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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第六章  『竜魔王討伐戦』
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25  竜魔王討伐戦⑫  何の為に戦えば良いの?

 25  竜魔王討伐戦⑫  何の為に戦えば良いの?

 

 

「リッカ! ゴロウ!」

 

 アヤト君が叫んだ。流石の竜魔王も、顎にゴロウのモーニングスターを叩き込まれて立っている事は出来ず、その場に崩れ落ちた。

 

「遅くなってごめんなさい! 火焔が飛んで来たので、遠回りして駆けつけました!」

 

 アヤト君の傍まで来ると、ヨルシゲの背から降りてリッカが言った。

 

「こんな危ない場所に……ごめん二人とも。ヨルシゲも、よく来てくれた……」

 

 リッカとゴロウとヨルシゲに、アヤト君が感謝の言葉を述べた。

 

「リッカ達は、仲間じゃないですか! 水臭い事言わないで下さい!」

 

「オエ! みんなの、為に、頑張る!」

 

 竜魔王がダウンしている間に、ルナがアヤト君達の元へ辿り着いた。

 

「アヤト⁉︎ ハァ、ハァ、良かった……良かったぁ……リッカ、ゴロウ、ヨルシゲ? ハァ、みんな、ありがとう‼︎」

 

「ルナさんヘトヘトじゃないですか! 少し休んで呼吸整えて下さい」

 

「もう大丈夫。休んでる場合じゃ無いですから」

 

「グルルルルゥゥ……」

 

 えっ⁉︎ あんなの顎に食らってもう立てるの⁉︎ 竜魔王が怒りに満ちた唸り声を上げながら、ゆっくりと上体を起こしていく。

 

「さすが、凄いフィジカルだ」

 

「もう一発、食らわせて、やる‼︎」

 

 ゴロウがモーニングスターを振り投げた。

 

「ギィィィィィィイッ‼︎」

 

 竜魔王は奇声を上げながら後ろへ飛び、モーニングスターは繋がれている鎖に引っ張られ、ゴロウの元へと転がった。

 

「くそ、リーチを、見極め、られた‼︎」

 

 まぁ、ゴロウがモーニングスター手から離せば当たってただろうけど、それだと取り行かなきゃだったし、しょうがないよね!

 

「いや、大手柄だよゴロウ! 竜魔王と距離が取れた。それに、回復していないのに激しく動いたせいで相当息切れしている!」

 

 アヤト君は、良かった所をちゃんと見つけて褒めてくれる。こんな上司が私にも欲しかったよ。

 

「どうしましょう? 竜魔王と距離を取った方が良いと思いますけど……?」

 

 リッカがこれからの行動をアヤト君に聞いた。

 

「……ルナ? 僕と一緒に来てくれるか?」

 

「そんな事聞かなくても、答えは決まっています。アヤトなら、分かってる筈です!」

 

「ルナ、アヤト、あ、熱い……」

 

「ほっかほかですね」

 

 こんな時にイチャイチャすんなし! ゴロウとリッカも反応しなくていいから! なんなの? 真面目にやってんの? そんなんだったらもうこれ以上手助けしてあげないんだからね⁉︎ あっ、今回なんも手助けして無いわ……

 

「二手に分かれよう。僕は、竜魔王に狙われている。僕とルナが二人で行動して、竜魔王を引き付ける! 悪いルナ、君の絶対防御という力におんぶに抱っこな僕を許してくれ」

 

「頼ってくれるの、嬉しいです。ルナ、気付いたんです。アヤトを守る為に、ルナはこの力を授かったんです!」

 

「ルナ、アヤト、と、尊い……」

 

「ぽっかぽかですね」

 

 こんな時にてぇてぇすんなし‼︎ ゴロウとリッカもリアクション要らないから! いつまでやってんの? 大事な話し合いの最中じゃ無かったの⁉︎ あっ、それ私も、大事な話し合いの時にリナとてぇてぇしててミーヤに怒られたわ……

 

