25 竜魔王討伐戦⑫ 何の為に戦えば良いの?
25 竜魔王討伐戦⑫ 何の為に戦えば良いの?
「リッカ! ゴロウ!」
アヤト君が叫んだ。流石の竜魔王も、顎にゴロウのモーニングスターを叩き込まれて立っている事は出来ず、その場に崩れ落ちた。
「遅くなってごめんなさい! 火焔が飛んで来たので、遠回りして駆けつけました!」
アヤト君の傍まで来ると、ヨルシゲの背から降りてリッカが言った。
「こんな危ない場所に……ごめん二人とも。ヨルシゲも、よく来てくれた……」
リッカとゴロウとヨルシゲに、アヤト君が感謝の言葉を述べた。
「リッカ達は、仲間じゃないですか! 水臭い事言わないで下さい!」
「オエ! みんなの、為に、頑張る!」
竜魔王がダウンしている間に、ルナがアヤト君達の元へ辿り着いた。
「アヤト⁉︎ ハァ、ハァ、良かった……良かったぁ……リッカ、ゴロウ、ヨルシゲ? ハァ、みんな、ありがとう‼︎」
「ルナさんヘトヘトじゃないですか! 少し休んで呼吸整えて下さい」
「もう大丈夫。休んでる場合じゃ無いですから」
「グルルルルゥゥ……」
えっ⁉︎ あんなの顎に食らってもう立てるの⁉︎ 竜魔王が怒りに満ちた唸り声を上げながら、ゆっくりと上体を起こしていく。
「さすが、凄いフィジカルだ」
「もう一発、食らわせて、やる‼︎」
ゴロウがモーニングスターを振り投げた。
「ギィィィィィィイッ‼︎」
竜魔王は奇声を上げながら後ろへ飛び、モーニングスターは繋がれている鎖に引っ張られ、ゴロウの元へと転がった。
「くそ、リーチを、見極め、られた‼︎」
まぁ、ゴロウがモーニングスター手から離せば当たってただろうけど、それだと取り行かなきゃだったし、しょうがないよね!
「いや、大手柄だよゴロウ! 竜魔王と距離が取れた。それに、回復していないのに激しく動いたせいで相当息切れしている!」
アヤト君は、良かった所をちゃんと見つけて褒めてくれる。こんな上司が私にも欲しかったよ。
「どうしましょう? 竜魔王と距離を取った方が良いと思いますけど……?」
リッカがこれからの行動をアヤト君に聞いた。
「……ルナ? 僕と一緒に来てくれるか?」
「そんな事聞かなくても、答えは決まっています。アヤトなら、分かってる筈です!」
「ルナ、アヤト、あ、熱い……」
「ほっかほかですね」
こんな時にイチャイチャすんなし! ゴロウとリッカも反応しなくていいから! なんなの? 真面目にやってんの? そんなんだったらもうこれ以上手助けしてあげないんだからね⁉︎ あっ、今回なんも手助けして無いわ……
「二手に分かれよう。僕は、竜魔王に狙われている。僕とルナが二人で行動して、竜魔王を引き付ける! 悪いルナ、君の絶対防御という力におんぶに抱っこな僕を許してくれ」
「頼ってくれるの、嬉しいです。ルナ、気付いたんです。アヤトを守る為に、ルナはこの力を授かったんです!」
「ルナ、アヤト、と、尊い……」
「ぽっかぽかですね」
こんな時にてぇてぇすんなし‼︎ ゴロウとリッカもリアクション要らないから! いつまでやってんの? 大事な話し合いの最中じゃ無かったの⁉︎ あっ、それ私も、大事な話し合いの時にリナとてぇてぇしててミーヤに怒られたわ……
「リッカとゴロウは、ユキナ達の戦場へ向かってくれ! あの人数を、四人で凌ぐのは骨が折れるだろうから」
「分かった! オエ、理解した!」
「ヨルシゲ! 二人をあそこまで送ってくれ!」
「えっ! せっかくヨルシゲをアヤトさんの所まで連れて来たのに!」
「バ? バウゥゥゥゥ……」
ヨルシゲがあからさまにテンションを下げた。
「ヨルシゲ! 僕と離れている間、誰が君の傍に居てくれたんだ? 分かってるだろ? リッカは、君の事が見えないのに、もふもふして、大切にしてくれただろ? 彼女を、そしてそのお兄ちゃんを、無事に戦場まで送り届けるんだ!」
「……バウ! バウバウ‼︎」
「良かった。分かってくれたんだね! っていうか、無事に戦場まで送り届けるって、なんてセリフだろうね……」
アヤト君は、自責の念に苛まれた様な表情を浮かべ言ったのだが、当の二人は、笑ってその言葉へ返答した。
「確かにそうですね! でも、きっとアヤトさんは、リッカ達がここに居ても大して何も出来ないから、他の仕事の出来る場所へ導いてくれたんです。優しく伝えてくれたんです。分かってますから!」
リッカは、満面の笑みで言った。
「えっ? そういう意味じゃ無い‼︎ 僕は、本当に……」
竜魔王には刺さらない弓矢を持つリッカと、モーニングスターのリーチを見定められたゴロウにその場に居られても、ぶっちゃけ足手まといなだけなのだ。だから、二人をその場から遠ざけるのは最善の手だったと私は思うよ?
「あぁぁぁ別に‼︎ 嫌味言ったんじゃ無いんです! ただ、命の危険が少ない方の戦場に、お兄ちゃんと二人で行く指令をくれて、ありがとうございます。ここでは何も出来ないの分かったんですけど、自分からあっち行きますとは、逃げてる様で言えないじゃないですか? アヤトさんが言ってくれたから、行きやすくなったんです」
リッカもめっちゃ気を使いながら喋ってる。
「訳に立たないなんて、そんな訳あるか‼︎ リッカの矢は確かに竜魔王の皮膚には刺さらないかもしれない。でも、急所にだったら効果絶大かもしれない! リッカの射的の正確さは天下一品だ! 目や、睾丸を打てば、一撃で勝負が付いたかもしれない! ゴロウのモーニングスターも、リーチを見極められているのであれば、鎖を持つ手を離してしまえば良い! 油断した所に入るその一撃は、竜魔王を失神させてしまうかもしれない! 僕は! 君達二人に、竜魔王を倒す力を持っているって自信を持って言えるよ‼︎」
そうなの⁉︎ めっちゃ具体例上げて言ってたし、本音なんだろうな。だとしたら、なんで……?
「確かに……そんなの、想像もつきませんでした。リッカ達は、竜魔王を倒せるかもしれない‼︎ それじゃあリッカ達を、ここに残らせて下さいよ!」
そうだよね……なんならアヤト君には、ルナもか? 二人とも、武器持って無いんだから、あなた達が戦場から消えるべきじゃない? でも、ルナには絶対防御がある……アヤト君? あなたが、戦場に居る意味は?
「……ごめん。僕は、まだ、プランAが成功する事を、夢みてるんだ……」
「アヤトさん。流石にそれは……」
プランA⁉︎ 竜魔王を、説得して和解するって案か。アヤト君、悪いけど、いくらなんでも現実を見れていないよ。
「分かってるけど‼︎ 僕は、どうしても……竜魔王が傷付けられるのでさえ、心が、痛くて、息が苦しくなるんだよ……」
嘘でしょ……そこまで重症だとは思わなかった……じゃあ、どうすれば良いの? 竜魔王を殺しても、あなたが幸せになれないんなら、私は、君を信頼している人達は、何の為に戦えば良いの?