君をどの場面で説得出来るかでこの戦いは白黒付くんじゃないかな?

 

「ごめん……僕は、みんなの邪魔をしている。ごめん……」

 

「謝らないで下さいよ……こんな世界じゃ無かったら、平和な世の中になったら、アヤトのその優しさは、とても尊いものだと思うから」

 

 ……そうだよね。例えば現世だったら、人を傷付けたく無いって側の人の方と仲良くしたいと思うもん。プレイヤーは徳無精ばっかだったから、みんな血の気が多いんだよ。逆に精霊側は人を傷付ける事に消極的なせいで、チイナに良い様に振り回された。この世界が異常なんだ。ってなると、この世界で徳無精更生させようって当初の目的自体間違いだったってなるけどね!

 

「取り敢えず、この場から離れよう」

 

 ルナの手を取り、アヤト君が歩き出した。

 

「そっちに行くんですね? 細かい所まであなたは……」

 

 ルナが微笑んだ。アヤト君が進もうとした道は、ユキナ達の戦場から離れる方角だった。出来るだけ竜魔王をユキナ達から離したかったのだろう。

 

 ってかこっち向かって来てるな? イーグルも居るから出来ればこっち来て欲しく無いんだけどなぁ……

 

「丁度良い。竜魔王をアシスト出来る」

 

 イーグルが呟いた。ほらぁ! そうなっちゃう。まぁアヤト君達は私達の存在知らないんだからこればっかりは運が悪かったとしか言い様無いけど。でもイーグルがアヤト君達に釘付けなおかげで、今私達は動き易くなる! イーグルの傍に倒れてるリナをずっと助けたかったんだよ! 待っててねリナ? すぐその苦しみから解放させてあげるから!

 

 そろりそろりとリナの傍へ行き、頭を抱え、ゆっくりとリナを揺り起した。

 

「はっ! あれ? ここは……って、カイトさ……ん?」

 

 大声出しそうだったので、カイトさ、の所で左手の人差し指を唇の前で立て、「シーッ」と呟いた。

 

「あ、あなたは……?」

 

 リナは一発でカイトじゃ無い事に気付いた。そうだよね。ミーヤ鈍い方じゃ無いんだけどなぁ。相当嬉しかったんだろうね。本当、悪い事したなぁ……

 

「メミだよ。ミラージュでプレイヤーに化けたの。驚かせてごめんね」

 

「ミラージュ? わたし達も使えるんですか? そうか、それでプレイヤーに化けて、イーグルに意識させない様にしてるんですね?」

 

 理解早っ! 説明省けて助かるし。

 

「そうそう! それでこっそりみんなを起こしてる訳よ!」

 

「でもあまりプレイヤーに化け過ぎてもバレちゃいますね? あそこに居るノエルさんもそうですか? カイトさんは今何処に居るか分かん無いので良いですけど、ノエルさんは流石にここに居るの違和感ですね」

 

「あっ、そうだね。あれはミーヤだよ」

 

 確かにそうだな。優秀だなぁリナは、何故そんな事に気付かなかった私? そして何故その違和感に気付かないイーグル? さてはこんなに早くマインドブレイクから抜ける者居ないと高を括って余裕ぶっこいてるな?

 

「あっ、わたし、総司令に伝えなきゃいけない事があったんです」

 

「なに?」

 

 ま、まさか、愛の……告白……?

 

「イーグルが順番にマインドブレイクなる魔法をみんなに掛けていって、わたし、最後にそれ掛けられたんですけど、一発目、効かなかったんです」

 

 少しがっかりしてしまった。でも、何か大事っぽい話しだった。

 

「どういう事?」

 

「イーグルは、チッ、と舌打ちした後、わたしの腕を掴み、ドレインと言いました」

 

「ドレイン? なにそれ?」

 

「わたしにも分かりません。魔法の類だとは思いますが、いかんせんゴッドブックには載っていないので……何か変わった事も無かったですし。でも、その時見たんです。他の四体のイーグルが、知らない村人の顔になっている所。その時、まさかこれは? って所でマインドブレイク掛けられました」

 

「ドレインって、吸い取る的な意味だよね?」

 

「正式には、排出、排水を表す言葉です。しかし日本では、相手の力を吸い取るという意味でよく使われていますね」

 

「あっ、そうなの? エナジードレインとか言うじゃん?」

 

「ブラック羽川ですね‼︎ ほっさんがにゃんにゃんってなるの可愛い過ぎますよね‼︎」

 

「たまらんよなぁ⁉︎」

 

 その時、後ろから肩を掴まれた。

 

「へっ?」

 

 振り返ると、イーグルが鬼の形相で睨み付けていた。

 

「カイト? 何故あなたが精霊と仲良くほっさんという方の話しをしているんですか⁉︎」

 

「あ、あ、ぼくは、その……」

 

 スイッチを切り替え、カイトの振りをした。

 

「アァァァァッ‼︎ 総司令! すいません‼︎ アニメの話しに我を忘れて大声出して喋ってました……」

 

 うん。私もそう。だけど今ね、総司令って呼ばないで?

 

「総司令? ……あなた、メミさんですか⁉︎ 何故、カイトの姿に⁉︎」

 

「ミラージュだっけ? イーグルあなた、今日の為に自分だけが使える魔法を増やしたって言ってたけど、本当は違うんじゃない?」

 

「な、何を、何を根拠に⁉︎」

 

「憶測でしか無いよ。試してみるしか無いね」

 

「はぁっ?」

 

 因果応報。呆気に取られているイーグルに右手を翳し、魔法の言葉をお返ししてやった。

 

「マインドブレイク‼︎」

 

「何ィッ⁉︎」

 

 眼鏡越しのその目の焦点は合わなくなっていき、やがて目を閉じると、イーグルは地面に崩れ落ち動かなくなった。

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