「リッカとゴロウは、ユキナ達の戦場へ向かってくれ! あの人数を、四人で凌ぐのは骨が折れるだろうから」

 

「分かった! オエ、理解した!」

 

「ヨルシゲ! 二人をあそこまで送ってくれ!」

 

「えっ! せっかくヨルシゲをアヤトさんの所まで連れて来たのに!」

 

「バ? バウゥゥゥゥ……」

 

 ヨルシゲがあからさまにテンションを下げた。

 

「ヨルシゲ! 僕と離れている間、誰が君の傍に居てくれたんだ? 分かってるだろ? リッカは、君の事が見えないのに、もふもふして、大切にしてくれただろ? 彼女を、そしてそのお兄ちゃんを、無事に戦場まで送り届けるんだ!」

 

「……バウ! バウバウ‼︎」

 

「良かった。分かってくれたんだね! っていうか、無事に戦場まで送り届けるって、なんてセリフだろうね……」

 

 アヤト君は、自責の念に苛まれた様な表情を浮かべ言ったのだが、当の二人は、笑ってその言葉へ返答した。

 

「確かにそうですね! でも、きっとアヤトさんは、リッカ達がここに居ても大して何も出来ないから、他の仕事の出来る場所へ導いてくれたんです。優しく伝えてくれたんです。分かってますから!」

 

 リッカは、満面の笑みで言った。

 

「えっ? そういう意味じゃ無い‼︎ 僕は、本当に……」

 

 竜魔王には刺さらない弓矢を持つリッカと、モーニングスターのリーチを見定められたゴロウにその場に居られても、ぶっちゃけ足手まといなだけなのだ。だから、二人をその場から遠ざけるのは最善の手だったと私は思うよ?

 

「あぁぁぁ別に‼︎ 嫌味言ったんじゃ無いんです! ただ、命の危険が少ない方の戦場に、お兄ちゃんと二人で行く指令をくれて、ありがとうございます。ここでは何も出来ないの分かったんですけど、自分からあっち行きますとは、逃げてる様で言えないじゃないですか? アヤトさんが言ってくれたから、行きやすくなったんです」

 

 リッカもめっちゃ気を使いながら喋ってる。

 

「訳に立たないなんて、そんな訳あるか‼︎ リッカの矢は確かに竜魔王の皮膚には刺さらないかもしれない。でも、急所にだったら効果絶大かもしれない! リッカの射的の正確さは天下一品だ! 目や、睾丸を打てば、一撃で勝負が付いたかもしれない! ゴロウのモーニングスターも、リーチを見極められているのであれば、鎖を持つ手を離してしまえば良い! 油断した所に入るその一撃は、竜魔王を失神させてしまうかもしれない! 僕は! 君達二人に、竜魔王を倒す力を持っているって自信を持って言えるよ‼︎」

 

 そうなの⁉︎ めっちゃ具体例上げて言ってたし、本音なんだろうな。だとしたら、なんで……?

 

「確かに……そんなの、想像もつきませんでした。リッカ達は、竜魔王を倒せるかもしれない‼︎ それじゃあリッカ達を、ここに残らせて下さいよ!」

 

 そうだよね……なんならアヤト君には、ルナもか? 二人とも、武器持って無いんだから、あなた達が戦場から消えるべきじゃない? でも、ルナには絶対防御がある……アヤト君? あなたが、戦場に居る意味は?

 

「……ごめん。僕は、まだ、プランAが成功する事を、夢みてるんだ……」

 

「アヤトさん。流石にそれは……」

 

 プランA⁉︎ 竜魔王を、説得して和解するって案か。アヤト君、悪いけど、いくらなんでも現実を見れていないよ。

 

「分かってるけど‼︎ 僕は、どうしても……竜魔王が傷付けられるのでさえ、心が、痛くて、息が苦しくなるんだよ……」

 

 嘘でしょ……そこまで重症だとは思わなかった……じゃあ、どうすれば良いの? 竜魔王を殺しても、あなたが幸せになれないんなら、私は、君を信頼している人達は、何の為に戦えば良いの?

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